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山口に話を聞いて、正直ムカついた。僕に内緒で梨都と会ってたこととか、梨都が泣いたとか。もう付き合ってないんだからこんなこと思うのがおかしいんだろうけど、それでもムカついた。
だいたい誰だよ蝦名って。なんで僕が知らない人と付き合わなきゃいけないのさ。梨都のことが好きで告白して、付き合って。あんまり恋人っぽいことをしてあげられなかったけど、僕は梨都が好きなんだよ。

「梨都」

久しぶりに名前で呼んだ気がする。
梨都は教室の隅っこに1人でいた。友達たくさんって感じではないけど、1人って言うのも違和感がある。

「ちょっと」

呼べば少し俯きながら席を立つ。少し前だったら嬉しそうと言うか、少なくとも苦しそうな表情はしなかった。

「なにかな」
「蝦名さんって誰」

そう聞いた瞬間、明らかに梨都の表情が変わった。いつだってすぐ表情に出るから嘘がつけなくて、少し恥ずかしそうに笑う表情が好きだった。

「えっと」

それなのに、いつから笑わなくなったんだろう。そんなこともわかんなくなるなんて、僕はバカだ。

「なぁに月島くん、私にお話ぃー?」
「ああ、きみなの?」

呼んでもないのに来たと言うことは、この人が蝦名さんだろう。

「言っておくけど、知らない人に邪魔されるのって嫌いなんだ。だから今後僕に関わらないで」
「なっ」
「月島くん、なんで」
「ついでに言うと、僕が梨都のことを好きなだけだから。好き勝手言って梨都のことバカにしたり傷付けたりするなら、誰であっても容赦しないよ」

見たことはあるかもしれないけど、知らない人。知らない人にまで分け隔てなく平等に優しくできるほど、僕はできた人間じゃない。

「私のこと知らないって、ひどくない?!」
「だって知らないんだからそれ以外に言いようがなくない?」

なんなの?きみ芸能人なの?そうでもないのに僕が知ってるわけないじゃん。

「サイッテー!」

知らない人に罵られてもなんとも思わない。って言うかうるさい。

「場所変えるよ」
「え、でも授業」
「次数学でしょ。わかんないとこは後で教えるから」
「出席」
「1回くらいなんとでもなるよ。いいから早く行くよ」

このまま待ってても動きそうになかった梨都を引っ張って連れ出す。

「待って月島くんっ」
「その呼び方やめて。ムカつく」

そうじゃない。たぶんこれは、悲しいとか苦しいとか、そう言うもの。前みたいに呼んでほしいだけ。

「だって私、ちゃんと」
「認めないよ」

1回は「わかった」なんて言ったけど、納得なんてできない。理由もなにも聞いてないんだから、納得できる訳がないんだよ。

「あんな最後認めない」

カッコ悪いとは思うけど、そんな簡単に梨都のことを諦めるとかできないから。



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