私が教団で目を覚ましてから、もうすぐ1年が経とうとしてる。
この1年、リナリーとラビ(とたまにブックマンも一緒)が特訓を手伝ってくれたおかげか、任務もなんとかなる程度には強くなったつもり。コムイさんが気を使ってくれてたのか、そもそも簡単な任務ばっかりだったのもある。
イノセンスが発動できてからリナリーとはできるだけ練習したくなかったんだけど、予想以上にスパルタなリナリーはそれを少しも許してくれなかった。おかげでコントロールは完璧になりました。もう血染ノ乙女に振り回されたりしないよ。
それに対してラビは甘すぎるくらい。手加減されすぎて、うっかり斬りそうになるからラビともあんまりやりたくない。ブックマンも見た目はパンダだしなんかの達人みたいだしスパルタっぽいと思ってたけど、なんだかんだ優しかった。針怖いけど。
でもね、みんな私に優しくしすぎだから!そんなんじゃ全然特訓にならないよ!優しくしてくれてありがとうございます!
あと、ラビとブックマンは持ち前の知識で私に合った戦闘スタイルを考えてくれたり、資料を持ってきてくれたりした。もちろん私だって書庫室で探してたんだけど、何故かまったく見つからなかったんだよ。ランスとハンマーの資料は見つかったのに…
ラビの槌と私の血染ノ乙女は、形としてはなんとなく似てはいるけど間違えようもないくらい刃物だし、ラビみたいに技的なものもない。やっぱり最終的には私が考えて使いこなすしかないと結論付けておわった。
そうそう、あの後2回だけ神田に相手してもらえたんだけど、全部ボロ負けの上鼻で笑われた。あれ味方に向ける目じゃないよ。見下すどころが蔑んでたもん。
めっちゃムカつくし悔しいけど、結局1年でその程度しか成長できてないってこと。いつか絶対に吠え面かかせてやるんだから。
「今日はこの辺にしとくか」
『はい。ありがとうございました』
今週はリナリーが任務でスリランカに行ってるから、その間の相手はラビでした。ブックマンは忙しいらしく、最初に挨拶したきり顔も合わせてない。ラビも羽を伸ばしたかったのかいつも以上に優しい感じで終わりました。あれ?作文?
しばらく経ってから気付いたんだけどさ、ラビの耳でちらちら光るピアスがめちゃんこ気になる。あれ私が選んだんだやつなんだけどね
「アリス、終わった?」
発動を解いてラビと恒例の反省会をしようとしたら、リナリーが修練場に顔を出した。
「お疲れさん」
『お帰りリナリー。いつ帰ったの?』
「1時間くらい前かしら?まだ特訓してるだろうと思ったから待ってたの」
『声かけてくれてよかったのに!』
「2人とも集中してたから。食事まだよね?一緒にどう?」
『うん、まだだけど…』
この土まみれの状態で食堂に行くのはちょっと抵抗がある。
任務終わってからすぐ行く人もいるだろうから気にしないとは思うんだけどさ、個人的に気になるんですよ。でもリナリーは既に待ってたわけだから、個人的なあれこれで更に待たせるのも申し訳ない…
「まだなにかするなら待ってるわよ」
『うー…じゃあちょっとだけ時間ちょうだい?シャワー浴びたい』
「じゃあ談話室にいるわね」
『ごめんね』
「私が誘ったんだもの、気にしないで。よかったらラビも一緒にどう?」
「じゃあ一緒に行くさ」
『すぐに行くね!』
「急ぎすぎて転んだりしないでね!」
『はぁい!』
私は2人に背を向けて全力で走った。
リナリーと久しぶりの食事だ。ラビもリナリーも、エクソシストとしての仕事以外に私の特訓までしてるから、休みらしい休みなんて本当にないんだろうな。それなのにいつも付き合ってもらって申し訳ない。
これ以上迷惑かけないためにも早く談話室に行かなくちゃ。
特訓を始めてからより増した筋力のおかげで、前では考えられないほど早く部屋についた。息も切れてない。すごいね。
リナリーからもらった髪留めを机に置いて服を脱いで籠に投げ込むと、浴室に滑り込む。
シャワーの最初が冷たいのが1番つらい。初めての頃はなかなかあったかくならなくて壊れてるのかと思ったよ。
『やだっシャンプーなくなりそう!コムイさんに言わなきゃ』
シャンプーとか備品系は、コムイさんに言えば他の買い物と一緒に誰かが買ってきてくれるから、任務以外で教団から出ることはまったくない。さすがに私物は自分で買いに行くらしいけど、私はリナリーと行ったあの1回しかないから本当のところはどうのかわかんない。
リナリーも忙しいから高校生やってたときみたいに遊ぶわけにいかないからね。
『タオルタオルー』
お風呂から上がって簡単に髪を乾かして、リナリーからお土産にもらったワンピースに袖を通した。膝にかかるくらいの白い丸襟のワンピースは、なんとなく草原に佇むお嬢様を連想させてかわいい。発想力が乏しいな…
『よし。走れ走れっ』
黒いカーディガンを羽織ってリナリーとお揃いらしい黒い靴を引っかけて走り出した。
曖昧なのは、私になる前からあったので実際はどうなのかわからないから。リナリーはイノセンスの黒い靴を常用してるし、嘘ではないと思うからあえて確認なんてしないけど。ほら、あんまり聞くのも失礼だしっ
『お待たせっ』
やっとついた談話室の扉を勢いのまま開いた。リナリー達以外がいる可能性をうっかり忘れていたからできたことだ。
『…って神田?』
「アリス走ってきたんか?髪すごいぞ」
『え、やだっ』
「こっちきて。櫛あるから梳かしてあげる」
『ありがとー』
「走らなくてよかったのに‥また汗かいちゃうわよ?」
『また入るからいいの。じゃなくて、神田いつ戻ったの?』
うっかりいつも通りに返してたけど、しばらく教団を空けていた神田が帰ってきてた。
別にいいんだけどね?あまりにも自然すぎだけどね?まだ団服のままだけど、今戻ったのかな?
「さっき報告書出しに行った時、そこの馬鹿ウサギに捕まった」
『…お疲れ様です』
「どういう意味さ」
『そのままの意味ですよ』
「アリスが冷たい!せっかくみんな揃ったし、みんなで飯にしようと思ったんさ」
「せめて着替えさせろ」
「そのワンピースって…」
『うん。この間リナリーがくれたやつだよ』
「やっぱり!白にしてよかったわ」
「それ、リナリーが選んだ服なんか?」
「そう!かわいいでしょ」
「草原に佇むお嬢さんって感じさ!」
ラビと同じ発想力か…と言うことはみんな同じなのか?いやいやそんなはずは…
「飯行かねぇのかよ」
『行く!』
神田の呆れた声に食い気味で返事をしたけど許してほしい。
「反応早っ。マジで腹減ってたのな」
『お昼からずっと動いてたからね』
マジでお腹すいてるんだよ。
今日はハンバーグ食べるって決めてるんだー。
「じゃあ食堂が混む前にいきましょ」
「行くさー!」
「…うるせぇ」
談話室を出てからのラビとリナリーは、私の特訓の話でいっぱいいっぱいみたい。なんか恥ずかしいんだけど…
『神田、髪紐使ってるんだね』
ラビのピアスもそうだけど、使ってもらってるのを見ると嬉しくなる。神田の場合はあるから使ってるだけなんだろうけどね。
「おい」
『なに?』
「どうだ?イノセンス」
『まぁまぁ、かな』
「同調率は」
それを聞かれるとちょっとキツい。
黙ったところで神田からの無言の圧力がなくなるわけでもないし、どうせすぐにバレることだ。
『…やっと83です』
素直にありのままを言ったのに、それから神田は喋らなくなってしまった。
やっぱり1年かけて40しかあがらないなんてダメか。一応同調率90%目指してたんだけどなぁ。別に神田に目標値を言ったわけではないけど、神田の期待にも沿えなかったらしい。自己目標すら到達できないとかマジで悔しい。くっそ、
『ユウちゃんのばか!』
「は?どしたんさ」
「神田!この短時間でアリスになにしたのよ!」
「なんにもしてねぇよ」
『ごめんなさーい!八つ当たりでごめんなさーい!』
とりあえず神田に八つ当たりしたら、びっくりする反射速度でリナリーが怒った。
ごめんよリナリー、神田はなに一つ悪くないんだ。私が勝手に怒っただけなんだよ。神田もごめん。
「本当になにがあったの?」
「知らねぇよ。同調率聞いただけだ」
「なんか言ったんか?」
「言ってねぇ」
情けない。同調率も上がらず強くもなれず。いつまで私は教団最弱でいるつもりなんだ。甘やかされてぬくぬくしてるからいけないんだ。
「ほら、落ち着いて」
でも甘やかさないでなんて言えそうにない。みんなから切り捨てられたらそれこそ立ってもいられないだろう。
「本当ストレートに感情が出るようになったわね」
「これじゃリナリーの方がお姉さんみたいさ」
「チビだしな」
背は元から小さかったけど、これじゃあ本当に子供みたいだ。いい加減しゃんとしないといけないのに、いつまでこんなことしてるんだろう。
「腹いっぱいになれば落ち着くさ」
『それ本当に子供じゃん!』
早く強くならないと。
「でもお腹空いたでしょ?」
『うん』
「ならさっさとすますぞ。早く寝てぇ」
目指す食堂はもう近くだった。
この1年、リナリーとラビ(とたまにブックマンも一緒)が特訓を手伝ってくれたおかげか、任務もなんとかなる程度には強くなったつもり。コムイさんが気を使ってくれてたのか、そもそも簡単な任務ばっかりだったのもある。
イノセンスが発動できてからリナリーとはできるだけ練習したくなかったんだけど、予想以上にスパルタなリナリーはそれを少しも許してくれなかった。おかげでコントロールは完璧になりました。もう血染ノ乙女に振り回されたりしないよ。
それに対してラビは甘すぎるくらい。手加減されすぎて、うっかり斬りそうになるからラビともあんまりやりたくない。ブックマンも見た目はパンダだしなんかの達人みたいだしスパルタっぽいと思ってたけど、なんだかんだ優しかった。針怖いけど。
でもね、みんな私に優しくしすぎだから!そんなんじゃ全然特訓にならないよ!優しくしてくれてありがとうございます!
あと、ラビとブックマンは持ち前の知識で私に合った戦闘スタイルを考えてくれたり、資料を持ってきてくれたりした。もちろん私だって書庫室で探してたんだけど、何故かまったく見つからなかったんだよ。ランスとハンマーの資料は見つかったのに…
ラビの槌と私の血染ノ乙女は、形としてはなんとなく似てはいるけど間違えようもないくらい刃物だし、ラビみたいに技的なものもない。やっぱり最終的には私が考えて使いこなすしかないと結論付けておわった。
そうそう、あの後2回だけ神田に相手してもらえたんだけど、全部ボロ負けの上鼻で笑われた。あれ味方に向ける目じゃないよ。見下すどころが蔑んでたもん。
めっちゃムカつくし悔しいけど、結局1年でその程度しか成長できてないってこと。いつか絶対に吠え面かかせてやるんだから。
「今日はこの辺にしとくか」
『はい。ありがとうございました』
今週はリナリーが任務でスリランカに行ってるから、その間の相手はラビでした。ブックマンは忙しいらしく、最初に挨拶したきり顔も合わせてない。ラビも羽を伸ばしたかったのかいつも以上に優しい感じで終わりました。あれ?作文?
しばらく経ってから気付いたんだけどさ、ラビの耳でちらちら光るピアスがめちゃんこ気になる。あれ私が選んだんだやつなんだけどね
「アリス、終わった?」
発動を解いてラビと恒例の反省会をしようとしたら、リナリーが修練場に顔を出した。
「お疲れさん」
『お帰りリナリー。いつ帰ったの?』
「1時間くらい前かしら?まだ特訓してるだろうと思ったから待ってたの」
『声かけてくれてよかったのに!』
「2人とも集中してたから。食事まだよね?一緒にどう?」
『うん、まだだけど…』
この土まみれの状態で食堂に行くのはちょっと抵抗がある。
任務終わってからすぐ行く人もいるだろうから気にしないとは思うんだけどさ、個人的に気になるんですよ。でもリナリーは既に待ってたわけだから、個人的なあれこれで更に待たせるのも申し訳ない…
「まだなにかするなら待ってるわよ」
『うー…じゃあちょっとだけ時間ちょうだい?シャワー浴びたい』
「じゃあ談話室にいるわね」
『ごめんね』
「私が誘ったんだもの、気にしないで。よかったらラビも一緒にどう?」
「じゃあ一緒に行くさ」
『すぐに行くね!』
「急ぎすぎて転んだりしないでね!」
『はぁい!』
私は2人に背を向けて全力で走った。
リナリーと久しぶりの食事だ。ラビもリナリーも、エクソシストとしての仕事以外に私の特訓までしてるから、休みらしい休みなんて本当にないんだろうな。それなのにいつも付き合ってもらって申し訳ない。
これ以上迷惑かけないためにも早く談話室に行かなくちゃ。
特訓を始めてからより増した筋力のおかげで、前では考えられないほど早く部屋についた。息も切れてない。すごいね。
リナリーからもらった髪留めを机に置いて服を脱いで籠に投げ込むと、浴室に滑り込む。
シャワーの最初が冷たいのが1番つらい。初めての頃はなかなかあったかくならなくて壊れてるのかと思ったよ。
『やだっシャンプーなくなりそう!コムイさんに言わなきゃ』
シャンプーとか備品系は、コムイさんに言えば他の買い物と一緒に誰かが買ってきてくれるから、任務以外で教団から出ることはまったくない。さすがに私物は自分で買いに行くらしいけど、私はリナリーと行ったあの1回しかないから本当のところはどうのかわかんない。
リナリーも忙しいから高校生やってたときみたいに遊ぶわけにいかないからね。
『タオルタオルー』
お風呂から上がって簡単に髪を乾かして、リナリーからお土産にもらったワンピースに袖を通した。膝にかかるくらいの白い丸襟のワンピースは、なんとなく草原に佇むお嬢様を連想させてかわいい。発想力が乏しいな…
『よし。走れ走れっ』
黒いカーディガンを羽織ってリナリーとお揃いらしい黒い靴を引っかけて走り出した。
曖昧なのは、私になる前からあったので実際はどうなのかわからないから。リナリーはイノセンスの黒い靴を常用してるし、嘘ではないと思うからあえて確認なんてしないけど。ほら、あんまり聞くのも失礼だしっ
『お待たせっ』
やっとついた談話室の扉を勢いのまま開いた。リナリー達以外がいる可能性をうっかり忘れていたからできたことだ。
『…って神田?』
「アリス走ってきたんか?髪すごいぞ」
『え、やだっ』
「こっちきて。櫛あるから梳かしてあげる」
『ありがとー』
「走らなくてよかったのに‥また汗かいちゃうわよ?」
『また入るからいいの。じゃなくて、神田いつ戻ったの?』
うっかりいつも通りに返してたけど、しばらく教団を空けていた神田が帰ってきてた。
別にいいんだけどね?あまりにも自然すぎだけどね?まだ団服のままだけど、今戻ったのかな?
「さっき報告書出しに行った時、そこの馬鹿ウサギに捕まった」
『…お疲れ様です』
「どういう意味さ」
『そのままの意味ですよ』
「アリスが冷たい!せっかくみんな揃ったし、みんなで飯にしようと思ったんさ」
「せめて着替えさせろ」
「そのワンピースって…」
『うん。この間リナリーがくれたやつだよ』
「やっぱり!白にしてよかったわ」
「それ、リナリーが選んだ服なんか?」
「そう!かわいいでしょ」
「草原に佇むお嬢さんって感じさ!」
ラビと同じ発想力か…と言うことはみんな同じなのか?いやいやそんなはずは…
「飯行かねぇのかよ」
『行く!』
神田の呆れた声に食い気味で返事をしたけど許してほしい。
「反応早っ。マジで腹減ってたのな」
『お昼からずっと動いてたからね』
マジでお腹すいてるんだよ。
今日はハンバーグ食べるって決めてるんだー。
「じゃあ食堂が混む前にいきましょ」
「行くさー!」
「…うるせぇ」
談話室を出てからのラビとリナリーは、私の特訓の話でいっぱいいっぱいみたい。なんか恥ずかしいんだけど…
『神田、髪紐使ってるんだね』
ラビのピアスもそうだけど、使ってもらってるのを見ると嬉しくなる。神田の場合はあるから使ってるだけなんだろうけどね。
「おい」
『なに?』
「どうだ?イノセンス」
『まぁまぁ、かな』
「同調率は」
それを聞かれるとちょっとキツい。
黙ったところで神田からの無言の圧力がなくなるわけでもないし、どうせすぐにバレることだ。
『…やっと83です』
素直にありのままを言ったのに、それから神田は喋らなくなってしまった。
やっぱり1年かけて40しかあがらないなんてダメか。一応同調率90%目指してたんだけどなぁ。別に神田に目標値を言ったわけではないけど、神田の期待にも沿えなかったらしい。自己目標すら到達できないとかマジで悔しい。くっそ、
『ユウちゃんのばか!』
「は?どしたんさ」
「神田!この短時間でアリスになにしたのよ!」
「なんにもしてねぇよ」
『ごめんなさーい!八つ当たりでごめんなさーい!』
とりあえず神田に八つ当たりしたら、びっくりする反射速度でリナリーが怒った。
ごめんよリナリー、神田はなに一つ悪くないんだ。私が勝手に怒っただけなんだよ。神田もごめん。
「本当になにがあったの?」
「知らねぇよ。同調率聞いただけだ」
「なんか言ったんか?」
「言ってねぇ」
情けない。同調率も上がらず強くもなれず。いつまで私は教団最弱でいるつもりなんだ。甘やかされてぬくぬくしてるからいけないんだ。
「ほら、落ち着いて」
でも甘やかさないでなんて言えそうにない。みんなから切り捨てられたらそれこそ立ってもいられないだろう。
「本当ストレートに感情が出るようになったわね」
「これじゃリナリーの方がお姉さんみたいさ」
「チビだしな」
背は元から小さかったけど、これじゃあ本当に子供みたいだ。いい加減しゃんとしないといけないのに、いつまでこんなことしてるんだろう。
「腹いっぱいになれば落ち着くさ」
『それ本当に子供じゃん!』
早く強くならないと。
「でもお腹空いたでしょ?」
『うん』
「ならさっさとすますぞ。早く寝てぇ」
目指す食堂はもう近くだった。