触れたかった。ただそれだけ。
    [Side:R.Shishido] 

    「悪い。昊罹んトコに携帯忘れたっぽい」
    「…先行ってるぜ」
    「ああ、悪い」

    たぶん嘘だってことくらい跡部には気づかれてるだろう。そんなのどうだっていいけどな。

    「あれ?宍戸くんどうしたの?忘れ物?」
    「いや…」

    しまった。昊罹に言う言い訳を考えてなかった。

    「まだ時間大丈夫か?」
    「うん。みんな仲良いんだね。部活仲間だっけ」
    「ああ」
    「あたしもあそこにいたなんて、なんか不思議な感じ」
    「だろうな」
    「あ、座って座って!」
    「悪い」

    さっき長太郎が切った果物がまだみずみずしく光ってる。

    「よかったら食べて」
    「いや」
    「まだ時間あるし、せっかくおいしそうなんだもん。乾燥しちゃう前に食べてよ」
    「お前は?」
    「もらうよ?」

    軽い音をたてながら梨を食べる昊罹は、前に岳人とケーキを口いっぱいに頬張っていた昊罹となにも変わらなかった。

    「…なんですか?」
    「なんでもねえ」
    「ならいいけど…」

    そうだよな。俺らのこともまとめてちょっと忘れただけで、昊罹は昊罹のままなんだよな。

    「梨甘ーい」
    「昊罹」
    「はい?」

    お前を困らせたいとかじゃねぇんだ。気付いたら、体が勝手に動いてた。