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祖母と顔を合わせてから私の生活は一変した。
きっちりと予定の詰め込まれて自由なんてあったものでない、押し込められた生活から普通の子供が体験するような沢山の出来事に彩られた日々が幕を開けるように、私の前にうつしだされた。
ただ、私はそれをここから楽しめず、ぼんやり、ぼんやりと祖母から与えられるものを享受するよりほかなかったのだ。
また、もともと母との日々のために知識を欲していたのだから与えられる勉強は、本当に私にとってさほど苦になっていなかったこともあるのだろう。
父や養母と顔を合わせる機会もまた増えたが、それをどうこう思うようなこともまた、無かった。
彼等はどうや私の中では正真正銘他人に分類されてしまったらしいのである。何を言われようとどうでもよかったし、何をされようとそれこそ殺されなければそれでいいやと思えてしまうほどだった。
なんとなく思ったのは、父と養母は恐らく仲があまり良くないということだった。養母は父を慕っているらしいが、父はけして、彼女の方を見ない。もしかしたらまた、ほかの愛人でも囲っているのかもしれない。
使用人たちの噂話の中で、母もやっぱり、養母と父の不仲が産んだ産物のようなものだということを知った。
それを聞いて父はやはり最低な人間だと思ったし、やっぱり私は一刻も早くここから抜け出したいと思った。この家にいて得られるものは多かったが、それは物質的な側面のものばかりで私の内面といえば、損なわれてばかりだった。
今となっては唯一の孫であるかわいがってくれる祖母の存在は有難かったが、それでも彼女に心から心を開こうとは思えなかった。彼女もまた、あの男と同じ血を流しているのだと思うと嫌悪感ばかりが生まれる。いや、それを言ってしまえば私の中に流れるあの男の血だってやっぱりおぞましいものなのだけれど。
祖母のことは好きだったが、それでも少しだけ、怖かった。彼女の優しさは彼女にその自覚のないだけでただの気まぐれのように思われたためだ。
そんな人の優しさにすがることの恐ろしさはとっくに知っている。
「オフィーリアちゃん、オフィーリアちゃん」
祖母が呼んでいる。にこやかに微笑みながらこちらに手招きする。まるで犬か、猫にするようだ。母さんはそんなことをしなかった。
「お祖母様、何ですか?」
ただ私も我が身が可愛かった。
祖母の言葉を頭から無視するなんてことは無かったし、大抵の事には素直に従う。これだってその一つだ。
私は屋敷の入口でこちらに手招きをする祖母の元に向かう。祖母は相変わらず美しかった。今日、身につけている、海のように青いドレスがよく似合っている。
「オフィーリアちゃんをね、連れていきたいところがあるのよ。今日はその為のお洋服を作りましょう」
「はい、わかりました」
連れていきたい場所のために服を、買うのでは無く作るだなんて! 相変わらず日本人だった私やスラムにいた私の感覚は抜けきらなくて、湯水の如く金を使うこの人達の感覚には驚かされるばかりだった。
私の着ている甘やかな桃色のワンピース一枚、これ一つで母さんは向こう一年お客をとる必要がなくなるだろう。そんな額だった。
頭のいたくなる話だと思う。こうやって金を使って、経済を回すことすら貴族の務めのひとつだという。頭がおかしい。
馬鹿みたいだと、ため息をついた。

膝をついたらおしまい