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パチリと気持ちよく目が覚めて、まずここはどこだろうと辺りを見回せば、風太さんが私が寝かせられているベッドの脇で眠っていて、少し離れた所にカイロスさんがいた。
波の音、木目のある壁、ゆらゆらと揺られるこの感覚から、ここはきっと船の中なのだろう。
知っている気配はあるかと探れば、パパにマルコにサッチにイゾウ、ハルタにエースにビスタと知っている気配だらけで、どうやらここは白ひげ海賊団の船らしいと理解した。
(王、起きたか。……全く無茶をする)
そう言ってすり寄ってきた風太さんの背中を撫でていると、部屋の扉が開かれ、そちらに目を向ければ、エースが驚いた表情で立っていた。
「なんだ、起きてたのか。俺はてっきりまだ寝てるもんかと思って……」
エースはそう言いながら部屋に入り、頭の後ろをかくと、私の腕をとって引っ張ると立ち上がらせた。
「起きたんなら、皆に挨拶しに行こうぜ」
突然の事に驚いてよろめく私を気にした風もなく、エースは私を甲板まで引っ張って行った。
そこには沢山の懐かしい顔があって、大なり小なり怪我を負ってはいるものの、生きている事が嬉しくて胸がいっぱいになって、溢れた感情が視界をぼやけさせた。
次から次へと溢れてくるそれを止められなくて手で拭えば、サッチが私の頭に手を乗せてぐしゃぐしゃと少し乱暴に撫でた。
「ありがとな。助けてくれて」
照れているのか、はにかんだ表情で笑うサッチにつられて笑顔になれば、なぜかもっと乱暴に頭を撫でられた。
「俺も、ありがとな。助けてくれて。正直あの時は死を覚悟した」
相変わらず私の腕を掴んだままのエースは、そう言うと太陽みたいな笑顔を浮かべた。
「俺からも礼を言う。ありがとう苗字。
だが、自分を犠牲にするような助けかたは感心しねェ。苗字も俺達の家族だ。てめェが死ねばここにいる全員が悲しむ。他を大切にするのもいいが、もっと自分のことも大切にしろ」
パパのその言葉に分かったと頷けば、船中に響き渡る声で「メシー!!」と叫ぶ声が聞こえた。
驚いて涙も引っ込んだ。
「だ、そうだよい。エース、てめェの弟が目覚めたみたいだねい」
「苗字も目覚めた。エースの弟も目覚めた。めでてぇ!今夜は宴だ!!」
パパの言葉で皆騒ぎだし、私は皆から
「お帰り」
「久しぶり」
「大きくなったな」
「生きてたんだな!」
と声をかけられ、頭を撫でられ、抱き締められ、もみくちゃにされた。
宴が終わった翌日、ルフィは「俺は弱い!だから修行する!」と言って一緒に船に乗っていたらしいジンベエさんと一緒に、トラファルファさんという男の人の船に乗ってどこかに行ってしまった。
別れ際にトラファルファさんに「面白いもんを見せてもらった」と言われたが、なんのことかさっぱり分からない。
それから数日後、マルコと一緒に甲板でくつろいでいると、ニュースクーが通りかかり、ニュースクーからマルコが新聞を買い、それを広げ数ページ捲り記事の内容を目で追うと「へぇ…」と何かに感心したように呟き、私を見てニヤリと笑みを浮かべた。
「見てみろよい」
そう言って目の前に広げられた紙面には、でかでかとルフィの写真が載っていて、なんだか見覚えがあるようなないようなその場所は、よく見れば、私がうっかり植物だらけにしてしまったマリンフォードだった。
後ろで剣を振り上げているマリンルックの男の子がいたが、それはみなかったことにした。
そろそろ英語の勉強を本気でしようかなと、相変わらず難解な英文にいどんでいると、マルコの手によって次のページを捲られた。
それを見て思わず動きが止まった。
そこには私の写真が載っていた。
正しくは、ドフラミンゴさんにもらったお面を着けている私の写真で、顔の半分が隠れていて誰かほとんどわからないが、これは私以外の何者でもない。
写真の上には大きく"WANTED"の文字。
写真の下にかかれた数字は、0がいっぱいすぎて数えるのが面倒になった。
「"雪ヒョウのシロ"だとよい」
嬉しそうに笑うマルコは「オヤジに見せてくるよい」と言って、パパの元に行ってしまった。
マルコの股の間でくつろいでいた私は、マルコという背もたれを無くしてしまい、ゴロリと甲板に寝転がった。
これで私も晴れてお尋ね者の仲間入りというわけだ。
嬉しくない。
そもそも、誰も傷つけてないし、悪いことをした訳でもない私がお尋ね者とはどういうことだ。
いや、マリンフォードを植物だらけにしたのはちょっとは悪いと思っている。
青い空を見上げためいきをついた私は、それでも、笑顔で嬉しそうに駆け寄ってくるエースやサッチを見て、大切な人達がこうして笑顔でいられるのだから、後悔するようなことはないのだと思うことができた。
end