『あ、ねぇねぇ。この後なんか予定ある?』
モンブランの栗がスプーンから落ちた時、アリスから予定を聞かれて少し戸惑ってしまった。
「いえ、特にないけど」
気にしてないみたいでよかったけど、どうしてスプーンでモンブランを食べてるのかしら?
『それなら一緒にお茶しない?ジェリーさんにお願いしてね、スコーン作ろうと思ってるの』
「そうなの?」
お菓子作りなんて初めて誘われた。
ここではそんなことを考える暇もなかったし、衛生班のみんなが食事を用意してくれるから自分で作るって発想にならなかったのよ。
『よかったらリナリーも一緒にどう?』
【アリス】も料理なんてしたことなかったでしょうね。
「アリスが誘ってくれるならぜひ一緒に作りたいわ」
アリスは料理をしたことがあるのかしら?それとも料理をしないといけない環境だった?
聞きたいことはたくさんあるのに、アリスが元々いたところに関してだけは踏み込みきれない。もっとアリスの事を知りたいけど、不用意に踏み込んで傷付けたくはないもの。
『リナリーなら大歓迎っ』
アリスはそう言うと、モンブランを食べるペースをあげた。
「だからってそんなに急いで食べなくてもいいのよ?」
急がなくてもジェリーは逃げたりしないのに。
そう思ってもアリスの食べる早さは少しも緩まない。元々大きくないモンブランはすぐにアリスのお腹の中へとなくなっていった。
『ごちそーさまでした!リナリー行こっ』
モンブランのお皿を持って跳ねるように厨房へ向かう。後ろから着いていくと、何度やっても左によってしまうらしいポニーテールが、アリスの気持ちを表すかのように楽しそうに揺れるのが目に入る。
「はいはい」
全身で楽しいって表現するところが小さい子みたいでかわいい。もちろん悪い意味じゃないわよ?
『私スコーンって食べたことないんだ』
「そうなの?」
食べたことのないスコーンを作るのがそんなに楽しみなのかしら?もしかしたら、本来のアリスは料理をするのが好きだったのかもしれない。
『食べるならね、紅茶と一緒がいいって誰かに聞いたんだ。で、ジェリーさんに作ってみたいって言ったら、そんなに大変じゃないからいいよーって言ってくれたんだぁ』
よく考えたらお菓子の完成品を見たことはあるけど、作ってるところって見たことがないのよね。なんとなく材料とか行程はわかるけど、どうやって作ってるのかしら。
アリスがあんまり楽しそうするものだから、なんだか私まで楽しみになってきちゃった。
『ジェリーさーん!リナリーも仲間入りっ』
食堂は混んでるけど、注文は込み合ってないみたいで厨房は落ち着いていた。
「あら、リナリーも作るの?」
ジェリーは器材や材料を用意して待っててくれたみたい。
「突然ごめんなさい。大丈夫だった?」
「ええ。それじゃあまずは、2人とも手を洗ってエプロンをしてちょうだい!」
『はい!』
言われた通り水道で手を洗うアリスが無邪気でかわいい。そんな必死に洗わなくてもいいのに。
「粉はアリスがモンブラン食べてる間に振るっておいたわよ」
『ありがとうございますっ』
「まずはなにをすればいい?」
台の上にはバターや卵と言った材料と、いくつかの器材が並んでる。
「リナリーはバターを湯煎で溶かして、アリスは卵と牛乳をあわせてちょうだい」
『はい!』
「あんまり混ぜ過ぎてもダメだからねっ」
『…はーい』
中華鍋やフライパンで料理を作る音がする中、私達の器材が立てる軽い音が厨房の片隅で響く。
私はジェリーにやり方を教わってバターを溶かすだけだから大丈夫なんだけど、卵と牛乳を混ぜてるアリスのボールが、なんだか軽い事件になってる。私より中身が多いし、上手く混ざらなくて少し大変そう。
ジェリーは少し口を挟むだけで、手伝ったりはしないみたい。でも、動く度に落ちてくるアリスの袖はその都度捲ってる。
「ジェリー、これでどう?」
「いいわね。次はアリスのと混ぜて」
『はいっ』
少しずつ混ぜていくと、バターは固まらずに牛乳と卵を混ぜた中に溶け込んでいった。
「OK、次は粉を混ぜて」
「はい」
『おぉう…わふっ』
「んっ!」
ゆっくり粉を入れてたはずなのに、いきなり粉の山が落ちてきて少し噎せそうになった。
「もうっなにしてんのよ」
材料は特に問題なさそうだから、そのまま進める。
「ほら混ぜて混ぜて」
『まっぜまっぜ』
粉を混ぜるのはアリスに任せて、使わなくなったボールやビーターを流しに持っていく。後でやるから置いといていいと言われたけど、余計な仕事を増やしているからとそのまま洗わせてもらった。
残念なことに戻す場所がわからないから、それだけお願いしてアリスのところに戻ると、なんだかジェリーが複雑そうな顔をしてた。
「どうしたの?」
「粉を混ぜてるだけなのに、どうして土弄りに見えるのかしらと思って…?」
そう言われて見れば、確かに小さい子が砂場や粘土で遊んでるように見えてくる。
「私も思ったわ」
「そう…アリスがちっちゃいからそう見えるのかしら」
それだけじゃないと思うけど、私には他の要因を上手く言葉で表現できなくて曖昧に首をかしげることしかできなかった。
『できた!』
「あとは焼くだけだから、ここから先は任せてちょうだい」
『焼きたい!』
「ダメよ。火傷なんてさせたらアタシ達が怒られちゃうもの」
『はぁい』
喜んだり拗ねたり、素直に感情を表に出すのを戸惑わないなんて、本当に小さい子みたい。それなのに私よりもお姉さんなんだから不思議だわ。
『リナリー、紅茶淹れて待ってよう』
「そうね」
『先に行ってて』
アリスに言われて、手を洗って厨房から出ると食堂なかなり空いていた。さすがにご飯時ではないものね。
適当な席に座ってると、ポットとカップを持ったアリスがやってきた。
『ほいリナリー』
「ありがとう」
ダージリンのあったかくて優しい味にどこかほっとして、少し重くなった体が軽くなる感じがする。
『お菓子作るのって体力いるんだねぇ』
「私もこんなに疲れるなんて知らなかったわ」
今日スコーンを作ってよかった。いつも厨房のみんながどれだけ頑張ってるのか、ほんの少しだけどわかったもの。
体験しないとわからないことって、他にもまだたくさんあるわよね。
「アリスもどんどん上達するわね」
『え?そんなことないよっまだまだ同調値も低いままだし…』
「じゃなくて、紅茶」
『あ、紅茶…』
はやとちりなんだから。
でもアリスが強くなってきてるのは間違いない。子供の成長を喜ぶお母さんってこんな気持ちかしら?
『いつも淹れてるからかな』
「毎日飲んでるの?」
『うん。だいたい毎日かな。難しい任務なんてまだあんまりないし』
「そうだったの…それなら私も呼んでくれたらよかったのに」
『だってリナリーも忙しいでしょ?』
「アリスの為ならなんでもないわ」
任務があったら確かに無理だけど、兄さんのコーヒーなんて1日くらいなくても平気だもの。
『なんか、嬉しいなぁ』
「なにが?」
『毎日忙しいのに、私なんかの為に時間を作ってくれるのって、嬉しいね』
ああもう、アリスったら本当にかわいいんだから。
「アリスは違うの?」
『え?』
「アリスは私の為に時間作ってくれないの?」
別に無理して時間を作ってる訳じゃない。私がアリスと一緒にいたいから時間を作るの。
『そんなわけないじゃんっ』
「ほら、一緒よ」
無理はしてほしくないけど、私だってアリスが私の為に時間を作ってくれたら嬉しいわよ。
『そっか』
「ね、普通なのよ」
『うん』
お互いを大切に思うからほんの少しの時間でもいいから作ろうと思えるのよ、きっと。
「出来たわよーん」
ジェリーが持ってきてくれたスコーンは、私達が作ったものにアレンジが加わってた。
プレーンなものもあるけど、大きなチョコチップが入ってたり、ベリーが入ってるのもある。
『わぁ…チョコチップだぁ!』
甘いものが好きなアリスはすぐに目を輝かせた。
「アリスはこっちの方が好きでしょ?」
『ジェリーさん大好きっ』
「あらあら」
いつだって素直で感情のままに表現するんだから、これで私より年上だなんてやっぱり信じられない。みんなもきっと疑っちゃうわね。
『あ、キッチンの人も呼ぼう!休憩しなきゃ労基法にひっかかるよ!』
「そう?じゃあ今呼んで来るわね」
たまによく分からない言葉を言ったりするけど、前よりずっと素直になったアリスが底抜けに優しいってことはよくわかる。
『おいしそうだねー』
「絶対おいしいわよ」
だってアリスが一生懸命作ったんだもの、おいしくないわけがないわ。
(アリスは一部の団員のアイドル!)
(ただし子供扱い)
モンブランの栗がスプーンから落ちた時、アリスから予定を聞かれて少し戸惑ってしまった。
「いえ、特にないけど」
気にしてないみたいでよかったけど、どうしてスプーンでモンブランを食べてるのかしら?
『それなら一緒にお茶しない?ジェリーさんにお願いしてね、スコーン作ろうと思ってるの』
「そうなの?」
お菓子作りなんて初めて誘われた。
ここではそんなことを考える暇もなかったし、衛生班のみんなが食事を用意してくれるから自分で作るって発想にならなかったのよ。
『よかったらリナリーも一緒にどう?』
【アリス】も料理なんてしたことなかったでしょうね。
「アリスが誘ってくれるならぜひ一緒に作りたいわ」
アリスは料理をしたことがあるのかしら?それとも料理をしないといけない環境だった?
聞きたいことはたくさんあるのに、アリスが元々いたところに関してだけは踏み込みきれない。もっとアリスの事を知りたいけど、不用意に踏み込んで傷付けたくはないもの。
『リナリーなら大歓迎っ』
アリスはそう言うと、モンブランを食べるペースをあげた。
「だからってそんなに急いで食べなくてもいいのよ?」
急がなくてもジェリーは逃げたりしないのに。
そう思ってもアリスの食べる早さは少しも緩まない。元々大きくないモンブランはすぐにアリスのお腹の中へとなくなっていった。
『ごちそーさまでした!リナリー行こっ』
モンブランのお皿を持って跳ねるように厨房へ向かう。後ろから着いていくと、何度やっても左によってしまうらしいポニーテールが、アリスの気持ちを表すかのように楽しそうに揺れるのが目に入る。
「はいはい」
全身で楽しいって表現するところが小さい子みたいでかわいい。もちろん悪い意味じゃないわよ?
『私スコーンって食べたことないんだ』
「そうなの?」
食べたことのないスコーンを作るのがそんなに楽しみなのかしら?もしかしたら、本来のアリスは料理をするのが好きだったのかもしれない。
『食べるならね、紅茶と一緒がいいって誰かに聞いたんだ。で、ジェリーさんに作ってみたいって言ったら、そんなに大変じゃないからいいよーって言ってくれたんだぁ』
よく考えたらお菓子の完成品を見たことはあるけど、作ってるところって見たことがないのよね。なんとなく材料とか行程はわかるけど、どうやって作ってるのかしら。
アリスがあんまり楽しそうするものだから、なんだか私まで楽しみになってきちゃった。
『ジェリーさーん!リナリーも仲間入りっ』
食堂は混んでるけど、注文は込み合ってないみたいで厨房は落ち着いていた。
「あら、リナリーも作るの?」
ジェリーは器材や材料を用意して待っててくれたみたい。
「突然ごめんなさい。大丈夫だった?」
「ええ。それじゃあまずは、2人とも手を洗ってエプロンをしてちょうだい!」
『はい!』
言われた通り水道で手を洗うアリスが無邪気でかわいい。そんな必死に洗わなくてもいいのに。
「粉はアリスがモンブラン食べてる間に振るっておいたわよ」
『ありがとうございますっ』
「まずはなにをすればいい?」
台の上にはバターや卵と言った材料と、いくつかの器材が並んでる。
「リナリーはバターを湯煎で溶かして、アリスは卵と牛乳をあわせてちょうだい」
『はい!』
「あんまり混ぜ過ぎてもダメだからねっ」
『…はーい』
中華鍋やフライパンで料理を作る音がする中、私達の器材が立てる軽い音が厨房の片隅で響く。
私はジェリーにやり方を教わってバターを溶かすだけだから大丈夫なんだけど、卵と牛乳を混ぜてるアリスのボールが、なんだか軽い事件になってる。私より中身が多いし、上手く混ざらなくて少し大変そう。
ジェリーは少し口を挟むだけで、手伝ったりはしないみたい。でも、動く度に落ちてくるアリスの袖はその都度捲ってる。
「ジェリー、これでどう?」
「いいわね。次はアリスのと混ぜて」
『はいっ』
少しずつ混ぜていくと、バターは固まらずに牛乳と卵を混ぜた中に溶け込んでいった。
「OK、次は粉を混ぜて」
「はい」
『おぉう…わふっ』
「んっ!」
ゆっくり粉を入れてたはずなのに、いきなり粉の山が落ちてきて少し噎せそうになった。
「もうっなにしてんのよ」
材料は特に問題なさそうだから、そのまま進める。
「ほら混ぜて混ぜて」
『まっぜまっぜ』
粉を混ぜるのはアリスに任せて、使わなくなったボールやビーターを流しに持っていく。後でやるから置いといていいと言われたけど、余計な仕事を増やしているからとそのまま洗わせてもらった。
残念なことに戻す場所がわからないから、それだけお願いしてアリスのところに戻ると、なんだかジェリーが複雑そうな顔をしてた。
「どうしたの?」
「粉を混ぜてるだけなのに、どうして土弄りに見えるのかしらと思って…?」
そう言われて見れば、確かに小さい子が砂場や粘土で遊んでるように見えてくる。
「私も思ったわ」
「そう…アリスがちっちゃいからそう見えるのかしら」
それだけじゃないと思うけど、私には他の要因を上手く言葉で表現できなくて曖昧に首をかしげることしかできなかった。
『できた!』
「あとは焼くだけだから、ここから先は任せてちょうだい」
『焼きたい!』
「ダメよ。火傷なんてさせたらアタシ達が怒られちゃうもの」
『はぁい』
喜んだり拗ねたり、素直に感情を表に出すのを戸惑わないなんて、本当に小さい子みたい。それなのに私よりもお姉さんなんだから不思議だわ。
『リナリー、紅茶淹れて待ってよう』
「そうね」
『先に行ってて』
アリスに言われて、手を洗って厨房から出ると食堂なかなり空いていた。さすがにご飯時ではないものね。
適当な席に座ってると、ポットとカップを持ったアリスがやってきた。
『ほいリナリー』
「ありがとう」
ダージリンのあったかくて優しい味にどこかほっとして、少し重くなった体が軽くなる感じがする。
『お菓子作るのって体力いるんだねぇ』
「私もこんなに疲れるなんて知らなかったわ」
今日スコーンを作ってよかった。いつも厨房のみんながどれだけ頑張ってるのか、ほんの少しだけどわかったもの。
体験しないとわからないことって、他にもまだたくさんあるわよね。
「アリスもどんどん上達するわね」
『え?そんなことないよっまだまだ同調値も低いままだし…』
「じゃなくて、紅茶」
『あ、紅茶…』
はやとちりなんだから。
でもアリスが強くなってきてるのは間違いない。子供の成長を喜ぶお母さんってこんな気持ちかしら?
『いつも淹れてるからかな』
「毎日飲んでるの?」
『うん。だいたい毎日かな。難しい任務なんてまだあんまりないし』
「そうだったの…それなら私も呼んでくれたらよかったのに」
『だってリナリーも忙しいでしょ?』
「アリスの為ならなんでもないわ」
任務があったら確かに無理だけど、兄さんのコーヒーなんて1日くらいなくても平気だもの。
『なんか、嬉しいなぁ』
「なにが?」
『毎日忙しいのに、私なんかの為に時間を作ってくれるのって、嬉しいね』
ああもう、アリスったら本当にかわいいんだから。
「アリスは違うの?」
『え?』
「アリスは私の為に時間作ってくれないの?」
別に無理して時間を作ってる訳じゃない。私がアリスと一緒にいたいから時間を作るの。
『そんなわけないじゃんっ』
「ほら、一緒よ」
無理はしてほしくないけど、私だってアリスが私の為に時間を作ってくれたら嬉しいわよ。
『そっか』
「ね、普通なのよ」
『うん』
お互いを大切に思うからほんの少しの時間でもいいから作ろうと思えるのよ、きっと。
「出来たわよーん」
ジェリーが持ってきてくれたスコーンは、私達が作ったものにアレンジが加わってた。
プレーンなものもあるけど、大きなチョコチップが入ってたり、ベリーが入ってるのもある。
『わぁ…チョコチップだぁ!』
甘いものが好きなアリスはすぐに目を輝かせた。
「アリスはこっちの方が好きでしょ?」
『ジェリーさん大好きっ』
「あらあら」
いつだって素直で感情のままに表現するんだから、これで私より年上だなんてやっぱり信じられない。みんなもきっと疑っちゃうわね。
『あ、キッチンの人も呼ぼう!休憩しなきゃ労基法にひっかかるよ!』
「そう?じゃあ今呼んで来るわね」
たまによく分からない言葉を言ったりするけど、前よりずっと素直になったアリスが底抜けに優しいってことはよくわかる。
『おいしそうだねー』
「絶対おいしいわよ」
だってアリスが一生懸命作ったんだもの、おいしくないわけがないわ。
(アリスは一部の団員のアイドル!)
(ただし子供扱い)