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紹介したい奴がいるんだ。
王子様にそんなふうに呼び出された。
メイドに手渡された白地に淡い青色で花が描かれた便箋はそのシンプルさもちょっとしたワンポイントの絵柄も私の好みど真ん中でとても好感が持てた。王子様は本当に私の趣味をわかっている。
「オフィーリアちゃんは本当に赤が似合うわ」
一方的にそう決めつけて、私に赤色のドレスばかりを着せる祖母と比べたら、天と地の差である。私は赤色があまり好きではない。好きな色は青なのである。
祖母に連れられていつもの通り王宮へ向かい、祖母が王妃様とお話をしにそちらのサロンへ向かうと私も案内のお姉さんについて王子様のサロンへ向かう。
いつも呼ばれる王子様のサロンには、いつものお茶会の他、彼の婚約者候補を云々とかそういう名目のお茶会に幾度か呼ばれて赴いたことがある。そちらで目にした王子様は塩対応のアイドルもかくやと言うほどの塩対応を極めていた。
ここ数回のそれには家庭教師との勉強を優先して参加していないが、私と二人との時々あまりに違いすぎて驚いたのをよく覚えている。
それにしても、今日は一体何があるのだろう。私の他に気に入った女の子でもできたのか? そちらに鞍替え? 祖母の影響か驚くくらい恋愛脳になっている自分に辟易しながらもお姉さんについて足を動かした。
基本的に他人に対して塩対応がデフォルトの王子様が紹介したい相手なんて、一体誰だろうかと首を捻ってしまう。一体、どんな人を紹介されるんだろう。ぼんやりと思った。あまり、緊張はしなかった。
「オフィーリア様をお連れしました」
扉が開いて、中に見慣れた銀色が見えた。それに自然と笑がこぼれる。私は自分でもびっくりするくらい王子様に懐いている。
「あぁ。リア、よく来た」
「ルー様、こんにちは」
いつの間にか正式な礼はだいぶ簡略化されるようになっていた。私は礼儀作法を忘れがちだし、王子様はあまりうるさい方でない……というか私の事を多めに見てくれている。
「こんにちは」
顔を上げると、見知らぬ美少年に挨拶された。薄い水色の髪が特徴的な美少年だ。王子様のような女性的な美しさには欠けるが、それでもやっぱり美少年だった。
「リア、紹介する。ツバル=ミリアンダだ」
「よろしくお願いします、オフィーリア嬢」
こいつ将来絶対たらしになるぞ。
朗らかに微笑んだツバルというらしい美少年を見てそう思った。私は悪くない。
「オフィーリア=ホルクハイマーと申します。よろしくお願いします」
こちらにはしっかりきっかり、正式なやり方で頭を下げた。こいつはなんだか面倒くさそうである。
「リア、かけてくれ」
王子様に言われて、いつもの通りの席……王子様の向かい側に座ろうと思ったが、そこにはツバルさんがいる。どうしようもない。仕方が無いので王子様とツバルの間にある一人がけのソファに座る。ツバルの座るソファは結構な大きさがあるが、さして親しくない彼の隣なんて考えられない。私はそういうの、ダメなタイプです。
「ツバルは宰相の息子で、最近王宮に出入りするようになったんだ。なかなか癖のある奴だが、面白い。だからお前にも知らせておこうと思ってな」
「そうなのですか。では是非、よろしくお願い致しますね」
「こちらこそ、ルーナのお気に入りと名高いオフィーリア嬢にお会いできて光栄です」
「そんな、いいえ……」
とりあえず謙遜しておこうと思った。彼は一体全体どういった人物なのか皆目検討もつかないが、それでも何だか穏やかならぬ人だということに確信を持てた。なんてったって美少年。
というか、美少年の王子様の幼馴染が美少年で、この世界は妙に私にとっての「現代」と「近世ヨーロッパ」が混ざりあっていて、貴族には通うべき「名門学校」がある。どこの乙女ゲームですかと小一時間問いただしたいような世界だと、改めて思った。もし王子様やツバルさんがヒロインと恋愛をするのなら、私は不要と切り捨てられるのだろうか。そうしたらその時、ヒロインはきっとテンペスト家のご令嬢なのだろう。私と同い年らしい彼女なら、何もかもがぴったりだ。多分。
「リア、緊張しなくてもいい。此奴は面白い奴だが、別にお前の事を取って食べる訳でもないんだ」
「そうですよ、オフィーリア嬢、仲良くしましょう」
王子様とツバルさんが微笑む。太陽の光と見紛うばかりの輝かしい笑顔に私の中で罪悪感がちくりと傷んで、つい、わかりましたと頷いてしまった。
王子様の事は大切だし、好きだけれど、ツバルさんはなんだか、少し怖い。

まばたきが遠くなる