あれから、俺に弱音を吐いてるうちに鎮静剤を打たれた昊罹はおとなしくベッドで寝ていた。
目が覚めたら、お前はまた全部忘れてるんだろうか…?
たぶんそうだ。さっき医者が言ってた。寝ないでいた反動で、今までよりいっぺんに忘れる可能性があるらしい。
昊罹の病気は原因不明。治療法も今のところない。
「…なんで俺らだったんだろうな」
なんて、むちゃくちゃだな。
でも、こんなどっかのドラマにあるような話、少なくとも自分には関係ねえと思ってた。
それがいけなかったんだ。もしもなんてめったにねえだろうけど、ありえないなんて思ったらいけなかったんだ。
だからこうなったんだ。
「忘れんな…」
忘れてほしくねえ。できるならお袋さんの事も俺達の事も、なにも忘れてほしくねえんだよ。
だけど、無理なんだよな?
「忘れんなよ…」
届かない。俺の声も、想いも、なにも届かない。
俺、女々しかったんだな。こんなんじゃ、今に昊罹に怒鳴られるな。
「デカい男がいつまでもウジウジしてんじゃねぇよ気持ち悪ぃ」って。そう言えばいいんだ。言えばいいじゃねぇか。
言ってくれよ。
「お前は、戻るんだな」
進む時間の中で一人過去に戻っていく。
「…あ?」
ちょっと待て。
俺や跡部のことも忘れてるってことは、逆にどこまで記憶があるんだ?