朝露に濡れし袖

06


「っくしゅん」

「最近よくくしゃみがでるな、苗字」

「うーん、風邪かなぁ。寝つきも悪くて、黄色いお化けが出た夢見たんだよねぇ」

「疲れだな」

目立たないといえど生徒会の一員である苗字には事務的な仕事が多量にあった。たまたま瀬尾と同じタイミングで生徒会室に入ったものだから、ちらほらと会話をしながら作業を進める。

「お前、浅野と付き合わねぇの?」

「え、な、なに急に。恐れ多すぎる」

バサバサと書類が手から滑り落ちる。あからさまなその態度に瀬尾は苦笑いを浮かべた。

「この学校で唯一、浅野と釣り合うのってお前くらいだと思うんだけど」

頬を赤くしながらも名前の瞳はどこか寂しそうに目線が下に落ちていく。

「釣り合えたら、と思う事はあるけれど…。やっぱ、才能の差は埋まらないし、皆みたいに特化した強みがあるわけでもないから…幼馴染ってポジションが何より安定しててそれでいいかなぁ」

「お前見てると自信がないって損してるなってつくづく思うわ」

「怖がりだから私」

床まで落ちていった書類を拾い上げ、下がった眉で微笑んで見せた。

「E組を気にかけてやるのも自分に自信がないからか?」

「んー。それは違うんだけど…E組を否定することが、自分の芯を殺してしまう気がするの。心臓を一突きされるような、そんな感じ。まだ死にたくないの」

わっかんねー、と瀬尾は椅子の背に思いっきりのけ反る。自分でもよくわかってないのだから瀬尾にそれが分かる訳がない。


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