迷子と日傘 

赤也「あれ〜!?おっかしーな、こっちで合ってると思ったんだけど」

案の定迷子になっていた赤也は、広い広いプールサイドをさまよっていた。

赤也「どうすっかな…人多すぎて訳わかんねぇや。あ、ウォータースライダーのぼって上から探したら一発じゃね!?俺あったまいい〜♪」

頭の良い赤也君はお忘れだろうが、テニス部のみんなは日陰の下、つまり屋根の下にシートを敷いている。
上から探したところで見つかるはずがない。

赤也「スライダーは…っと、あそこからのぼれるみたいだな。よっしゃ、先輩ら探すついでに滑っちゃお!」

迷子という非常事態に非常にのんきな赤也がスライダーへ向かおうとした時、ちょんちょんっと肩をつつかれた。

彼女「あの…すみません」

赤也「はいっ?」

彼女「これ、落としましたよ」

赤也「あ、どーも!すんません…って、これ俺のじゃないッスよ?」

彼女「え?だけど…」

赤也「すんません、でも、俺のじゃないんで…ていうかこんな可愛いハートだらけのタオル、俺が使ってると思います?」

彼女「…ふふっ、確かにそうだね、ごめん。私の見間違いだったみたい。でもあんまり違和感ないよ?」

赤也「ええ!?それは心外ッス…」

彼女「冗談冗談。じゃあ、これは落し物センターに届けてくるね」

赤也「お願いします!そんじゃあ、俺もう行きますんで!」

彼女「うん。呼び止めちゃってごめんね」

赤也「いえいえ、とんでもないッス!そんじゃあ」

彼氏「おいお前、俺の彼女と何勝手に話してんだよ」

赤也「へっ?いや、俺は」

彼女「まって、違うの。この子は私が間違えて呼び止めちゃっただけで」

彼氏「嘘つくんじゃねーよ!無理やりこいつにナンパされてたんだろ…お前、すげぇ可愛いから…!」

彼女「ちょっともう!その勘違い今日で何回目よ!あの、ごめんね、もう行っていいよ」

赤也「あ、はい!そんじゃ…」

彼氏「待ちやがれ!テメェ俺の可愛い彼女に手出してタダで済むと思うなよ!?」

赤也「ええ!?俺はただ落し物を拾ってもらっただけで…まぁその落し物は俺のじゃなかったんスけど!」

彼氏「テメェェ!無理やりナンパしておいて俺のスイートハニーにいちゃもんつける気かゴラァァ!?」

彼女「もうほんと、恥ずかしいからやめてよー!」

彼氏「だめだ、一発殴ってやんねぇと気がすまねぇ!おら、いくぞ!」

赤也「え、え!?なんだよこのとばっちりは〜!?」

彼女溺愛彼氏が赤也にグーパンチをお見舞いしてやろうと、思い切り拳を振りかぶった。
反射的に目をつむった赤也だが、いつまで経っても頬に痛みは襲ってこない。
恐る恐る目を開けると、赤也の目の前には白い日傘を広げ、彼氏の拳を受け止めている柳先輩が立っていた。

柳「暴力はいけないな」

彼氏「あ?なんだテメェ!」

柳「ここは市民プール、喧嘩をする場所ではありませんよ。くれぐれも、マナーに反する行為は慎んで頂きたい。」

彼氏「おおん!?部外者が偉っそーにしゃしゃり出てきてんじゃ」

彼女「いい加減にせぇおんどりゃあ!

ゴチッ

彼氏「ギャフン!

突然けったいな関西弁で彼氏にゲンコツを食らわした彼女。
その光景に赤也がキョトンとしていると、彼女が頭を下げた。

彼女「迷惑かけてごめんなさい!この人いつもこうで…ほら!お前も謝らんかい!」

彼氏「……ごめんなさい

彼女「本当にごめんなさい!お怪我ないですか?」

柳「はい。お気遣い頂きありがとうございます。私も少し言い過ぎました」

彼女「いえ、そんな事ないです!正論です!キミも…本当にごめんね」

赤也「い、いえ!全ッ然!」

彼女「ありがとう…それじゃあ、私たちはこれで失礼しますね。おうこら、はよ行くぞボケナス!」

彼氏「うわ〜ん!待ってよハニ〜!」

関西出身であろう彼女にトコトコとついて行くへなちょこ彼氏の後ろ姿をしばらく見守っていた赤也が、隣で日傘を折り畳んでいた柳先輩を見上げた。

赤也「す、すんません柳先輩。なんか、変なことに巻き込んじゃって…」

柳「かき氷」

赤也「え?」

柳「早く戻らないとお前のかき氷が溶けてしまう。行こう」

赤也「あ…ま、待って下さいよ〜!」




幸村「かき氷?それならブン太が食べちゃったけど」

赤也「ええ!?ちょっ、なんで食べるんスか俺の分を〜!」

丸井「だってお前おせーんだもん、せっかくのかき氷が溶けちゃうだろい。あと」

柳「『お前の分のかき氷も食べてやったぞ柳。』と、お前は言う」

丸井「ザッツライト!」

柳「……もう一度買いに行くか、赤也」

赤也「…ウィッス」

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わらびもち

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