当事者の場合




何か、嫌な夢でもみていた気がする。

そして閉じた瞼に光が差し込む感覚が。
そろそろ、眩しいので目を開けようか。
ぼけーっとしながら目を開くと、いや、目が開くではないか。

(あれ?さっきは目も体も何もかも無かった気がしたのに…あれ?!)

そういえば精神体が何たらとか輪廻転生が何たらとか誰かが言っていた気がする。アレはもしや夢でもなんでもなく現実だったのだろうか。そうとするとこれは一体どういう状況だ。

(とりあえず現状確認が必要だよね…?えっと、何も記憶が無いのに言葉は分かるし脳内で簡単な計算もできる。ペンの使い方とか基本的なことも分かるぞ…)

と言うことは、だ。
この身体の記憶だけすっぽりないのである。
詰んだ。どう生きていけというのだ。

ただただ混乱と謎の腹立たしさを抱えながら身体を起こしてベッドの上で頭を抱えてると、外が騒がしくなってきた。止めてくれ、いま私はとても頭が痛いんだ。
そんな願いも聞き入れられず、その“騒がしさ” は病室のドアを開けて飛び込んできた。



「美衣先輩!スミマセンっした!!!本当に反省してるッス!!」
「マジで悪かった美衣。姫宮があんな奴だなんて知らなかったんだよぃ…!」
「飛び降りたって聞いた時は肝が冷えたぜよ。でも頭も冴えた。すまんかった、美衣。」
「私たちは許されない事をしました。でも、仕方の無いことだったのです。」
「お前も大変だったのに、ゴメンな、美衣。」
「美衣、気づいていながらも対処できず、こんな事になってしまってすまない。」
「古田、姫宮ならもう我らのマネージャーではなくなった。安心するがいい。」
「そう、真田の言う通り、もう姫宮は追い出した。だから戻ってきてくれないかな…美衣?君がいないと俺達は駄目なんだよ。」

見知らぬ8人に突然取り囲まれた私から出た言葉は、たった一言だけだった。


「あなたたち、誰ですか?」






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