この度テンプレート妊娠をした私ですが(中)




それから約十年前後の時が経った。
私は高専を何も言わずにやめて実家に帰った。家は一般家庭どころか転勤族であり高専に入ってから五回ほど住所を変えた。もはやめちゃくちゃな田舎なので、居場所はバレてないはず。まあ両親には怒られるだろうが、なんとかやっていきたい。そう思って突然の帰宅に驚く両親に打ちあければ、割と怒られた。そんな怒る?と思ったけど怒りは夏油へだった。「あんたは悪くない!悪いのはその男!」と夏油の心象ガタ落ちである。怒り心頭の両親に子供を産みたいから産むまででいいからここに置いてくれと話せば難色は示したものの、子供に罪はないしなんならずっといればいいと協力してくれることになった。
周りは子供を孕っている高校生あたりの年齢の私に割と同情的で、なにかと助けになってくれた。お礼に呪霊をこっそり祓ったりしながら子供を産む準備をして過ごした。仕事は闇金みたいな感じで、秘密裏に呪霊を処理するルートを掴んでそこに組みいらせてもらった感じでお金をもらった。
そして、私はその子を、英を産んだ。
英。読み方はあきら。なんとなく昔あった英傑ゲームの名前を思い出して「そういや夏油傑って傑じゃん。なら英がいなきゃね」というくっそしょーもない理由の名付けで申し訳ないとは思ったけども。
とにかく英を産むまでと、産んでしばらくは「この子をちゃんと愛してやれるかなー」と不安はあった。だって一応強姦してきた相手との子供だし。愛はなかったんだから。
でもまあ、そんなものは杞憂で。
自分を雛鳥のようについてきて慕ってくれる子供はみな可愛いものである。それが自分の息子なら尚更。
しかし問題といえば、すくすくと、本当にすくすくと育っていくほどに英がめちゃくちゃ似てくるのである。
誰にって?夏油に決まってんだろ。
いやほんと、クローンですか?ってレベルで遺伝子が強すぎる。ミニ夏油じゃん。小学生なのに何その色気と微笑み。全く私の遺伝子ないじゃんわろた。呪術師の子供だし呪霊も実は見えてんじゃないの。
まあ、そんなことを思っているとは知らず息子は今日も元気である。とても可愛い。
「おい茉莉」
・・・・・・訂正、無表情で親を呼び捨てにするところは可愛くない。
「英、母親を呼び捨てにしない」
「あ?なんで。茉莉は茉莉だろ」
「だからって外で呼ぶなや」
平然と私の名前を呼ぶ英の表情筋は動かない。夏油の胡散臭さとは違いその人形めいたさまは別の不気味さがある。おまけに無愛想で笑わない無口なミステリアス・・・・・・無愛想なのは多分私に似てしまったのかなと思うと少し落ち込んだし、口の悪さも確実に私の責任だと反省した。名前呼びに関しては全く直る気配がないのでもう諦めているが性格に関してはなんとかしなきゃな、と息子の教育方針について考えていると、英がさっと荷物を持ってしまう。
「あ、」
「買い物の時くらい呼べよ。俺が行くのに」
「いやお前学校あるからね?呼ばないわ普通」
「それ言ったらあんただって仕事あんだろ」
「かー、ああいえばこういう。誰に似たんだほんと」
「しらねぇよ」
軽口を叩きながら帰り道を歩く。ランドセルを背負って買い物荷物を息子は、かなり将来が心配になるほどには無愛想だけど優しい子に育ってくれた。何も言っていないのに私の居場所を理解して待っている。その勘の鋭さが怖くなる時もあるほどに。
『茉莉は俺が守ってやるから』
けれどそうやって、真剣な顔をしていってくれるのを見るに嫌われてはいないんだなぁと思う。
「茉莉、今日の晩飯なに」
「今日はカレー」
「マジ?やった」
幸せだし、まあ結果オーライってことで。


とは、問屋が卸さない。


「やあ、瀬崎」
ひら、と手を振って私たちの家の前に立っていたのは、めちゃくちゃ見覚えのある顔だった。
「げ、とう」
目を見開いて息を呑む私に、夏油はにこやかに話しかけてくる。
「元気そうだね、その子は私との子供かい?」
そう聞かれても、そんな。全部わかってるみたいな顔してるんだから、知ってるんでしょう。そう言ってやりたくなる。まずい。何がとは言わないが、まずい。そう思った時である。

「茉莉に手ェ出した種馬はお前か糞野郎!!!」

そう言って息子が夏油を爆破しようとする時に、私は息子が術式を隠し持っていたことを知った