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まじかよ。じーざす。
私の中の日本人が膝をついて叫んでいる。稀に見る大絶叫だ。私も現実でやっぱり叫び出したい。
王子様と私は、思ったよりも仲良くなっていたらしい。
第二王子で異母兄の第一王子と違って、正妃の子供である王子様は、そのことさらに素晴らしい容姿や人よりも優れすぎたお力や、その他色々の要因が相まって他人に心を開かない系美少年に成長していたらしい。
おっとこいつは何処の乙女ゲームだい?
そんなふうにおもった私は悪くない。絶対に悪くない。
王子様とは全く何も無かったと言っても過言ではないのだ。ベンチの隣に座って、他愛のないおしゃべりに興じただけだ。中身に入っているのは王子様よりずっと年上のくせに、王子様は私よりもよっぽど出来た人間で、博識で、そして何より美しかった。本当に、顔がよかった……。
おしゃべりに興じるというより構ってもらっていると例えた方が多分良かった。王子様はぶっきらぼうに、たまに優しく微笑みながら私の相手をしてくれた。この人は、いい人だ。私の中にそうインプットされるのに時間はかからなかった。
でも、それだけだ。気に入られることをした覚えもないからみんなに優しい人なんだろう、お兄ちゃんがいたらこんな感じかな、とか思っていたが、本当にそれだけだったのだ。王子様が本当は人に微笑みを向けることがほとんどないような乙ゲーの攻略対象のような人を極めていただなんて欠片も知らなかったのだ。
祖母に可愛がられるようになってからというものほとんど毎回という確率で返ってくるようになった母さんからの手紙に返事を書いて、メイドに託したところで別のメイドが私を呼びに来た。
父の書斎に呼ばれて、何を言われるのだと戦々恐々としていたのだが、久しぶりに会った父は良くやったと私を褒めた。
「お前はやれば出来たんだ、良くやった! この調子でこれからも励むように」
何に励むんだ、王子様に媚を売ることに励めばいいのか。
数日前のことを思い出しながらそんなふうに思った。
王子様のことは嫌いじゃなかったが、この、父のことは本当に嫌いだとしみじみ思った。どうせ私のことをあんなに嫌いながら放り出さなかったのだって、跡取りのこともあるが、王子様と私の色が同じだったからだろう。父も養母もまだ若い。私に弟化妹ができる可能性なんていくらでもある。
しかし、王子様に気に入られるくらいで嘆いて叫び出すほど私は馬鹿でも愚かでもなかった。
叫び出したいのは、私がその王子様に気に入られすぎてしまったらしくて、王子様が私に婚約を打診しているという事だ。
「オフィーリア、お前はルーナ殿下に恥じぬような人間にならねばならない。ホルクハイマー家のことは気にするな」
父はそう言った。何言ってんだこいつ。心の底からそう思った。私は跡取りにとお前に引き取られてきたのだ、母さんからはそう言って、引き離されのだ!
叫び出したい、泣き出したい。この場所には私と父しかおらず、助けを求めらる人なんて誰もいないし、そもそもこの屋敷に私が助けを求めたい人なんて、誰もいない。
私は俯いた。
「……わかりました、お父様」
拒否権なんて、存在しない。
まるで人形のように、私は言われるがままに父の言葉に頷くしかなかった。