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お姫様のような少女だ。
マーガレットがオフィーリアを目にした時の、第一印象はそれだった。
長くつややかで毛先がほんの少しカールした銀髪は陽の光を受けて眩いほどに輝き、すべやかな白い肌はマーガレットが今まで見てきた誰よりも白く輝き、唇と頬は淡い薔薇色。長い睫毛に縁取られた瞳は淡い青色。僅かに紫がかったその色味は今は亡き彼女の祖母や、父と同じ色だろう。
儚げで、今にも折れて消えてしまいそうな一瞬の輝き、処女雪が手に触れて溶ける瞬間、その曖昧な儚さを凝縮して造り上げられた至高の芸術品。そういった美しさを持つ少女だった。
少女も少年も教師も関係なく、周囲の誰もが彼女に見惚れ、そしてその立場を思い出して、無様に笑う。
あの顔を見ろ、公爵様には似ても似つかぬ、娼婦の顔だ、と自らが見惚れてしまった顔を笑う。正妻の子に跡継ぎの立場を奪われて、第二王子の婚約者という立場すらテンペスト家のご令嬢に奪われそうになって、どうなるのかも分からぬスペアとしてこの学園に入学してきた娼婦の子供だと誰もが嘲笑う。
申しわけなさそうに目を伏せて、下を向きながらその仕打ちを耐えているようなオフィーリアの姿に、間違いなくマーガレットは見惚れていた。
マーガレットもまた、そうやって笑われる立場にいた。
母は今は亡いが、しかし父に仕える立場の人間だった。正妻は王都に入り浸りで滅多に領地には帰らない。もともと田舎育ちの父と王都で育った正妻は合わなかったのだ。どちらも、何一つ妥協しようとしなかったことも災いした。
そうして彼らはそれぞれに愛人を作り、父の作った愛人というのが母だった。
父はマーガレットをこれでもかという程に可愛がった。彼女が物心つく頃には母が死んでいたということもあり、愛する人の忘れ形見を父は恐ろしく可愛がった。正妻が義務的に産んだ兄よりも、マーガレットは愛されて育った。
兄はそれを甘んじて受ける人柄というのもあったし、何より兄は男で、マーガレットは女だということもあって、兄妹仲はけして悪くなかった。
ただ、正妻に連れられて赴く茶会ではとにかく笑われてきた。卑しい娼婦の娘だといくらでも笑われた。厚塗りの化粧で隠していても、その性根の悪さはけして隠せないのだと学んだ。正妻もまたマーガレットの事を貶めるためにそういった茶会に連れまわしていたのだとおもう。
彼女は兄のことも父のことも愛していなかったが、マーガレットのことは特に毛嫌いしていた。
だからオフィーリアを見た時に、マーガレットは強く心惹かれたのだと思う。誰かに守られていないと生きていけないようなお姫様が、今目の前で震えている。
手を差し伸べなくてはならない。自分しか彼女を助けられる者はいないのだ。
マーガレットは、ある種の正義感に酔っていた。
その酔った感覚のまま、オフィーリアに声をかけた。
初めは貼り付けたような微笑みしか見せない彼女だったが、マーガレットも妾腹なのだと話すと、途端に安心したように笑った。
この笑顔だ。
マーガレットは思った。
この笑顔のためならきっと何でもできるのだろう。この微笑みを向けられる者はきっと、一番の幸せ者で、きっと自分だけがそうなのだ。