短気だと知ってましたか


『あーくそっ!あいつなんでこっから出ていくんだよぉ!』

ここ超高いじゃん!なんでこんな高さから飛び降りたわけ!?足痛くなるでしょ!ビリビリするから!あいつバカかよ!なんで私がこんな苦労してんだ意味わからん!
それもこれもあのボケ(門番)のせいだ、戦闘オタク(神田)のせいだ!

『ちっくしょー!』
「…どうしたんだ?あれ」
「最近増えたよな…」

ここで神田に向かってウダウダ文句を言ったところで状況はなにも変わらない。考えろ、考えるんだアリコ。

迂回する?
でも私が現場につくまでに短気マン神田がアレンを斬らないとも限らない。と言うことは迂回した分アレンが危なくなる…それはダメだ!のんびり迂回なんてしていられない!少しでも早くアレンを神田から助けてあげないと。
つーことは私もここから行くしかないってこと?いけるのか?私人間だよ?ビックリ人間な神田とはたぶんだけど体の作りが違うと思うんだけど?こんなところから飛び降りたら私の足折れるんじゃないの?でも迂回してたらアレンが…

『あーもう!』

わかったよ!やりゃいいんだろ、やってやんよ!女は度胸!できるかどうかなんてやってみなきゃわかんねえ!
…これ、私死なないよね?大丈夫だよね?

『とうっ』

不安はあるけど、私は意を決して飛び降りた。
大丈夫。最近の私は普通から外れつつあるから大丈夫、死なない死なない。もしかしたら足痛くなるかもだけど大丈夫。

でも、もし死んだらどうしよう…その時考えればいいかなぁ?

『いづぁっ…!!』

色々考えたけど、考えていられるほど長い時間落ちてなかった。意外と一瞬。
しかも私はなかなか凄い音を立てて地面に落ちた。落ちたで合ってるんです、この場合。とても降り立ったとは言えない勢いと音と衝撃だったもん。できることならもっと漫画みたいにかっこよく着地したかった。

「お前…その腕はなんだ?」
「……対アクマ武器ですよ。僕はエクソシストです」
「何?門番!!」

でも生きてる。生きてるよ!私ちゃんと生きてる!!やったー!足超シビシビしてるけど生きてるー!

…最近こう、ムダに痛いこと多いな。これからもっと増えるんだろうけど。でも、できたら痛くない方がいいなぁ。

「いあっでもよ、中身がわかんねェんじゃしょうがねェじゃん!アクマだったらどーすんの!?」

でもさー。これは酷いと思うのよねぇー。

「僕は人間です!確かにチョット呪われてますけど立派な人間ですよ!!」
「ギャアアアアア触んなボケェ!!」

怒っていいよね?なんでみんな私に気付かないの?静かに降り立ったのとは訳が違うんだよ?あんまり言いたくないけど、ズドンって感じだったんだよ?ズドン!

私が言いたいこと、わかるかなぁ?

「ふん…まあいい。中身を見ればわかることだ。この六幻で斬り裂いてやる」

いい加減に…

『私を無視するなー!!』

なに?みんなのその「いたんだ」みたいな顔!刈るぞ!?門番は門から抉り出すぞ!!

『あんた達…本当に気付いてなかったわけ!?』
「だってこいつが」
『うるさーい!貴様らの言い訳は聞かん!』

私のこの寂しさとやるせなさは、ぼっち代表神田大先生にはわかんないだろうな!

『神田はさっさと医務室戻る!』
「アクマが優先だろ」
『黙れ怪我人!そこから1歩たりとも動くんじゃねえ!次!門番!』
「はいっ!」
『あんたは何かあるたびにいちいち喚きすぎ!確証もないくせに喚かれたらうるさいんだよ!』
「でもよぉ」
「待って待って!だから僕は敵じゃないですって!」
『パッツンてめぇは動くなっつっただろ!ちょっとおとなしくしてろ!』
「なっ…おまえもパッツンだろうが!」
『いいから動くなパッツン野郎!白髪の話も聞いてやれ!次!あんたはさっさと話す!』
「(白髪…)クロス師匠から紹介状が送られてるはずなんですけど」
『はい!確認科学班!』

どうせみんなゴーレム使って全部見てたんでしょ?なら今の状況はわかってるはずだもんね?

「元帥から…紹介状…?」
「そう、紹介状…コムイって人宛てに」
『コムイ!』

名前を聞いた瞬間、つい近くを飛んでたゴーレムを勢いで鷲掴みにしてしまった。いや、本当に無意識で手が動いたんだよ。本当だよ?

『確認…できますよね?』

まだ壊れてないからいいよね、ちょっと鷲掴みにしただけだもん。大丈夫大丈夫、全然余裕で許される。

「(ひぃ!映像にヒビが!)」
「(レンズがやられた!)」
「そこのキミ!」
「は、はい?」
「ボクの机調べて!」
「アレをっスか…」

なんだか妙な間が空いた。
私、コムイさんに確認できるかって聞いたのね?なんで他の人がコムイさんの机からコムイさん宛の紹介状を探さないといけないのかな?

「コムイ兄さん」
「コムイ室長」
『コムイさん?』

こっちはこっちで神田が攻撃しないように見張らないといけないし私は猛獣使いじゃない!

「…ボクも手伝うよ」

たぶん総出で紹介状を探してるんだろう。ゴーレムの向こうからは紙が音を立て続けてるのが聞こえてくる。

まさか机って神田と任務行くときに見た、あの書類の山に埋もれてた机のこと?あの中に紹介状があるの?床まで紙だらけだったあの中に?
…しばらくリナリー没収してみよう。そうすれば整頓くらいはするようになるかもしれない。あれは他人も自分も困るからね。今みたいに。

神田は紹介状が見つかるのを思ってたよりおとなしく待っている。それでも一切警戒を緩めるつもりはないらしい。
私はアレンのことを知ってるからなんの警戒もしてないけど、神田はアクマだと疑ってるんだから当然か。一応判別に関しては優秀らしい門番の判定もあるわけだし。でもアクマが紹介状だなんて嘘をつくとも思えない。もしも本当に数少ない仲間だったら、うっかり斬り殺したりしたらもったいないもんね。

私はこの重苦しい空気の中黙って待ちたくないので、とりあえずアレンに話しかけることにします!

『あ、ねぇねぇ』
「なんですか?」
『どうやってここまで来たの?』
「教団にですか?」
『じゃなくて、ここ』

私が聞きたいのは門番の前までどうやって辿り着いたのかってこと。私は地下水路を使う道しか知らないけど、他の道あるのかなって思ったんだ。

「そこの崖を登ってきました」
『マジか』

え、そうだっけ?ここってかなり高いところにあるよね?あれ?そうでもないっけ?

「敵と喋ってんじゃねえよ」
「だから僕は敵じゃないんですって!」
『こっちから情報言わなきゃいいんでしょ?なら話すくらいいいじゃん』
「そう言うことじゃねぇだろ」

神田は頭固いなぁ。だって紹介状見つかるまで暇じゃん。それにアレンは入団するんだし、ちょっとくらい話しても問題にならないよ。

『コムイさぁーん。まだー?あんまり遅いと眼鏡かち割りますよー?』
「今探してるから待ってアリスちゃん!」

しっかし時間かかるな。あの書類適当に分類して焼きいも作るのに使ったらダメかな。あ、スイートポテト食べたい。

『コムイさん、その書類いらないなら全部ください』
「いらなくないよ!アリスちゃん書類なんて貰って何に使うつもり?!」
『焼きいも作ります』
「書類はダメ!」

ならちゃんと片付けてくださーい。