「…と、言うことで!今のアリスちゃんはここの事はなーんにも知らないんだって!」
コムイさんは一通り私に起きた事と私の事を話したけど、やっぱり漫画のあたりは割愛されてた。
きっとコムイさんにもよくわからなかったからだろうな。それとも、子供の彼らには刺激が強すぎると判断したのか…真相は本人のみぞ知る。
「じゃーみんな、質問はある?」
「はーい」
「はい、ラビ」
「そんな非科学的なこと、本当にありえるんか?」
ゆるりと挙手して投げ掛けたラビの質問は、ごもっともな質問だ。
それこそ映画や漫画じゃあるまいし、まさかこんなことが本当に起きるなんて夢にも思ってなかったもん。しかし私は体験しちゃってるんだよね。もしも私がラビの立ち位置にいたとしても、まったく同じ事を聞いてる自信はある。
「ボクもラビの気持ちはよーくわかる。でも実際にこうして目の前で起きちゃってるからね。ボク達では考えつかないようなことがまだまだあるんだよ、きっと。ね、アリスちゃん」
『はい。【ありえないなんてことはありえない】そんな言葉を言った人がいるくらいです。私がここに来た理由も、きっとなにかあるはずなんです』
皮肉なことに、それを言ったのもまた二次元の人なんだけどね。
でも、こうして起きてしまった事実を【ありえない】なんて言葉でなかったことにはできない。そんなことをしたら、私は今ここにいる事実を否定することになる。それは私自身の否定に他ならず、ここで生きていく為には私だけでも私を肯定してあげないといけない。そうでもしないと、とてもじゃないけど立つこともできなくなってしまう。
私は、強くはないから。
「アリス、私にできることがあったらなんでも言ってね」
「オレもできることがあれば手伝うさ」
『ありがとうございます』
突然こんなことを言われたら、混乱してそれどころじゃなくなりそうなのに、ここにいるみんなはどこまでも優しい。
もしかして世界が厳しいと人は優しくなるんじゃなかろうか。
「その話し方やめろ、うぜぇ」
なんて感動してたのに。
え、まさかそっちを突っ込むの?ありがちな「俺の存在が作り物だと?」とか「んなくだらない嘘に騙されねーよ」とかじゃないんだ。引っ掛かったのは私の話し方なんだ。
「ちょっと神田っ」
私の知ってる神田のイメージは怖かったりちょっとヤなやつだったりしてたから信じがたいけど、見た目に出ないだけで意外と混乱してるの?
まぁこんな頭のネジがいくつもブッ飛んだような、奇妙極まりない話をいきなり聞かされたら混乱もするよねぇ。
「確かに今まで一度だって敬語じゃなかったし、なーんか違和感さ」
なんだ、もっとラフでよかったのか。
【アリス】のキャラがわかんないから少しでもちゃんとしておこうと思ったんだけど、まさかそれが裏目に出るとは思わなかったよ。
「だけど言い方ってものがあるじゃない。それじゃあアリスが傷付くわっ」
お?なんだなんだ。もしや場の空気が悪くなってるのは私のせいか?もしかしなくても私が1番混乱してるのか?
『大丈夫だよリナリー、』
「だいたい神田はもう少し言い方を考えてって言ってるでしょ!」
私大丈夫って言ったのに、まさかの当事者おいてけぼりでちょっとよくわからない…いや!こんな状況だからこそ原因の私が元気を出さなきゃ!
『私なら大丈夫だから』
「でも!」
『それに、みんなに手伝って欲しいことがあるの』
「…なに?私達にできること?」
『うん』
ここは職場であって家ではない。私がここで生きていくためには、戦えるようにならないといけない。
それが【私】の仕事だったから。
『私を強くしてほしい、です』
「えっと…兄さん、どういう事?」
「みんなを呼んだのも、これをお願いしたかったからなんだけどね」
聞いたところによると、同調値が50を切ってしまうとイノセンスを発動することができなくなるらしい。まったくできないこともないらしいけど、体にかかる負荷が大きすぎるのと、イノセンスの暴走を引き起こしかねないから無理をすることはオススメできないとコムイさんに言われた。
「オイオイ…コムイ、それマジで言ってんのか?」
「さっきヘブラスカに見てもらったばかりだから間違いないよ」
武器もなければ戦う術も知らない今の私がこのまま戦場に出ても、ただなぶり殺しにされるだけ。狼の群れに放たれた兎ちゃんもいいところ。
要するに、私はただのお荷物だ。
「だから3人にはしばらくの間、任務と平行して下がってしまったアリスちゃんの同調値をあげてもらうよ。しばらくの間は長期入院してたからリハビリとして教団にいることはできるけど、任務をこなせないほどに同調値が下がってしまったなんて、さすがに言えないからね」
ご迷惑おかけします、ホント。
コムイさんは言い訳を考えて、みんなは働いて疲れて帰ってくるのに、まだ働かせるのかって話だよね。休むために帰ってきてるのに、私なんかの為に全然休めなくなっちゃうよね。
「俺は任務だけでいい」
憐れまれてるのかなんなのか。また湿っぽくなるのかと思いきや、神田がその空気をぶった切った。
「ド素人につける稽古なんてねえよ。コムイ、こいつらの分も俺に回せ」
「いいの?神田くん」
「そいつの相手よりよっぽど楽だ」
ここにいる誰とも1回も目を合わせてないんだけどね、それでも神田が気を使って言ってるような雰囲気ではない。
私の面倒を見ることがめんどくさいことは私でも察しがつくけど、任務よりめんどくさいこともないと思う…けど、もしかしてリナリーとラビに対しての神田なりの優しさ?
『神田がそれでいいなら、私は構わないよ。ただ、私がちゃんと戦えるかどうか見てほしいけど』
「せいぜいくたばんなよ」
『はい』
優しさの欠片も感じられない捨て台詞を残してとっとこ部屋を出ていく神田を見送ると、残されたメンバーはクスクス笑い出した。
「素直じゃないさ」
「あんなに心配してたのに」
なんだ。やっぱり優しいのか。言葉とか態度があんなんだとわかりづらいなぁ、もう。
「ねぇアリス。神田のこと、嫌いにならないでね?」
『うん』
まともに読んだことなかったから、ただ冷たいだけなのかと思ってた。
ちゃんと仲間のこと考えてたんだね。
「なんか、前とあんまり変わんねぇんだな」
『そうなの?』
「アリスも神田がなにやってもほったらかしてたからな」
『へぇ』
「でも話し方が女の子らしくなったわ」
「リナリーいつも言ってたもんな。アリス口悪かったから」
え。なにその黒歴史再現フラグ。
私もやんちゃしてた時期があったからキレたりしたら昔の名残が…あの時は若かったんだよっ!
『…気を付けます』
「あと明るくなったわね」
「オレなんてほとんど…つっても、【アリス】のことなんてアリスにゃわかんねえだろうしなっ」
「そうよ。そんなことよりっ食堂に行きましょう。アリスは久しぶりに起きたからお腹がすいてるんじゃない?」
そう言われるとお腹すいてきたかも…
人の頭ってやつは賢くて便利なようで、実はおバカで不便な作りなのかもしれない。御飯の話を聞いただけでお腹すくなんて【アリス】はどれくらい寝てたんだろう。
「アリス…?」
「どした。腹へったんか?」
『うん。お腹すいた』
「じゃあ早く行きましょ。私もお腹すいてきちゃった」
「オレはジジイん所行ってから行くさ」
「じゃあ先に行ってるわね」
「席のとっといてさー」
リナリーと一緒に部屋を出ると、行き先のわからない私の手を取って目的地まで迷わずに歩いていく。
幼い時から教団にいたらしいから、頭よりも体が覚えてるんだろう。本当に小さい時からここにいたはずだから…
「いくら点滴で栄養を取ってたとは言え、お腹は膨らまないものね」
リナリーは至極楽しそうに歩いているが、私には気になって仕方ないことがある。
『り、リナリー』
「なに?」
少しペースを落として私の顔を覗きこむリナリーと目が合って、反射的に反らしてしまった。その顔には、なんの曇りもないように見えたけど、当然それが本当か私にはわからない。
だから、先に言わないといけない。
『私、つまんないかもだよ?』
私はみんなの期待に応えられない。
【アリス】じゃないと後から嘆かれるくらいなら、初めから私に期待しないでほしい。側に寄らないでほしい。
『【アリス】じゃないし、ここのこともわかんないし戦えないからすぐ死んじゃうかもしれないし、それに』
なにも知らない時と違って、少しでも知ってからなくすのはとても痛いから。
「…アリスが私の知ってる【アリス】かどうかなんてこと、今は関係ないわ」
起きたとき以外で一度もまともに合わせることが出来なかった目を合わせると、真っ直ぐで強くて純粋で優しい目があった。
「私はアリスと仲良くなりたいだけなんだもの」
彼女は大人だ。のほほんとぬるま湯の中で過ごしてきた私なんかよりも、もっとたくさんいろんなことを経験してきた目。それこそ楽しいことも辛いことも、数えたくないほど経験してるだろう。
「これからお互いの事を知っていきましょう。それでいいじゃない」
『うん』
それをどんな気持ちで言ってるんだろう。本当は【アリス】がいなくなって辛いのかもしれないのに、それを微塵も感じさせないだけじゃなく、しっかり前を見てる。
「さ、早く行きましょう」
『…ありがとう』
きっと私は、この世界のなによりも弱い。
コムイさんは一通り私に起きた事と私の事を話したけど、やっぱり漫画のあたりは割愛されてた。
きっとコムイさんにもよくわからなかったからだろうな。それとも、子供の彼らには刺激が強すぎると判断したのか…真相は本人のみぞ知る。
「じゃーみんな、質問はある?」
「はーい」
「はい、ラビ」
「そんな非科学的なこと、本当にありえるんか?」
ゆるりと挙手して投げ掛けたラビの質問は、ごもっともな質問だ。
それこそ映画や漫画じゃあるまいし、まさかこんなことが本当に起きるなんて夢にも思ってなかったもん。しかし私は体験しちゃってるんだよね。もしも私がラビの立ち位置にいたとしても、まったく同じ事を聞いてる自信はある。
「ボクもラビの気持ちはよーくわかる。でも実際にこうして目の前で起きちゃってるからね。ボク達では考えつかないようなことがまだまだあるんだよ、きっと。ね、アリスちゃん」
『はい。【ありえないなんてことはありえない】そんな言葉を言った人がいるくらいです。私がここに来た理由も、きっとなにかあるはずなんです』
皮肉なことに、それを言ったのもまた二次元の人なんだけどね。
でも、こうして起きてしまった事実を【ありえない】なんて言葉でなかったことにはできない。そんなことをしたら、私は今ここにいる事実を否定することになる。それは私自身の否定に他ならず、ここで生きていく為には私だけでも私を肯定してあげないといけない。そうでもしないと、とてもじゃないけど立つこともできなくなってしまう。
私は、強くはないから。
「アリス、私にできることがあったらなんでも言ってね」
「オレもできることがあれば手伝うさ」
『ありがとうございます』
突然こんなことを言われたら、混乱してそれどころじゃなくなりそうなのに、ここにいるみんなはどこまでも優しい。
もしかして世界が厳しいと人は優しくなるんじゃなかろうか。
「その話し方やめろ、うぜぇ」
なんて感動してたのに。
え、まさかそっちを突っ込むの?ありがちな「俺の存在が作り物だと?」とか「んなくだらない嘘に騙されねーよ」とかじゃないんだ。引っ掛かったのは私の話し方なんだ。
「ちょっと神田っ」
私の知ってる神田のイメージは怖かったりちょっとヤなやつだったりしてたから信じがたいけど、見た目に出ないだけで意外と混乱してるの?
まぁこんな頭のネジがいくつもブッ飛んだような、奇妙極まりない話をいきなり聞かされたら混乱もするよねぇ。
「確かに今まで一度だって敬語じゃなかったし、なーんか違和感さ」
なんだ、もっとラフでよかったのか。
【アリス】のキャラがわかんないから少しでもちゃんとしておこうと思ったんだけど、まさかそれが裏目に出るとは思わなかったよ。
「だけど言い方ってものがあるじゃない。それじゃあアリスが傷付くわっ」
お?なんだなんだ。もしや場の空気が悪くなってるのは私のせいか?もしかしなくても私が1番混乱してるのか?
『大丈夫だよリナリー、』
「だいたい神田はもう少し言い方を考えてって言ってるでしょ!」
私大丈夫って言ったのに、まさかの当事者おいてけぼりでちょっとよくわからない…いや!こんな状況だからこそ原因の私が元気を出さなきゃ!
『私なら大丈夫だから』
「でも!」
『それに、みんなに手伝って欲しいことがあるの』
「…なに?私達にできること?」
『うん』
ここは職場であって家ではない。私がここで生きていくためには、戦えるようにならないといけない。
それが【私】の仕事だったから。
『私を強くしてほしい、です』
「えっと…兄さん、どういう事?」
「みんなを呼んだのも、これをお願いしたかったからなんだけどね」
聞いたところによると、同調値が50を切ってしまうとイノセンスを発動することができなくなるらしい。まったくできないこともないらしいけど、体にかかる負荷が大きすぎるのと、イノセンスの暴走を引き起こしかねないから無理をすることはオススメできないとコムイさんに言われた。
「オイオイ…コムイ、それマジで言ってんのか?」
「さっきヘブラスカに見てもらったばかりだから間違いないよ」
武器もなければ戦う術も知らない今の私がこのまま戦場に出ても、ただなぶり殺しにされるだけ。狼の群れに放たれた兎ちゃんもいいところ。
要するに、私はただのお荷物だ。
「だから3人にはしばらくの間、任務と平行して下がってしまったアリスちゃんの同調値をあげてもらうよ。しばらくの間は長期入院してたからリハビリとして教団にいることはできるけど、任務をこなせないほどに同調値が下がってしまったなんて、さすがに言えないからね」
ご迷惑おかけします、ホント。
コムイさんは言い訳を考えて、みんなは働いて疲れて帰ってくるのに、まだ働かせるのかって話だよね。休むために帰ってきてるのに、私なんかの為に全然休めなくなっちゃうよね。
「俺は任務だけでいい」
憐れまれてるのかなんなのか。また湿っぽくなるのかと思いきや、神田がその空気をぶった切った。
「ド素人につける稽古なんてねえよ。コムイ、こいつらの分も俺に回せ」
「いいの?神田くん」
「そいつの相手よりよっぽど楽だ」
ここにいる誰とも1回も目を合わせてないんだけどね、それでも神田が気を使って言ってるような雰囲気ではない。
私の面倒を見ることがめんどくさいことは私でも察しがつくけど、任務よりめんどくさいこともないと思う…けど、もしかしてリナリーとラビに対しての神田なりの優しさ?
『神田がそれでいいなら、私は構わないよ。ただ、私がちゃんと戦えるかどうか見てほしいけど』
「せいぜいくたばんなよ」
『はい』
優しさの欠片も感じられない捨て台詞を残してとっとこ部屋を出ていく神田を見送ると、残されたメンバーはクスクス笑い出した。
「素直じゃないさ」
「あんなに心配してたのに」
なんだ。やっぱり優しいのか。言葉とか態度があんなんだとわかりづらいなぁ、もう。
「ねぇアリス。神田のこと、嫌いにならないでね?」
『うん』
まともに読んだことなかったから、ただ冷たいだけなのかと思ってた。
ちゃんと仲間のこと考えてたんだね。
「なんか、前とあんまり変わんねぇんだな」
『そうなの?』
「アリスも神田がなにやってもほったらかしてたからな」
『へぇ』
「でも話し方が女の子らしくなったわ」
「リナリーいつも言ってたもんな。アリス口悪かったから」
え。なにその黒歴史再現フラグ。
私もやんちゃしてた時期があったからキレたりしたら昔の名残が…あの時は若かったんだよっ!
『…気を付けます』
「あと明るくなったわね」
「オレなんてほとんど…つっても、【アリス】のことなんてアリスにゃわかんねえだろうしなっ」
「そうよ。そんなことよりっ食堂に行きましょう。アリスは久しぶりに起きたからお腹がすいてるんじゃない?」
そう言われるとお腹すいてきたかも…
人の頭ってやつは賢くて便利なようで、実はおバカで不便な作りなのかもしれない。御飯の話を聞いただけでお腹すくなんて【アリス】はどれくらい寝てたんだろう。
「アリス…?」
「どした。腹へったんか?」
『うん。お腹すいた』
「じゃあ早く行きましょ。私もお腹すいてきちゃった」
「オレはジジイん所行ってから行くさ」
「じゃあ先に行ってるわね」
「席のとっといてさー」
リナリーと一緒に部屋を出ると、行き先のわからない私の手を取って目的地まで迷わずに歩いていく。
幼い時から教団にいたらしいから、頭よりも体が覚えてるんだろう。本当に小さい時からここにいたはずだから…
「いくら点滴で栄養を取ってたとは言え、お腹は膨らまないものね」
リナリーは至極楽しそうに歩いているが、私には気になって仕方ないことがある。
『り、リナリー』
「なに?」
少しペースを落として私の顔を覗きこむリナリーと目が合って、反射的に反らしてしまった。その顔には、なんの曇りもないように見えたけど、当然それが本当か私にはわからない。
だから、先に言わないといけない。
『私、つまんないかもだよ?』
私はみんなの期待に応えられない。
【アリス】じゃないと後から嘆かれるくらいなら、初めから私に期待しないでほしい。側に寄らないでほしい。
『【アリス】じゃないし、ここのこともわかんないし戦えないからすぐ死んじゃうかもしれないし、それに』
なにも知らない時と違って、少しでも知ってからなくすのはとても痛いから。
「…アリスが私の知ってる【アリス】かどうかなんてこと、今は関係ないわ」
起きたとき以外で一度もまともに合わせることが出来なかった目を合わせると、真っ直ぐで強くて純粋で優しい目があった。
「私はアリスと仲良くなりたいだけなんだもの」
彼女は大人だ。のほほんとぬるま湯の中で過ごしてきた私なんかよりも、もっとたくさんいろんなことを経験してきた目。それこそ楽しいことも辛いことも、数えたくないほど経験してるだろう。
「これからお互いの事を知っていきましょう。それでいいじゃない」
『うん』
それをどんな気持ちで言ってるんだろう。本当は【アリス】がいなくなって辛いのかもしれないのに、それを微塵も感じさせないだけじゃなく、しっかり前を見てる。
「さ、早く行きましょう」
『…ありがとう』
きっと私は、この世界のなによりも弱い。