病名:思春期
6時限目の授業の余り時間、先生の気まぐれという事で席替えをした。
結果は窓側の三列目、そしてその後ろの席に赤也という最悪の席順。
前回は後ろの席だったからよかったものの、この席順だと嫌でも赤也の視界に入ってしまって、あまりにいたたまれない。
別に赤也はなんとも思ってないんでしょうが。
あ〜席替えってワクドキして楽しいけど、結果次第で地獄になりうるのがちょっとな〜
明日からこの席順で過ごさなければいけないのかと憂鬱になっていると、不意に隣の席に座っていた男子の声が耳に入ってきた。
「苗字さん、苗字さんってば!」
「あ、はい?」
「焦った〜!シカトされてんのかと思って心折れそうだった!さっきから呼んでんのに〜。」
「ごめん。考え事してたもので」
「ふっふっふ。これからは考え事できなくなるかもよ?俺らうるさいから!」
「ん?俺ら?」
「俺と切原と菅原!ラッキーな事に席近くなっちゃってさ。」
隣の男子、松浦君とその後ろの席の菅原君は赤也と仲の良い男子達だ。
後ろの赤也の事ばかりに気をとられすぎて気付かなかったな。
「騒がしいとは思うけど、これからよろしくね!てか苗字さんと話すの初めてじゃね?俺のこと知ってる?」
「知ってるよ。松浦君。」
「うっしゃ、覚えててもらってた!あ、でもこいつは覚えてないっしょ?影薄いから」
「お前が濃すぎるんだよ」
冗談を言う松浦君の後頭部に容赦ないげんこつを食らわした菅原君。
席替えする前は友達と近くの席がいいな〜なんて呑気な事思ってたけど、今は赤也と席が離れるならどこでもいい。
友達と席近くなった松浦君には悪いけど、今一度席替えしてほしいな!
げんこつされた後ろ頭をさすりながら、松浦君は私の後ろを指差した。
「切原はわかるよね?ほら、英語がまるでダメな」
「おい!今日の小テスト10点あったし!」
「10点ごときで言い返そうとする赤也のその精神には感服するわ。」
「じゃあお前何点だったよ!」
「100点」
「………」
「はい!グーの音も出ないとはこの事でーす!」
「うるせーな!」
赤也達が楽しそうに話をしている傍で、私の心は曇っていった。
ほほ〜。松浦君や菅原君の前ではこんな風に話してらっしゃるのにねぇ〜。
密かに捻くれていると、松浦君が不思議そうに私の顔を覗き込んだ。
「どしたの苗字さん?」
「……あっ?なに、その、友達と席近いの羨ましいなと思って!」
「も〜、それなら俺が話し相手なったげるって!」
「迷惑でしかねーわ。」
「いやいやそんな事ないでしょ!?ね、苗字さん!」
「そうね。楽しそう。」
「うんうん!俺楽しいやつだからさ!」
「騒がしいだけな。」
「いちいち水差すなよスガっち!」
仲の良い2人に笑いながら、チラッと後ろの席の赤也に目を移すと不覚にも、目が、合ってしまった。
タイミングの悪いことに、赤也は前を向いていたらしい。
ほんとは後ろを見るつもりなんて1ミリもなかった、完全に無意識だ。
私はすぐさま赤也から顔を逸らした。
体に響くくらい心臓がバクバクして、すごく息が苦しい。
いや恥ずかしいとか嬉しいとかのドキドキではなく、まずい事してドキドキする方だ。
深く考えるな、きっとさっきのは気のせい。私は赤也と目なんて合っていない。
赤也は私をなんとも思ってない、だから私と目なんか合うこともない。
犯罪でも起こしたかってくらいの冷や汗をかいていると、先生がホームルームを始めた。
やった。ホームルームが終われば帰れる。
ようやくこの呪縛から解放されるんだと思うと、強張っていた体がラクになってく気がした。
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わらびもち