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どういうわけか、苗字が俺に触れてしばらくしてから痛みは引いていき、不思議に思いその部分に触れてみれば、傷が塞がっていた。
どういうことか尋ねようにも、肝心の苗字は突然意識を失ってしまい、バランスを取れなくなった体が、床に体を打ち付けてしまう前に、なんとか右手で受け止め、意識のないその顔を見つめた。
妙な面を着けていて、そのすべてを伺うことはできないが、顔色は悪くなさそうだと、安堵のため息をはきだした。
辺りを見回せば、ついさっきまではなかったはずの植物がところせましと生えていた。
遠くでは混乱した子供の声が沢山聞こえて、思わず眉間にシワが寄る。
これすべてをこの苗字がやってのけたと言うのだろうか。
もし、こんな力を自分達が出会った時から持っていたというのなら、どれだけ今まで苦労して、その力の大きさにどれだけ苦しんできただろうかと思うと、胸の詰まる思いがした。
「……帰るぞ。家族のいる所へ」
意識のない苗字にそう話しかけ走り出せば、白い鹿と梟が付いてきた。
「グラララ!てめェ等も船に来るか?」
そう言えば、苗字と一緒にこんなヤツがいたなと思いだしそう問いかければ、返事なのかなんなのか、1匹と1羽の鳴き声が返ってきた。
途中、「この戦争を、終わらせに来た!!」なんて格好をつけて現れた赤髪に遭遇し、「もう、終わってんだよ。鼻たれが!」と言って横をすり抜けた。
「え?あれ?……なんだこれは!?」
なんて驚いている赤髪に後の事は任せ、港に着いたはいいが、一人で舵をとれそうな船がなくて、どうしようかと立ち止まり、赤髪の船を襲おうかと馬鹿な考えが頭をよぎったとき、見つめていた海面が盛り上がり、そこから海王類が現れた。
こちらは逃げるので忙がしいのにと、能力を発動しようと構えれば、横を白いものと茶色いものが通り抜けた。
よく見れば、それは苗字に着いて来ていた鹿と梟で、そいつらはその海王類の頭に乗るとこちらを振り向き、お前も早く乗れ、とでも言いた気な視線を寄越した。
「グラララ!!そうか!」
俺が海王類の頭に飛び乗ると、その海王類はゆっくりと進み、ついには正義の門を抜けてしまった。


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