「いらっしゃい。どちらさまですか?」
そんな言葉がお前の口から出るとは思わなかった。
俺が氷帝に入った時から一緒だが、そのときは既に口が悪かったからな。お前にこんなしおらしい時があったとは想像もつかねぇ…いや、なかったのかもな。
「あの…?」
「跡部景吾だ」
「ああ!跡部くん!」
両手を会わせてふわりと笑う螺々空に違和感しか感じねぇ。聞いた話と違うじゃねぇの。
「俺のことを覚えてるのか?」
「いや、さっき忍足くんが言ってたから覚えてただけでして…すみません」
「構わねぇよ」
「あ、お花ありがとうございます」
本当、別人みたいだな。こんなお前想像もしなかったぜ。
「そんな固くなる必要はねえ、もっと気軽に話して構わない」
「そう?気を使ってもらってごめんなさい」
「こっちこそ悪かったな、食事の時間に」
「それはぜんぜん気にしないで。病院の食事って時間早くて、寝る前にお腹すくんだよね」
「お前らしい」
「…前からなんだ」
しくった。昔の話はダメだ。
俺としたことが…
「いや、今のは」
「そっかぁ、よかった」
「…は?」
「あたしはあたしなんだなぁって思って。まだ忍足くんくらいしか友達だった人と話したことなかったから」
そんなことか。
「なら、近い内にお前と親しかった奴らを連れて来よう」
「え、でも」
「次の木曜日でいいか?」
「たぶん、なにもないけど」
「なら空けとけ」
「でも」
「なんだ」
「いいの?あたしなんかのために」
「お前だからだ」
俺には脳科学なんてわかんねぇけど。