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ワタシが次に生まれた世界は、悪魔とかデビルハンターとか、そんなのがいない世界だった。多分、テレビでよく流行ってたテンセイって、やつを体験してるんだと思う。たくさん生きたし、生まれ変わったけど、馬鹿は馬鹿なまんまだったから、難しいことはよくわからない。ただ、死んで、もう一度悪魔のいない世界に生まれた。それだけ。
今世も、親はいなかった。違うところがあるとするならば、父親の借金がないことと、あと施設に入れられていること、ご飯が食べられること、仲間がいること・・・・・・みんなが、ポチタが、いないこと。
やっぱり、家族同然で、もはや一心同体と言ってもよかったポチタがいないのは寂しい。アキとパワーがいなくて埋まらなかった心の穴がまたぽっかり広がってしまった気分。
そうして塞ぎ込んでいたけど、このままじゃダメだなって思って。前世は、ろくな人生じゃなかったから。どうにかこうにか真っ当になりたいと思った。真っ当になってそれを誰に見せるわけでもないのに、見せる相手もいないのに、真っ当になりたいって思った。
だから、身嗜みとか、口調とか、苦手な勉強も頑張って、ほんとは逃げ出したかったけどやれるだけやろうって思って。
「お前のこと好きだから、付き合え」
そうしてやってたら、いつのまにか告白されていた。
いやワタシ、男に興味ないんだけど。そう言おうとしたけど、ほんのり目元を染めて目を逸らして、わかりやすいくらいむずむず口元を動かしているのを見たら、「真っ当になるって、付き合うこともあるのかなぁ」なんて思っちゃって。つい、頷いていたのだけど。
「ていうかお前まだデンジちゃんと付き合ってんの?」
「ああ」
「いやほら、あの高嶺の花誰が落とすかって賭けだったじゃん?結局罰ゲームでお前が告白してボロ勝ちだったんだから、早く別れちまえばいいのに」
「それオレも思った!デンジちゃんがOKした時点で賭け自体は終わったろ?いつまで付き合うんだ?」
「・・・・・・そう、だな。いつまでだろう」
「濁すなんてお前らしくねぇ〜!!」
そうして下品に笑われていたことを知った時、「ああやっぱ男ってくそだ」って思った。いやしかし、体に値段をつけられたことはあったけど賭けの対象にされたことはなかったな、なんて考えながらも、はふと小さな息が漏れる。
「やっぱ恋愛ってめんどくせぇ」
まあでも、別れないとなぁなんて、思った。男は元々嫌いだ。アキとポチタと、あと吉田は別だけど。やっぱり付き合うならば女の子の方がいい、可愛くて柔らかくて優しい女の子。そんな女の子になら、弄ばれてもいいかもしれない。
げんなりと肩を落として帰る道で、徐に携帯を取った。こんな文章を打っているときでも未練もクソもないんだから、やっぱり男のことなんて好きじゃなかったんだな、と嘆息する。無駄な時間だったかもしれない。
別れよう、と。そうしてメールを送信して、さっさと着信拒否にして、連絡先を消した。妙に清々しい気分だった。
ぐぐ、とのびをして、小さく息を吐いた。さて、本当はデートの予定だったけど、もう別れたし。これからどうしようかと頭を回しながら、街の中に溶け込んでいく。
このまま、全部溶けてしまって、そのまま忘れられたらいいのだけど。
「デンジ、?」
ふと、レコードみたいに繰り返しワタシの耳を焼く声がした気がして、振り向いた。そんなわけないのに目線をうろうろさせて、その姿を探してしまう。ああ、いなかった。そう思って落胆して、目を前に向けて、
そしたら、くん、と手を引かれた。焦ったような手の引き方だった。この、力加減も何もない引っ張り上げるような力強さを、ワタシはずっと覚えている。
「アキ、」
呆然と、名前を呼んだら。
お前が泣き出しそうな顔で睨むから、何だか笑ってしまったのだ。
だって、その縋るようでいとしさと喜びと泣きそうなほど美しい何かを混ぜ込んだ視線が弓形に細まって、唇がただ一つの名前に解けていくのが、どうしようもなく好きだって言われているみたいだから。さめざめと泣きたくなるほど、しあわせそうに名前を呼ぶから。
「デンジ」
そうして抱きしめられたその後に、ポチタが現れてアキにアタックしたり、パワーがポチタを追ってやってきて大騒ぎになったり。
ナユタ(中身マキマさん、なのか?)や岸部と再会して、クァンシというどタイプの美女に見惚れたり。
吉田とアキがばちばちしたり。
なんて、こともあるんだけど。
それはまた、別の機会ということで。
ところでナユタにファムファタルって言われたんだけど、ファムファタルってなに?食べれるの?
