今日は訪問者が来ました。
丸い眼鏡で訛りがあって…えと、忍足くんはどうやらあたしの友達だったらしいです。
「なんやちょーっと会わんうちにすっかりお嬢さんになってしもたなぁ」
「そんなに変わったかな?」
「そらすっかり!もっとこう、おてんばさんやったで?」
「いやいや、病院でおてんばはだめでしょ」
「せやな」
綺麗さっぱり忘れたあたしに過度な気を使わないで、たぶん、あたしがいろんな事を忘れる前と同じように接してくれてるんだと思う。
それがなんとなく嬉しかった。
忍足くんは学校のことを面白おかしく話してくれる。向日くんはありえないくらい跳ぶとか、芥川くんはありえないくらいいつも寝てるとか、授業がつまんないとか、あとは部活のこととか。
それはきっと、あたしの身近にあったはずの話なんだろうけど、まったく覚えがない。なんだか不思議な感じ。
「そういえば、来たのもそうだけど、今結構遅い時間だよ?帰り大丈夫?」
「ああ、ちょいと知り合いがこの病院におってな。まぁ帰りは気にせんでもええよ、俺も男やしな」
「それもそっか」
忍足くんはいい人。今日の手帳にちゃんと書いておかなくちゃ。明日には、また忘れてるはずだから…
「せや、昊罹ちゃん携帯はあらへんの?」
「けーたい?」
「ほら、だいたいみんなこんなんやと思うんけど」
そうして見せられた小さな機械には見覚えがあった。よくわからなくて棚の上段の引き出しにいつも放置してあったものが、忍足くんのそれによく似ていた。
「これ?」
「電源いれとらんの?」
「使い方わかんなくて」
「そか…これ、ちぃと借りてってもええ?」
「うん。あたしには全然わかんないし」
「そんじゃあ明後日に返しにくるわ。お大事に」
「ありがとう」
忍足くんが部屋から出ると、あたしは手帳に今日あった出来事と、明後日忍足くんが来ることを書き込んだ。
あと、携帯のことも。