この度テンプレート妊娠をした私ですが(前)




「この度テンプレート妊娠をした私ですが、彼にはヒロインがいるようなので退場します」
よくあるテンプレ妊娠もの。
さっと読めてさっと忘れられる話を目指しました。
続きはないけど気が向いたら書く
夢術廻戦
夏油傑

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死んだら転生した。そしたら呪術廻戦の世界だった。しかもさしす組の同期。なんじゃその三流小説死んでも笑えねぇと思うだろ?残念ながら現実だ。きっと今世の兄貴だってこんな様子を見たら常日頃の微笑みを崩すことだろう。簡単に人が死ぬこの世界。自分もすぐに死ぬんだろうなと思っていたのに、悪運が強いのかなんなのかそれなりに出世して生き残ってしまっている。死にたくはないがそのせいで中途半端に信頼されてしまっているのが全く笑えない。
唯一の救いといえば、夢小説のヒロインが同期に一人いることだろうか。なんでわかるなかって?廊下で会うたびに毎回毎回睨まれてればそりゃ察しもするでしょうよ。「あ、この子同じ転生者だ」って。原作キャラじゃないとか呟いてるのも聞いたことがある。おーこわ。可愛い女の子がしていい顔じゃないぞそりゃと呑気に考えていたが、近づかないで優しくされてるからって自惚れないで私の恋の邪魔をしないでと言われた時は流石にいい気はしなかった。おいおい家入はともかく他二人はクズだぞ。あんなのと恋愛なんざこっちだって死んでもごめんだ。そう思っていたから、無視して関われば良かったのかもしれないけれど。彼らと話している時のヒロインの顔が怖かったので、同期達とは最低限の関わりに努めた。友人がいないのは少し寂しかったが、私自身の安寧を守るためには仕方がない。ただぼっちになったせいで任務を多く割り振られるようになったのは未だに納得できないが。お陰でろくに教室に顔を出していないし高校生にして社畜生活である。
ヒロインはか弱そうな女の子ではあったが芯が強いらしく、同期達からも気に入られていた。特に五条と夏油。ま、確かに可愛いもんな。胸もデカイし。死んだ目をしたモブ同期より胸がデカくて可愛く自分たちを慕ってくれる女の子の方が好きに決まってる。うんうん、美形の集まりは目の保養だ。それは別に構わない。救済だの原作改変だのは別にマジものの呪術廻戦ファンだったわけでもないのでどうでもいい。やるならどうぞご勝手にという感じだ。ただ、さしす組に囲まれてる時に勝ち誇ったような顔でこちらを見てくるのはやめてほしい。こちとら生き残るのに必死で恋愛なんざ欠片も興味ないっつの。そういうのは人生に余裕のある奴がするべきなのだ。
はいはい愛され逆ハーおめでとーと呟きながら全く関係ないと呪霊を祓いまくる日々。現場に出ないくせにネチネチネチネチ言ってくる上層部の糞野郎どもに社畜スマイルを向けて、昼でも夜でもうようよしてやがる呪霊どもをいなす日々。しかも私の術式は爆発である。呪霊にぶちまければめっちゃストレス発散になるね。万歳。
そんなふうに社畜根性だけでこの三年を生きていたもんだから、なんでか知らないけど最強の一人・・・・・・未来で非術師大量虐殺をやらかす夏油にロックオンされたことに全くこれっぽっちも気づかなかったのである。なんでやねん。そこはヒロインにいっとけよ。
彼に何かをした覚えはない。ただ任務の時に灰原は助けたしなんならおでん屋で会ったおっさんが伏黒甚爾だったりしたから札束突っ込んで天内も間接的に助けたので、それ関連かもしれない。まあ内心ヒロイン何やってんだよ助けろよとは思ってたけど、まさかそれが仇になるとは。
あと、それ以前にも彼が辛そうな時や呪霊を取り込む時に声をかけて飴をあげて少し話していた覚えはあるが、何言ったかはさっぱり覚えてない。なんで声をかけたのかって、だって嫌じゃんそんな関わりないとはいえ自分の同級生が苦しそうにしてるの見てるだけなの。あ、うん確実にそれだな。
まあ、それはよかった。周りの見る目がヒロインよりも私の方に向いてきたこととか同期が私に声をかけてきてモブではなくクラスメイト程度に格上げしたこととか夏油が私に秋波を寄せてくることとか、まあ言いたいことは山ほどあるが。それはまあ、いい。後輩生きてるし夏油も離反しなかったし、万々歳ってやつ。

「であれば、よかったんだがなぁ」

そうため息を吐く私の手の中には妊娠検査薬。おめでとうございます見事に赤です。つまり、子供がいるということだ。私の腹の中に。
相手は夏油。ていうか夏油しかいない。原作で彼が離反することになる原因を作った村から子供二人を連れて帰ってきた夏油にめでたく襲われたのである。お前私のこと好きなの、それとも鬱憤晴らしたいの?と言いたいことは山ほどあったがあまりにも泣き出してしまいそうな顔をしていたのでやめた。それでされるがままになっていた時点で私にも過失はあるのだが、まさかデキていたとは。
別に、夏油の方が嫌いなわけでは、ない。まあ馬鹿な人だなぁとは思う。あの我儘五条がお前がいない世界を好きに生きれるわけないだろいい加減にしろ、とは常々思っていたし、なんなら非術師みんな死んでくれ!という差別思想をその思想が本物に成る前に本人の口から聞いた時にだって「根が真面目だから極端になるしか生きていけないんだなぁ」とも思った。まあ、女を許容なく襲う時点でクズではあるけどその真面目ゆえに狂ってしまいそうになるというところは、別に嫌いじゃない。
ただ、これを周りに話した後が面倒だなと思った。特にヒロイン。ちょっとずつ同期とのやりとりが増えていって今ではそれなりに話すようになっただけの今でさえ後ろから刺されそうなのに子供ができたなんて言ったら終わる。私の人生が。
それに告白されてないしなぁ。自分に思わせぶりな態度をとる男が子供ができたと言った瞬間家に寄り付かなくなるなんてよくある話。そんなことしないと信じて打ち明けられる可愛げがあれば私も違うんだろうけど、お生憎様。そんな可愛げは私にはない。
あと、夏油は私や家入、ヒロインに対してはそれなりに普通の対応をしているが、五条との明け透けな女性関係を話している時を見るに普通にクズだ。クズ。そんな相手に子供ができたとバレたら?
「消されそう。堕ろせっていわれっかなぁ」
ひとりごちる内容があまりにも現実味がありすぎて怖い。むしろ早く逃げないとそのカウントダウンが始まるのでは?
夏油は流石に後ろめたいと思っているのか私を避けている。そのため今は私に近寄ってこない。なら、このすきにこのまだ見ぬ赤子をどうにか生かす方法を考えなくては。
子供を堕ろす選択肢は頭の中になかった。咎められるべきは私らであってこの子にはない。それにできてしまった以上、その命には責任を取るべきだ。
ぐるぐると考えて回った結果、私はぱっと思いつく。
「そうだ、高専やめよ」

始まりは間違いから