「記憶障害なんやないかと俺は思っとるんやけど」
学校に着くなり忍足に呼び出されたと思ったら、いきなりそんなことを言われた。
「なにがだよ」
俺はここしばらくの口癖のようになってた言葉を投げた。
つーか主語がねえんだよ、主語が。それで誰もに伝わると思ってんなら勘違いも甚だしい。
「簡単に言うとな?入れ代わりできた入院患者の昊罹ちゃん、やっぱり俺らの知っとる昊罹ちゃんやったで」
「お前…会ったのか?」
そう言えば昊罹と同じ名前のやつが入院してきたとか言ってたな。それで、持病はあるのかって聞かれた。
やっぱり俺が知らないだけで病気だったのか…?
「ああ。ここで最初に戻るんやけどな」
「どういうことだ」
「俺見て【はじめまして】って言いよったんや。しかも敬語で」
「…マジかよ…」
ありきたりだが、鈍器で殴られたような気がした。
「俺らんことも全くわかっとらんかった」
「話したのか!?」
「確認も兼ねてな。もちろん結果は惨敗や。なんも覚えとらんみたいな言いようやった」
「…会えないのか?」
「今日また会いに行くんや」
「なんでだよ」
「昨日使い方わからん言うてたから携帯借りてきてな、今日返すって約束してんねん。せやけどこれ、ロックかかっとって…宍戸なら開けられるんちゃうかと思ったんや」
「は?」
「ほな、任したで」
「おい!忍足!」
そう言って、すっかり見慣れた昊罹の携帯を俺の手に落として教室に戻っていった。
教室で席について、なによりまず電源を入れたらなんの問題もなく入った。きっと忍足が充電したんだろう。待受画面には夥しい数の着歴とメール受信の表示があった。
…これ、気持ち悪いな…
きっと最初の数日分なんだろうけど、流石に携帯はホラー顔負けなことになってる。これじゃすぐに電源落ちたんだろうな。
昊罹がロックに指定しそうなナンバーを考えていた。その間にもセンターから容赦なくメールが飛ばされてくる。
うぜえ。
とりあえず思い付いたナンバーをひたすら紙に書き出した。
HRが始まる頃にようやくメールは切れたが、電池もかなり減ってた。まぁ仕方ないか。