私だって怒るんだからね


『ふ…ぅいっぶしっ…く…』

いきなりくしゃみで失礼。
スルースキルを披露することもできずあっさりぶちギレた私は、探索部隊を追い返して1人で何事もなく国境を越えました。予想通りものすごい吹雪の中、雪を掻き分けて進んでます。

あ、レムがいるから1人ではないか。名前は【ゴーレム】の【レム】をとっただけ。覚えやすいし分かりやすいでしょ?

『んあー』

それにしても寒い。さすが水の代わりにウォッカを飲むと言われているロシアなだけあるわ。教団のなんかよくわかんないけどすごいコートがただ重いだけのコートになってるよ。

『ねーレム、なんかお話してー』

とは言ったけど、ゴーレムが喋るわけもない。別に私の頭が寒さでとち狂ったわけではないので、レムが喋らなくてもなんの問題もない。
レムはあくまで無言を貫き通し、素知らぬ顔で私の横にいる。顔すらないから表情もわかんないけど、そんな雰囲気ってことだけわかってほしい。

そもそもさ、ただでさえハイテク極めてるのに更に喋ったりなんかしたら超小型ハイスペックロボだよね。もしそうなったら1日中ずっと監視されそうで怖い。

『あーあ、どうにかしてあったかくなんないかなぁ』

なんて、言ってみるだけ。突然あったかくなったりするはずがない。なったらそれは奇怪以外のなにものでもないね。それがイノセンスの影響かどうかを置いといても。

方向感覚を遥か昔に投げ捨てた私は、迷わず真っ直ぐ進んでいくレムを頼りに、雪を掻き分けながら進んでいく。辺りは見渡す限りの銀世界。言葉だけならめちゃくちゃ綺麗だけど、実際そこに放り込まれたら命の危険を感じました。帰りはレムのナビがなかったら死ぬな。
と言うか、この雪の中風に流されるでもなく飛んでるレムってヤバくない?ハイテクって言うか、もはや風圧をないものとしてるよね?もしかしたらレムは海底二万マイルとかでも平気なのかもしれない。

『あ、レムちょっ、ま…ひっひぇぶふっしっ!』

あー寒。

そう言えば、全力で罵らせて頂いたあの名前も知らないビールっ腹の探索部隊は、無事に教団まで帰れたんだろうか。あの後全然意識戻んないから蹴っ飛ばして起こしたんだけど、そもそもちゃんと列車には乗ってくれたのかな。
それに、いきなり追い返すなんてちょっと悪いことしちゃったかなって気もしてる。なんか妙にプライド高そうな人だったし、帰ってからなんか言われてるかもしれない。私も頭に血が上って感情的になっちゃったからね、ちょっと言い過ぎた感はあるんだよ。周りからそう思われたって仕方ない状況だし…
いやいや、それでもあれは許せるもんじゃないよね!酷いこと言いすぎでしょ!なんで神田とコムイさん引っ張り出したし!私の事が気に入らないなら、周りを巻き込まないで私の事だけ言っとけよって話ですよ!
でも弱っちい私が悪いんだしなぁ。でもだからって他の人を巻き込む意味!いや、そもそもいつまでたっても私が弱いことが原因か…

なんて答えの出ない問題をぐるぐる考えてた時。

『あれ?人?』

吹雪の向こう側に人影が見えた気がした。

人間?こんな吹雪の中?この近くどころか、ここに来るまでに集落や町らしきものは暫くなかったし、コムイさんも人はほとんどいないって言ってた。それなのになんでこんな吹雪の中…まさかアクマ?
アクマだったらどうしよう?私だけで対抗できる?いや、できるかどうかじゃなくて、やらなきゃいけないんだけど。わかってはいるけど心の準備が圧倒的に間に合ってません!

「お姉さん、こんな所で何してるのぉ?」
『え?』

遠く見える影に人かアクマの可能性について考えてた私は、吹雪の中にも関わらず結構深く考え込んでいたらしい。遠いと思ってた影がいつの間にか目の前にいて本気でビックリした。

と言うか人だった!こんなところにも人はいるんだね!こんな事態これっぽっちも考えてなかった!どう切り返せばいいんだ!?

「ねー、聞こえてるぅ?」
『え?あ、うん』

視界があんまり良くないけど、声的に女の子。正直に言うと、風の音がうるさすぎてうまく聞き取れてない。

「吹雪いてるから聞こえてないのかと思ったよぉ」
『ごめんね』

と言うより、この子よく私に気付いたな。きっと目がいいんだね。
私だってこの視界の悪さで気付いたのは奇跡だと思った。と言うか、気付きたくなかったのが本音。だってアクマだったらやだもん。

『あなたもどうしてここに?』
「ボク?ボクは今から帰るところなんだぁ」

今から?なんの為にこんなところまで来たんだろう。聞いたところによると、ここ暫くずっと吹雪いてるからほとんど人は出歩いてないって列車の中で聞いたんだけど。

『そっかぁ』

でもまぁ、現地の人なら多少出歩くか。地の利があるわけだしね。

「お姉さんはぁ?」
『ちょっと…探し物かな』

天気がよければ観光もしたいところだけど、少なくとも今は雪しか見えないね。

「ふぅん。探し物、見つかるといいねぇ」
『うん』
「じゃあねぇ〜」



…なんだったんだろう、あの子?のせられるままにお話ししちゃったよ。視界が霞んでてよくわかんないけど、どっかで見たことあると思うんだよね。
いつ見たんだろう?教団から出たのはリナリーと買い物したあの日だけだから、知り合いではない。となると、私が元々知ってる人、すなわちこの世界での主要人物の可能性が高い。
私が見たことあるってことは、これから多少なりとも関わってくるんだと思うけど…

『う〜ん』

わからん。
こんなことならちゃんと読んどくべきだった!本誌はあんまり読まなかったからなぁ…まぁずいぶん前の事になるし、もしちゃんと読んでても忘れてるかな?アニメもほとんど忘れてるからね!

『いだあ!ちょっとなにすんのレム!』

びっくりした!いきなり突撃してこないでよ!今ので絶対脳細胞死んだって!

『なに?もう着くの?』

私の言葉は総無視してレムはさっさと進んでしまった。

簡単なのでいいから、会話機能欲しいな。こうなにかあるたびにどつかれてたら悪い頭がもっと悪くなるよ。

『待ってよっ私飛べないんだから!ちょっと、聞いてんの?』

なんとかして意思疏通できるように、なんかそう言う機能付けられないかコムイさんに相談しよう。そうしよう。私の頭と未来のために。

今は目の前の任務と、まったく思い出せないあの子のことも思い出さないと。