▼ 君の中心
選抜の試合があるからダメ元で和泉さんのこと誘ってみたけど、案の定あっさり断られた。
断られることはわかってたから全然凹んでないよ!今日こうして学校に来れば会えるからね!
「和泉さーん!おはよー!」
「お、及川。はよーっス」
「おはようございます。本日は如何なさいましたか?」
ん??
「及川もなんか忘れ物?」
「いくらなんでも及川は忘れ物をしすぎだと思います」
んんん??
「ちょっと待って!なんで松っつんがいるの!?」
しかも和泉さんと仲良さげなんだけど!
「なんでって、友達だから教科書借りに来た」
はあああああああ?!
なにそれ!聞いてないんだけど!
「あ、返却はお昼までにお願い致します」
「りょーかい」
教科書の貸し借りなんてしちゃって、仲良さげって言うかめっちゃ仲良しじゃん!及川さんよりも松っつんの方が和泉さんと仲良さそうに見える!
「ちょっと松っつん!いつから和泉さんと友達になったのさ!」
「友達になったのは最近だけど、和泉さんとは1年の時同じクラスだったし」
「はぁ?!松っつんも!?」
そんなの及川さんは1っ言も聞いてないんだけど!初耳ですけど?!
「ああ、岩泉?」
「違う!マッキー!マッキーも去年同じクラスだったって!」
「…あー、そう言えばそうだったな」
なにこれ!俺だけ和泉さんと同じクラスになったことないんだけど!
「みんなズルい!」
「クラスは仕方ないべ」
「でもズルい!」
これは先生に抗議しないといけない!今からでもクラス替えを所望する!!
「つーかしょっちゅう来てるってマジだったんだな」
「マジだよ、大マジ!」
和泉さんとやっと距離を詰め始めてるのに、なんで松っつんの方が先に距離詰めてんだよ!ムカつく!
「なんで和泉さんに借りたのさ」
「岩泉今いないから」
松っつんなら他のクラスでもよかったんじゃない?俺とかマッキーとか。わざわざ和泉さんに借りる必要はどこにもない。あるとしたら、
「松っつん…」
まさかとは思うけど、違うよね…?
「…なに?」
マッキーと岩ちゃんはない。見ればそれくらいわかる。だけど松っつんはわからない、読ませてくれない。
「なんでもない」
すっごいイライラする。ちょっと違うな、ソワソワして落ち着かない感じ。
たぶんだけど、松っつんも和泉さんの違和感に気付いてたんだ。だからこうして友達になったんだ。
「あの、」
「なに?和泉さんっ」
「及川は何かご用でしたか?」
そうだった。
「昨日の試合のこと!」
「勝ったんですか?」
「和泉さん、それは聞いちゃいけないよ」
「そうなんですか?」
和泉さんに悪気がないから余計に辛い。松っつんは結果知ってるもんね!だからって和泉さんと距離近いのは腹立つ!
「まぁ俺にはまだまだ可能性があるってわかったから気にしてないし!」
「ほー」
「あ、一静さん。そろそろ予鈴がなりますよ」
「嘘!?」
松っつんに驚きすぎて和泉さんとほとんどしゃべってないんだけど!
てゆーか今和泉さん松っつんのことなんて呼んだ?!俺まだ名字なんだけど!?
「ホントだ。じゃあ後で」
「え、ちょっと松っつん!俺まだ和泉さんと話したい!」
「怒られんぞ」
「怒られない!今日俺岩ちゃんになる!」
まだ空いてたはずの岩ちゃんの席に俺がいて、俺の席に岩ちゃんがいれば完璧だよね!
「ふざけんなクソ川!帰れ!」
「岩ちゃんいつ来たの!?おはよう!あと悪口略さないで!」
「うるせえさっさと帰れクソ及川!」
「酷い!!」
挨拶すらしてくれないってなんなの岩ちゃん!それ親友にすることじゃないよね!?まぁ戻るけど!
でもその前に、俺は確認しなきゃいけない。歩きながら松っつんに声をかけた。
「ちょっと松っつん、どー言うこと?」
「どーもこーも、オトモダチ」
「なんで名前で呼ばれてるの?」
「名前教えたら気に入ったみたいよ?」
「なにそれ!俺なんて拒否られたのに!!」
「嫌われてんじゃない?」
「そんなことない!はず!」
「はずって」
本気で嫌われたら口きいてくれなさそうだもん。だからたぶん違うと思う。
「まぁ及川が心配するようなことはなんにもないから」
「…ホントにぃ?」
「及川のこれから次第かな」
ホンット、松っつんはわかんない。
「俺思うんだけどさ」
「なに」
「及川の名前が違ったら呼ばれたんじゃね?」
「は?」
「たとえばはじめとか?」
「それ岩ちゃんじゃん」
「たとえばだって。話してて思ったんだけど、和泉さんってハードル高いようで低いのかなって」
それはわかる。なんて言うか、バランスを取るのがものすごく下手くそ。ゼロかヒャクのどっちかで、真ん中がどこにもないって感じ。それならゼロとイチでもいいか。
「そうじゃなきゃ簡単に俺のこと名前呼びなんてしないよね」
「でもムカつく」
「はいはい」
なんとなく引っ掛かることはあるけど、それがなにかはまだわからない。
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