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たぶん、いや確実に山口には気付かれてる。僕だって好きで調子が悪くなってる訳じゃない。なんとなく調子が悪いだけ。そう言っても、僕も山口も心当たりはある。

あの日から、ずっと調子が悪い。
思い出にするには新しすぎるあの日のこと。1度も目が合わなかった。それ以前も、目を見て話したのなんてどれくらい前のことだろう。そんなこともわからないくらいちゃんと話してなかったと今さら気付く。
泣きたくもなるよね。部活にかまけてほったらかして、気付けばメールだってほとんどしてなかった。考えれば考えるほど、フラれて当然だった。

『話ってなに?』

今思えば、僕の言い方もなかった。
梨都も山口も、僕が元々こういうタイプだってわかってくれてたから成り立ってた関係だってことはわかってた。

『ごめんね、部活の前なのに』
『別にいいけど』
『あの…』

呼び出された時点で、嫌な予感はしてたんだ。

『お別れ、しよう』

なんで?
すぐにそう聞けたらよかったのに、僕の口は勝手に肯定していた。

『…そっか』

なんで肯定したのかわからなかった。

『ごめん』
『私こそごめんね。部活の前なのに』

梨都は地面を見るばっかりで、少しも顔をあげない。もともとの身長差もあるから、つむじしか見えない。梨都の声だけが少し震えてる。
僕からなにか言えれば、なにか変わったはずなんだ。

『…じゃあ』
『じゃあね』

それなのに、僕は肯定することしかできなかった。
柄でもなく軽いパニックを起こしてた。

正直に言うと、話もしないで回らない頭のまま肯定してしまったことを後悔してる。あの時、無理矢理にでも理由を聞けばよかった。なんでって聞いて、ちゃんと話せばよかった。そんなことばっかりが頭の中でグルグルしてる。そのくせ思い出すのは梨都が笑ったりしてる顔なんだから、僕も末期だ。
どんなに思ってたとこでそれが伝わるわけない。

だからって、僕のワガママでよりを戻すのはカッコ悪いよね。



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