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最近は、ドラマでよくあるようなものはまったくない。ただ静かに、【私】という存在が空間から消えていく。それもあからさまに消してしまうのではなく、人目があるときはそれなりに消えることを許さない。それでいて間違いなく存在することを許さない。

原因はとても簡単なことだった。クラスでも人気な蝦名さんが、フラれた。そしてそのあとに私がその人と付き合い始めた。だだそれだけ。たったそれだけのことで、私は存在することを許されなくなった。

「やっとぉ?」
「空気のくせにねぇ」
「調子乗りすぎぃ」

堪えかねた、それだけ。私が弱かっただけ。でもそれを本人に相談するわけにもいかないし、私が頑張らなきゃいけないと思った。相談したところで「めんどくさい」とか言われそうだったから。
このままでは迷惑をかけるし、疲れた私はほとんど期間のなかった友達に戻りたかった。それ以上はもう望まない。

「聡子がんばっ!」
「余裕でしょ」
「だよねー」

今日もいつもと同じ。どしゃ降りなのに、世界は憎たらしい程の青空。昨日だってずっと暇で、充実した1日を満喫してた。2クラス隣の人のことなんて全然、考えてなんかない。いや、でもちょっと、本当は考えてたかも、なんて。

「ちょっといい?」

今日も、充実した1日になりそう。





「お前ふざけんなよ!」

雨が降る直前の曇天。
視界は良好。傘は、ない。

「まだ切れてなかったのかよ!」
「間違いなく終わってますよ」
「じゃあなんでまたフラれなきゃなんないのよ!」

蝦名さん、また告白して、またフラれたんだ。

「バカにして…!」

私は俯いて防空壕に入る。傘もない私が雨を凌ぐには、それしか方法がない。防空頭巾をかぶって、蹲って、小さくなって、雨が過ぎるのを待つしかない。
そうすれば、ほら。また空は憎らしいほど晴れ渡る。

でも、そうか。蝦名さん、フラれたのか。私よりキレイでかわいいのにフったのか。なんでフラれたんだろう。並んでたら絵になると思うんだけどな。
蝦名さんも、こんなことしてないで早く月島くんに気に入られるように頑張ればいいのに。私のどこが好かれてたのかもわからないから、具体的にどうしたらいいかとか教えられないけど。

ちくり。手をついた先にガラスがあったらしい。切り口には土が入っていて血が出てこない。早く洗ってしまわないと化膿して大変なことになる。
そうは思っても、まぁいいか、なんて思ってしまうんだからどうしようもない。



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