星屑

09


「解せないとでも言いたそうだな」

実のところ本当に解せない。何を根拠に言っているのか分からないし、その根拠自体が間違った解釈である可能性が拭えない。

「お前は人に頼られると断れないだろ」

「そうだけどね。それって強み…?」

福富のちょっと天然な所が発揮されたのだろうと、名前は半笑いする。彼から見て私はどのように思わらていたのだろうか。

名前はNoと言えない日本人の典型的な例であった。しかし、できない事は流石に前もって断りを入れる奴だということは分かっている。付き合いが長い分、その様な場面を福富は幾つも目にしてきた。身近なところで言うと、新開宛のファンレターやプレゼントを渡す勇気のない子からの頼み。文化祭のときだって、部活で出れない人の分を彼女がこなしていた。その光景を見て、そして感じていた事がある。

「強みだ。何故なら全てやり遂げてしまうからだ」

「…!」

名前は要領が良かった。何事も卒なくこなすタイプの人間である。だから多少の頼み事など彼女からしたら容易いことだとそう思い込んでいた。

「その器量の良さと面倒見の良さは並大抵の奴が真似できるモノではない。立派な強さだ」

「…ふふっ、伊達に部長やってないのね。よく見てるなぁ」

名前の瞳には若干涙が溜まっていた。福富のせいだ。自分でも気づかない程の事を彼は覚えていて、且つ分析していた。私という人間を私以上に分かっていた。それは多くの部員を束ねてきた彼だからこそ成し得る技なのであろう。

「その強みを生かせる場所に置いてみろ。すぐに成長して開花しちまうぜ」

新開は私を肘で突いた。二人に励まされて、瞳は潤んでいるが、彼女は心から嬉しかった。自分にも強みがあったこと。福富が言った強さを。私も何処かで彼らの様に努力を重ね、それを活かす可能性があるということに。

「俺達は名前ちゃんに羨ましいと思われる程凄い奴じゃない。ただのチャリ馬鹿さ。名前ちゃんにもきっと何か熱中できるモノがみつかる。それは仕事なのか、スポーツなのか或いは趣味かは分かんねぇが」

俺たちの場合はそれが自転車だっただけ。彼女にもきっと何か見つかるはずだと、彼女が一番欲していた言葉を二人は簡単に言ってみせた。

「ならきっかけを見逃さないようにしないとね」

「ああ、その意気だ」

心がすっと軽くなった気がした。すっかり3人とも飲み干したコーヒー缶を自販機の隣にあるゴミ箱に入れる。福富はビン、カンと別れていたらきちんとカンの方に入れたのに対して新開は気にすることなくビンから入れたのを見て、行動は性格を良く表していると実感した。

「今度、家に食べに来る?ちょっとお礼したいかも」

車に戻る足は軽かった。窓越しから中を覗くと石垣はまだ寝ている。その顔に癒やされて気分は更に上昇した。だから家に誘うくらいには浮かれていた。普段ならゼミのメンバーでも男子は部屋に入れないというのに。

「マックのいいやつ食べたい」

「俺はりんごがいい」

「うん、手のかからないものが好きで良かったよ…って福富に至ってはギャップが凄い」

好きな料理でも作って気軽に家パでもと考えていたが、新開はファストフードを所望するし、福富はりんご単体だ。何かハードルの高そうなモノを言うかと思ってたから練習するつもりだったのにとてつもなく簡単に準備ができそうなメニューになってしまった。そしてその後、新開がとんでもない爆弾を投下する。

「なら彼も誘おうぜ。レースお疲れ会って事で」

「ふぁっ…石垣くんも?!」

「ああ、名案だ」

いや、やるの私の家なんですけど。

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