手帳を開くと、今日は忍足くんが携帯を返しにくると書いてあった。
聞き覚えはあるけど、なかなか思い出せない。でも、どうせ誰かわからなくても、時間になればここに来るだろうから気にしないことにした。
今日は天気が悪い。今にも泣き出しそうな空。小児院の子たちが病棟に戻るまで降らなければいいんだけど…
外と小説を交互に見ていたら、ドアが鳴った。
「いらっしゃい」
「携帯返しにきたで」
と言うことは彼が忍足くんかぁ…もう一人は…今日の手帳にはいなかったはずだけど…
「こいつは宍戸っちゅーんや。部活仲間でな、会いたいっちゅーから連れて来たんや」
「じゃあはじめまして…じゃないか」
「ああ」
「ごめんなさい。あたし、全部忘れちゃってて」
「いや、それは忍足から聞いてたから…」
「そっか」
「これ、ありがとうさん」
「うん。ありがとう」
「あとな、それロック掛かっとって中はわからんかったんや。昊罹ちゃんはナンバーなんてわからんよね」
うーん…ナンバーがなんなのかもよくわからないんだよね。
「うん。ちょっと」
「なぁ」
「なに宍戸くん?」
「それ…」
「ああ、これ?気付いたらあったんだ。きっと忘れる前のあたしが大事にしてたはずだから捨てられなくて」
小さなハートのペンダントトップのついたネックレスに気付いた宍戸くんは、なんか複雑そうな顔をしてた…気がする。
「あれ、昊罹ちゃんこんなん読むんやね」
「うーん、何回か読んでるんだろうけど、忘れちゃうからよくわかんないや」
なんとはなしに忍足くんが本を開いた。
「なぁ、宍戸」
「あ?」
「これ…」
本の裏側をみて二人は一瞬動きを止めた。そして棚に置かれた携帯を操作する。
「…開いた」
「嘘やん…」
「どうしたの?中、見れるようになったの?」
「ああ」
再度返され、教えてもらいながら弄る携帯の中は凄かった。
見覚えがない名前の着信履歴とメール(って言うんだって)が本当にたくさんあった。
どうやらあたしはなにも言わずに学校から離れたらしい。そんなあたしを心配した内容が、すごく温かかった。
そこで気がついたのは送信ボックス。一つだけメールが保存されていた。宛名は【亮】
「ねぇ、亮って誰かな?」
「…宍戸のことや」
「じゃあ…これ、宍戸くんが読んで。忘れる前のあたしが残したのかもしれない」
そしてあたしは、携帯を宍戸くんに渡した。