朝露に濡れし袖
05
中間試験の結果は学年2位。瀬尾君ど同率で英語のみ一位を取る事ができたものの、ほかの教科の学年一位は取る事ができなかった。
それでも自分としては万々歳な結果であり、浅野君に感謝を伝える。
成績で気分が舞い上がることは今日くらいは許してほしい。春と夏の狭間で湿度の多いこの季節なのに足取りは軽くなる。
「…くしゅんっ」
そんな帰り道。別に肌寒い訳でも風邪をひいた訳でもないのにくしゃみがよく出た。誰かが噂でもしているという考えが頭をよぎったが、自意識過剰だと頭をふり、その思考を振り払った。
「A組にまさかあんな行動する人がいるとはねぇ。正直信じられなかったよ」
「それに加えてめっちゃカワイイんだよ、苗字さん」
なぜ今まであんなにかわいい子を忘れていたのかが不思議なくらいである。鼻の下を伸ばす前原に、さっき別の女の子とデートしてきたばかりじゃん、と怪訝な目で見つめる中村。その話題に惹かれて寄ってたかったクラスメイトがいた。
「たしか苗字さんって…あの五英傑に匹敵する子だよな。全然目立とうとしないから忘れられがちだけど」
五英傑は成績が良いメンバーで、クラスを率いている浅野たちのことを指している。名前は人の前に立って何かをするようなタイプではないため彼らとは一括りにされていなかった。
「まあとにかく、何かお礼でもしようかと!何がいいと思う…?」
「お礼だって託けてデートに誘うつもりだろ」
ギクッ。図星だったらしく、前原の肩が揺れた。そんなことだと思っていた一同の中にはため息をこぼす者もいた。
「ヌルフフフ。前原君の考えも一理ありますねぇ。前原君がそう言い出すと思って先生、事前に苗字さんについて観察してみましたよ」
新しい恋愛小説のネタしようという魂胆が丸見えだ。いつも以上にワクワクしている。
「名付けて『恋のキューピッド大作戦』ですっ!」
クワッ!と何処から取り出したのか大きなカンペを取り出してご丁寧にエンジェルまで描かれている。
「ったく…先生早いってー。俺と苗字さんがまだそうなると決まった訳じゃ」
「残念ながらお相手は前原君ではありません」
「え?」
満更でもなさそうにデレデレしていた前原は、なら誰が苗字さんの相手役になるのか分からず固まる。
「お相手は…学長の血を引く御子息。浅野学秀君です!!」
「ええーーっ!!」
可哀想な事になった。苗字はE組との関わりを持ってしまったがために、密かに秘めていた思いを下世話な先生に暴かれてしまったのだ。あの超人の息子との恋愛なんて、恰好のネタにしかならない。”天才と天才による恋愛方程式”というタイトルまで考えられていた。
(絶妙にダサいタイトル…!)
しかし、E組の生徒も下衆だった。先生がこれなら生徒がそうなっても仕方がない。名前の恋愛は今日の雲行きのように怪しい兆しが見えはじめていた。
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