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騒ぎの中心にいたのは、二人の少女だった。
多分私よりも幾分か年上らしい大人びた雰囲気の二人である。藤色のふわふわとした長い髪の少女に、金髪碧眼のこれぞお嬢様といった風貌の高飛車そうな少女。
後者の少女の方は、私も知っていた。彼女は王家の分家であるさる公爵家の令嬢であり、私と同じ……といっていいのかはわからないが、王子様の婚約者候補の一人である。選民意識や自尊心の強い少女漫画や少女小説なんかで出てきそうな典型的なかませ犬。そんな印象を抱いていたが、この騒ぎを見るに多分、空気も読めない質だろう。近くにお慕いしている王子様がいるのに、これである。
「卑しい色だわ」
そう言って、目の前の令嬢の目の色を貶めているらしい。そうそう、彼女はそういうことをするのが好きな人だった。
私もやっぱり、妾腹だと笑われたことがある。私も貴方も王家の分家であることに変わりはないし、寧ろ現王とも懇意にしている祖母を持つ私の方が客観的に見た地位は上なのではないだろうか、なんて身贔屓激しい考察をしながら聞き流していたが、彼女はどうやら誰にでもそういったことをするらしい。
残念ながら名前は覚えていないのだけど、一体誰だっただろう。
「そんな瞳をよく人前に晒せますわね。テンペスト家の血が少しでも正しく受け継がれているなら、ルーナ様の記念すべき生誕の日にそんな物を見せられる訳がありませんわ」
ぼんやりと私が騒ぎを見ていると、言われるがままだった藤色の令嬢があでやかに微笑んだ。十代前半とは思えぬ大人びた、妖艶さのある様子に驚かされる。なんて綺麗な子なんだろう、とも思った。
「フランシア様にとって私の瞳が悍ましい物であったとしてもそれは仕方がありません。私の見目をどう感じるかは人それぞれですから」
フランシア、そうだそんな名前だった。王子様とも、それなりに親しいと聞いたことがある。それでもオフィーリアちゃんなら大丈夫よ、なんて王子様に私を嫁がせる気でいる祖母は言っていた。何を言ってるんだろうと心から思ったものである。
「ですから、私の目が不快であるならそれで構いません。私を視界に入れないよう、頑張って下さい」
藤色の令嬢がそう言って、微笑みを深くした。
やっぱり、綺麗な子だ。
「凄い……かっこいい……」
思わずそんなふうに感想が口を滑り出て、ギョッとしたように王子様がこちらを見たのがわかった。慌ててなんでもありませんと取り繕うと思ったが後の祭り。結局なんにも言わないですっと視線で藤色の令嬢を追いかける。
藤色の髪、藤色の瞳。
誰にも支えられずひとりで立つだけの高潔さ。素晴らしい人だった。私なんかとは大違い。
羨ましい、かっこいい。あんな人になりたい。そう思ってしまった。思ってしまった自分が、恥ずかしかった。
「ツバル、あの令嬢を呼んできてくれ」
「お気に召したか?」
「いや……そうじゃなくて」
「まぁいいさ。行ってくるよ」
惚けたように彼女の去った方を見つめていると、頭の上でそんな会話が聞こえてきた。小柄な私と違って将来の長身を約束されている王子様とツバルさんは年の割に身長が高い。
「……私、そろそろ失礼致しますね。私がいると、他の方が挨拶するのがむつかしくなってしまいます」
二人はどうやらこれからあの藤色の令嬢をお呼びするようだったけれど、彼女が王子様とお話するのを邪魔してしまうのが申し訳なかった。頭を下げて、笑みを作った。上手に出来ていたかなんて言うのはわからなかった。
分かったとうなずいてくれた王子様に再度お礼を言って、それから私は二人から離れた。
これからどうしようとか、そういうことは何も考えていなかった。父や養母のもとに行くなんてありえないし、祖母は祖母でひどく目立つから探してみれば、国王夫妻と王太后様とおしゃべりに興じていた。あの雲上人ゾーンには近づけまい。しょうがないから、一人で壁の花になることにした。

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