短気だと知ってましたか


「あった!ありましたぁ!!クロス元帥からの手紙です!」

誰か見つけたのかわからないけど、どうやら紹介状はちゃんと存在したらしい。

「読んで!」
「コムイへ、近々アレンというガキをそっちに送るのでヨロシクなBYクロス‥です」

紹介状ってそんな感じでいいの?
と言うか、まったく考え付かなかったけど、その紹介状が偽造されたものかどうかって確認できるの?まぁ偽物ならそもそも教団に入らないか。

「はい!そーゆうことです。リーバー班長神田くん止めて!」
「たまには机整理してくださいよ!!」
「神田攻撃を止めろ!」

科学班のみんなが文句を言うのも当然だ。もっと他のところでも弊害が起きてるかもしれない。
やっぱりリナリー没収だな。

『ほら、リーバー班長の前にかろうじてコムイ室長の声がしたでしょう?だからやめろ』
「ちっ」
『ほら、あんたもさっさと開ける!』
「かっ開門んん〜〜〜〜〜?」
「入城を許可します。アレン・ウォーカーくん」
「わっ」

また切りかかったのかこのパッツンバ神田!

『やめろっつってんだろこのハゲ!』
「ハゲてねぇよチビ!」
「待って待って神田くん」

慌てたようにゴーレムがひとつ近付いてくる。
あれ、こいつなんかレンズ割れてない?後で科学班に教えてあげよう。

「…コムイか…どういうことだ」
「ごめんねー、早トチリ!その子クロス元帥の弟子だった。ほら謝ってリーバー班長」
「オレのせいみたいな言い方ー!!」
「ティムキャンピーが付いてるのが何よりの証拠だよ。彼はボクらの仲間だ」
『こら!喧嘩を売るんじゃない!』

睨み合う2人(主に神田)にお仕置きをしようとしたとき、ぱこんと軽い音が神田からした。

「もー。やめなさいって言ってるでしょ!早く入らないと門閉めちゃうわよ。入んなさい!」

神田の頭を叩いたのはリナリー。
念のために言うけど、神田の頭がからっぽなんじゃなくて、クリップボードが軽いからだよ。あとリナリーが軽く叩いたからだよ。

『リナリー!ただいま!』
「お帰りなさいアリス。任務どうだった?」
『アクマたくさんいて体調崩れて大変だった』
「もう良いの?」
『うん』

任務より今の方がよっぽど疲れたよ!

『ほら、神田もアレンもいつまでもみつめあってないで早くおいでよ』
「みつめあってねぇ!!」
『仲がよろしくていいじゃないですか』

ねー、なんてリナリーと2人で笑う。
あぁ、本当にリナリーかわいいなぁ。最早罪。神が創りし最高傑作だよ。なんでこんなかわいらしい姿に生まれたんですか?

「私は室長助手のリナリー。室長の所まで案内するわね」
「よろしく」
『私は…あー…アリス。まぁ仲良くやろうよ』

社交的なリナリーは初対面もなにも関係ないらしい。単純に仲間が増えることが嬉しいのかもしれない。握手したリナリーに習い、私も適当に挨拶を。苗字はどっちにするべきかなんとなく迷ったから言わなかったけど…ま、いずれね。

「あ、カンダ……って名前でしたよね…?よろしく」
「呪われてる奴と握手なんかするかよ」

神田もリナリーを見習えとは言わないけどさ、もうちょっと何とかした方がいいと思うよ?アレン可哀想だよ。

『そんな言い方するからあんたは勘違いされんでしょーが!』
「ふん」
『あ、ちゃんと医務室行きなさいよ!こら!聞いてるのか!?』

まったく!あれ絶対行かないよ!そんなに死にたいのかあのパッツンは?!

「ごめんね。任務から戻ったばかりで気が立ってるの」
『たぶん謝らないかもしれないけど、今からちゃんと殴っとくから安心してね』
「いえ、僕は大丈夫ですから」
『じゃあまたね』

医務室を出るとき連れ戻すと言った手前、追いかけないわけにも行かない。後のフォローはリナリーに任せて、私は神田の後を追いかけることにした。

ひとまず神田を追いかけようと思ったんだけど、どうしても気になる探索部隊がいたから道を少しだけ戻った。

『ちょっといいですか』
「俺たちですか?」
『言いたいことがあるんですよね』
「…なんスか?」
『ちらっと聞こえちゃったんだけど、初対面の人を見てガキとか白髪とか呪われてるとかなんなの?私もガキだけど?神田もラビもリナリーもガキだけど?』
「いや、あれは…」

しかも遠巻きにしながらコソコソコソコソ…鼠か!

『それともなに?ガキだからお前よりも弱いってのか?』
「…なにが言いたいんだよ」

私が弱いのは認める。だけどアレンの事を知らないで見た目で勝手な判断をするのはよくない。そんなことをしてたら、近い内に足元を掬われる事になる。

『自分と違うものを迫害するのは生物の本能だから仕方ないけど、アレはないでしょ?こう言っちゃなんだけど、エクソシストがいなくちゃアクマは壊せない。それはわかってるよね』
「ああ…」

だってアクマは人の皮を被ってる。見た目だけではアクマかどうかわからないんだから。

『私達は動物じゃない。あんた達も人間なら、知能と理性を駆使して生きなさい。それができないなら其処らの動物と変わりゃしない。もしもただの動物なら、アクマより神田より先に、私がその首刈り取ってやるから』
「…なんだよ…」

見た目に惑わされて勝手に死ぬなら好きにしたらいい。でもそれに巻き込まれるのだけはご免だ。
いつもよりも早足で、踵を強く鳴らしながら神田の部屋まで真っ直ぐ向かう。

『神田!ちょっと返事しなさいよ、いるんでしょ?!ユウ!出てこい!!』

呼びながら力任せに扉を叩いたら、やっぱり神田が出てきた。うるさいとでも言いたそうね。

「うるせぇ」

やっぱり言った。ええわかってたよそんなこと。

『アレンに謝んなさい』
「なんで俺が謝んだよ」
『暴言言ったじゃん、あんなの失礼でしょ』
「お前…あれが好きなのか」
『そうじゃなくて、人としてどうかって言ってるの!』

なんでそうなるのかな。どうしたらそうなるの?なに?ここの人はみんなそんな考えなの?どいつもこいつも頭の中身はお子様なの?「なんか良くわかんないからいじめちゃえー」な感覚なの?ちょっと助けたら「え?好きなの?」って発想に至るの?バカなの?ここは教育どうなってんだよ!

「俺には関係ねぇ」
『ある!それに神田、怪我はどうしたの。ほったらかしてんでしょ?』
「治った」
『嘘!』
「嘘じゃねぇよ、見るか?」

は?!

『み、見ないよ変態!』
「変態じゃねぇ」
『変態だよ!シャツに手をかけるな!』

意地の悪い笑い方をする神田に、私はもう1度「変態!」と言い捨てて逃げた。なんで逃げたかはよくわかんないけど、とにかく逃げたくなった。
いや神田が変態だからだよ!あんなに変態だったっけ?違うよね?いつから?誰にでも?
…なんか違う気がする。でもあんなこと言うのは変態だよ!紛れも無い変態だよ!

『うわーん!!』
「…まただな…」
「今日は一段と壊れてるな」

つか私森で脱がしたじゃん!列車乗る前に脱がせて応急処置したじゃん!うわっ今更!なんかかわいこぶったみたいになったんじゃない?!いやだあ気持ち悪い!!

『落ち着け私、大丈夫大丈夫』

なにが大丈夫なのかはわかんないけど、これ効くんだよね。だからたまーに言い聞かせるんだけどね。

…うん。大丈夫っぽい。後でもう1回ちゃんと怒りに行こう。仲悪いと不便が多いからね。任務の時とかね。
と言うか私、探索部隊にめっちゃ八つ当たりしたよね、うわーやな奴…後で出会えたら謝っとこう。八つ当たりだけ。だってあんなこと言われたらアレン傷付くじゃんね。それくらいちょっと考えたらわかるのに…私もやったけど!

あーもうやめやめ。いつまでもこんなこと考えてても時間がもったいない。どうせならもっと有意義なこと考えないと…

『うーん…』

有意義なことがなにかはわからないけど、過ぎてしまったことを考えても無駄。なら私がこれから出来ることを考えた方がいいに決まってる。

『お!』

そうだ、報告書ってどうすればいいんだろう?
今まで報告書って書いたことないから、どうすればいいかわかんないんだよね。神田に聞いてもいいけど、今は怪我してるから無理させたくないし…とりあえず科学班かな。