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目がチカチカと瞬いている。
目が、痛い。
あの家、今となっては私の家でもある彼処も随分と豪華絢爛を極め尽くしたと常々思っていたが、上には上がいる。今、身をもって体感している。
祖母は私を、王宮に連れ出したのだ。連れていきたい場所、わざわざドレスを仕立てなければいけないようなとてもとても豪華で、堅苦しい場所とは一体なんだろうかと思われたが、つまるところは祖母の里帰りに付き合わされているのだ。
現王……祖母の甥と、それから王位を譲ってから隠居して切る祖母の兄、私の大叔父と楽しげに祖母が会話をする横で、私は一人ぽつんと座っている。
その子は噂のお孫さんかしら、と王妃様に声をかけられた時は本当に肝が冷えた。頭がおかしくなるんじゃないかというくらい熱くなって、視界が真っ白になりそうなくらいくらくらと目眩がしていた。
それでもなんとか頭を下げて挨拶をした私は本当に偉いと思うのに、ここではそれは必要最低限の礼儀に過ぎなくて、褒められるなんて夢のまた夢だ。
私は幼い頃からマナーを教えこまれる子供たちとは違うのに。ここにいる彼等はそれを知っていても、理解しようなんて到底思わないだろう。特権階級っていうのは得てしてそんなものだた知ってはいたが、それでも、苦しかった。
「そうだわ、オフィーリアちゃんは良かったら」
大人達の思い出話に退屈そうな顔を浮かべていたらしい私を見て、王妃様が高い声を上げた。
気を利かせてくれた王妃様のありがた迷惑に付き合わされることになってしまった。
「……お前、誰だ」
私よりも二回りくらい年上のお姉さんに精一杯傅かれて、連れていかれた先にいたのは美少年だった。
「……お初にお目にかかります……オフィーリア=ホルクハイマーと申します」
さっきよりはあまり緊張しなかった。
相手が同年代だということもあるのかもしれない。
丁寧にお辞儀をして、顔を上げた先で美少年の顔をきちんと見る。王宮の豪華すぎて全く落ち着かない庭園に悠然と佇むベンチに座す美少年は、女の子と見紛う程に可愛らしい容貌をしている。さらさらとした星屑色の髪、淡い、青色の瞳。
それを見た時、少しハッとした。美少年の方も、私の色彩を見て目を見開いた。
私たちの色は、示し合わせた様に同じだったのだ。
「……大叔母上の孫……はとこ殿か」
私の事を聞いていたのだろうか?
疑問が顔に出ていたのか、美少年は続けて口を開く。
「母上が若しかすると尋ねてくるかもしれないと言っていた。歳も近いから、何かと話も合うだろうと」
母上。
その言葉にやっぱりそうかと少し納得した。美少年は王子様だ。第一王子か第二王子か、それはちょっと分からない。そもそもほとんどを閉じ込められて過ごしていた私にとって、この国の事情とか、一般常識とか、そういったことはすべてスラム時代に身につけたものくらいしかない。王族の細かい事情なんて知るはずない。
「そうなのですね。祖母からはそういったお話は伺っておりませんでしたので、本当に驚きました」
「正式に予定として組み込まれていたわけではないんだ。君はまだ幼いだろう」
お前もな。そう言いそうになった私は悪くない。美少女顔の王子様の見た目は私とそう年齢差を感じさせない。少なくとも五歳前後だ。
「確かに、私は退屈そうにしていたのかも知れません。祖母たちのお話は耳に馴染みがありませんでしたので……」
王子の座っているベンチの脇に立ったまま、言葉を交わしている。なんだろうこの光景は。連れてきてくれたメイドのお姉さんや他の人は誰もいないから、何を思われるとしてもそれはこの王子様にだけなのだろうけれど、いやそれだって、居心地が悪い。
「……まぁ、座ったらどうだ」
王子様が自分の隣、ベンチをぽすぽすと叩いた。
これっていいのだろうか。少しだけ遠慮を覚えたけれど、私の基本はスラム育ちなので、こういうところで遠慮するつもりは無い。ただまぁ、できるだけ遠慮がちにみえるようにしずしずと腰かけることにした。