そばにいるよ #02


子供の成長とはあっという間である。
特に育ち盛りの男の子は春休みの間にニョキニョキと背を伸ばし、そのさまはまるでタケノコの様である。そして女の子はと言うと、これはまた別の意味での成長深度を見せるのである。

中学までは律とほとんど変わらなかった靖友の身長は、箱根学園の入学式を迎える頃には10センチ強の差をつけるほどに伸びていた。あれほど伸び悩んでいた中学生時代は何だったのか。一方、律の縦への成長は中学で終わってしまったのか身長測定の結果は1ミリの変化もなかった。その代わりと言っては何だが、思春期真っ只中の彼女は子供特有のポッチャリとした脂肪を脱ぎ捨て、出るところは出て引っ込むところは引っ込むという女性らしい体型へと変貌を遂げていたのである。

女子にしては少し高めの身長とすらりと伸びた手足。ミディアムレイヤーの髪に縁取られた色白の顔には緑がかった色素の薄い瞳が輝いている。小さい頃集めていたビー玉のうち、律の瞳に似た物だけは捨てられずに今も机の引き出しに転がっているのは靖友だけの秘密だ。唯一残念なのは虐められ体質で身に付いてしまった困ったような下がり眉だが、それさえも庇護欲を駆り立てるともっぱらの噂である。

つまり、中学まではマイナスイメージで男子の視線を集めていた彼女は今、ここ箱根学園でちょっとしたセックスシンボルとして男子の視線を集めていたのであった。

遠目に見かけた彼女は今日も男子生徒の視線を浚っている。

ツマラナイ授業をサボって教室から飛び出して、授業よりも更にツマラナイモノを見つけてしまう。そうして勢い余って学校から飛び出すのは、ここ最近の靖友の日課になりつつあった。


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