同人誌的な展開は同人誌の中でだけ
部活が始まる前。
全員が着替え終わった頃、部室に名前がやってきた。
名前は俺に会いに部室へ訪れる事がある。
訪問頻度は不定期やけど、ちょくちょく遊びにきてるから部員の連中ともすっかり顔馴染みや。
そんなある日のこと。いつものように名前と部室ん中で話しとった。
部活が始まる前やから、部室ん中は俺と名前の2人きり。
ふ、ふ、2人きりやからっていかがわしい事なんかせぇへんで!?んな名前が持ってる同人誌みたいな展開一切ないから!
俺と名前は健全なカップルや!キスかて1回しかしたことないねんぞ!うん、なんや自分で言うて悲しくなってきたからやめよこの話!
同人誌みたいな展開はないまま、しばらくしてテストの話になった。
「謙也謙也聞いてや、テストで赤点取ってん!どや!」
「どやる事ちゃうで!?テスト期間中何しとってん!」
「一晩中BL本読んどった。」
「アホか!!」
「アホとはなんや!勉強もせんと一晩中BL本読んどった奴のせいやんか!」
「それがお前やっちゅーねん!赤点取ったやつって、追試あるんちゃうんか…」
「うん、追試に向けて先生が徹底的に教えたるって。」
「ほんまに?そら良かったやん!おかげで名前の勉強見やんで済むわ〜」
「謙也部活してて忙しいもんな、ちゃんと先生に教えてもらうから安心して!」
「えっ……ほんまにええんか?俺が見んでも。」
「謙也がそう言うたんやん?」
「せやけど…ほんまにええん?」
「いいで!」
晴れやかな笑顔でキッパリと言い放たれた。
なに、なんやねん、やけに素直やんけ。
いつもやったら俺に泣きついてきよんのに、なんでそんなこと言うん。
赤点取りまくる名前を見兼ねた先生が協力してくれるようなったから、先生に甘えてるだけやろけど。
それとも俺より先生の方が好き…なんか…
自分でも引くくらいマイナス思考になっとったら、名前が部室の壁掛け時計を見てバッと立ち上がった。
「っべ!先生と勉強の時間や、はよ行かな…じゃあ部活頑張って〜!」
カバンを肩に掛けながらいそいそと部室を出て行こうとした名前。
そんな急ぐくらい、先生に会いに行きたいんか!?
俺はとっさに名前の腕を掴んだ。
「ま、待ってや!名前」
「んっ?なに?」
「いや…もう、なんなんほんま、なに企んどんねん、なにが望みやねん、俺をどうしたいねん!もうヒステリックじゃ!」
「どないしたん謙也?あの日なん?」
「んなわけあるか!せやからその、あの、なんで俺に頼まんと、先生やねん」
「ああ、ジェラシってるんか。」
「言うなやいちいち!」
「あんな、先生が見てくれるって言うから、そうしてるだけ!あとあんまり謙也に迷惑かけたないねんわ。」
「へっ?いや、名前…そんなんもう、水臭いやんか…俺てっきり…」
「謙也はナイーブな乙女やな〜」
「うっさいな…!」
ワシワシと俺の頭を掻き撫でてくる名前を引き寄せて、抱きしめた。
あかんわ、思っくそ嫉妬してもうてたわ。
ちゅーか名前も名前や、あんな誤解招くような態度…
俺に気ぃ遣ってるってわかってめっちゃ嬉しかったけど、突然そないな事言われたら…ややこしいやろ!
俺は名前の首元に顔を埋めながら、めえっちゃ猫なで声になって言った。
「ほんまに、先生とはなんもないんか?」
「ないで。そもそも勉強教えてくれる先生、女性!」
「でも…お前同性愛モン好きやん…」
「確かにBLもGLも好きやけど、それは見るのが好きなだけであって自分自身そうなりたいとは思わんねん。前にも言うたやんか。」
「…じゃあ、俺のこと好きか?」
「もち!大好き!」
「名前…!俺も大好きや!」
「うん!私には謙也だけやで!」
「もー、名前ってばぁ!」
アホみたいにデレまくりながら気がついた。
せやった、名前勉強に行く時間なんやったわ!
俺が引き止めてもうたせいで遅れてまう!
抱きついていた名前から離れて、急いで出口まで背中を押した。
「ごめんな、勉強しに行かなあかんのに」
「謙也可愛かったから、許したろ!」
「名前っ…!名前かてほんま偉いわ勉強して!」
「でも追試の勉強やで?」
「追試でもなんでも勉強するって気持ちが大事や…せや、追試合格したらなんかご褒美あげよか!」
「えっ?ご褒美もらっていいん…?」
「おん!もうなんでも言うてや!名前のためやったらなんでもやったる!」
「んなっ…ほんま!?なんでもいいのん!?」
「もっちろん!」
「うわぁ〜ありがとう!じゃあねじゃあね……謙光、見たい!」
「よっしゃー!任せとき!俺が腕によりをかけ……へっ?」
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わらびもち