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クラスB。私が割り当てられたクラスである。
教室に入ると、サッと視線がこちらを向いて、ひそひそと女子も男子も何かを話し始める。入学式を難なく終えたと思ったのに、どうやら学校生活の幸先はこの上なく悪い。
友達は出来るかな、なんて不安だったが、多分出来ないのではないだろうか。
こちらに向けられるのは、どうしようもないくらいの好奇の視線。我が家は王家の分家、その中でもとびきりの権力と権威がある。祖母が死んでも、国王は従兄弟である父を本当の弟のように可愛がっている。ホルクハイマーという家の勢力は留まることを知らない。確かに臣下に降ったとはいえ父も一応、王族を名乗ることが出来る家柄だし、最近知ったことだが養母の実家の方も桁外れだ。隣国の元王女。これだけでその勢力を知れるというものだろう。
ただ、そんな私は妾腹で、もともとは後継者と紹介されていたのに最近になって私には弟か妹が生まれそうだ。養母は臨月で、もういつ産まれてもおかしくないし、彼女の体調も腹の中の子供も至って健康だとは王宮侍医ののお墨付きなのである。
王子様との婚約を知っているような家柄の人たちはこの中には見えず、つまるところ彼等彼女等にしてみれば私は格好の餌である。もう一度言おう。いびり倒すための、餌である。私と父母の不仲は恐らくは有名な話であるし、私が何を言おうが背後にある家は動かない。
また、私の背格好は瞳の色を除いて全てが恐らく、母さんに似ている。
まさしく格好の餌だ。
名簿で席を確認して椅子を引く。その近くにいた生徒達がそそくさと立ち去るのを目に、溜息をつきたくなった。どうしようもないな、これ。
友達どころか知り合いすら夢のまた夢、いじめっ子といじめられっ子になってしまいそうだ。学園の中において家名は力をなさないなんてそんな大義名分、形だけである。
友達が欲しい。気を許さなくてもいい。何気なく話すだけの友達が欲しい。出来れば王子様を狙ったり、云々したりしないような。王子様は今の私に残された蜘蛛の糸だ。彼がほかの人を選ぶのなら止めないし、そうすればいい。糸を切れば良いが、そうじゃない人にまで糸を脅かされたくない。
ぼー、と廊下を見ていると、キョロキョロと物珍しそうにしながら通り過ぎていく少女が目に入った。
ふわふわと長い藤色の髪、同じような淡い色の目、ハッとする程に白く、すべやかな肌に薔薇色の唇、スラリと背は高くキョロキョロあたりを見回しても損なわれることのない自信と気品。
あの藤色の令嬢だ。
私を見ていた教室内の誰もがそちらを一瞬見、テンペスト家のマリアベル様だ、と言った。
マリアベル様、マリアベル、テンペスト様。あのテンペスト家のご令嬢だ。
彼女ならもしかして。何となく、直感めいたものを感じた。彼女ならば、友達になってくれるだろうか。
どきどきと胸が高鳴って、まるで恋しているみたいだと馬鹿らしくなった。勿論そんなことは無い。彼女は女の子で、私にそういう趣味はない。多分、何となく彼女に憧れがあるんだと思う。私がそうなりたいと望んだ強いひとを体現したような彼女に、憧れがある。
ほう、とさっきとは別の意味で溜息をつきそうになった。