▼ 君だけに教えてあげる。あのね…


これは夢だなと、すぐにわかる夢がある。

「おい!今のお前スッゲーブサイクだぞ!」

今の私はまさしくその状態。

「カナブサイクじゃないもん!」

だってこんな会話、絶対にあり得ないから。

「いーや!ブサイクだね!」
「泣いてないもん!」
「ないてなくてもブサイク!」
「ウソつき!」

反射的に返して後悔した。
きっと透くんが言ったことは嘘なんかじゃない。あの日から私の心が動くことはなくなって、周りから距離を置かれるようになったのはわかってる。それを望んだ部分もあるから、一向に構わないけど。

「今のはうそじゃねーし」
「うん、ごめん」

だけど、透くんを傷付けることなんて少しも望んでない。

「あやまんなって」

たとえそれが、私が勝手に作り上げた夢の中の透くんであっても。

「けっきょくうそついたことになるしな」
「そんなことない!カナ、絶対に透くんのお嫁さんになるから!」

傷付けたくないし、嘘つきになんかしたくない。

「や、それわすれて」
「なんで?」
「加奈枝がよめさんとかやだっていってんの!」

それなのに、透くんはどんどん嘘つきになる。そうさせてるのは紛れもない私。

「あんなのまにうけるとか、お前もバカだなー」

バカじゃない。

「いーか?いつまでもこんなとこ来んな」
「やだ」

私はバカなんじゃない。

「お前こんなとこばっかり来てるから、まわりからういてんだろ?」
「そんなことないよ。もしそうだとしても、それはカナがブサイクだからだよ」
「加奈枝はブサイクじゃねーよ。おれがほしょうする」

そんなの少しも嬉しくない。

「カナはブサイクでいい」
「よくねーよ!お前せっかくびじんなんだからわらえっての!」
「無理だよ」

透くんがいないのに笑えるわけがない。

「面白くもないのに笑えない」
「じゃあなけ」
「悲しくもないのに泣けないよ」
「うそつけ」

嘘じゃないよ。本当にわかんないの。
なにをしていてもなにも感じない。だから泣くことも笑うことも怒ることもない。

「大丈夫だよ、透くん」
「なにが」
「透くんは私の旦那さんになるんだから」
「やめろよ、カナがよめさんになるとかうれしくねー」

いつか透くんに会うために、私はここにいるんだよ。

「まっててね、透くん」

絶対に会いに行くから。


  
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