「やべっ今何時だ?」
「6時21分ですけど…」
「間に合わねぇな」
学校には少し早いし…
「なにか予定ですか?」
「今日朝練あったんだよ」
さっき言って部活かな。
「今からでも急いだら間に合うんじゃないですか?」
「…そうだな、じゃあ水曜にな」
「うん」
宍戸くんを見送りながら、あたしはとてもひどいことを考えた。でもあたしは決めなくちゃいけない。
お昼頃、お母さんが花を抱えて入ってきた。
「起きてたの?」
「うん」
「最近よく寝てたから今日も寝てるもんだと思ってたわ」
「お母さん」
「なに?」
返事をしてくれるから、やっぱりお母さんなんだろうと思う。あたしの、お母さん。
「あたし、迷惑じゃない?」
「なに言ってるのよ、そんなわけないじゃない」
「本当に?」
「こんな嘘ついてどうするの。昊罹は私の娘なんだから当然でしょう?」
「じゃあ…迷惑かけていい?」
「そんなのわざわざ聞かなくていいの」
「じゃあ聞くけどね、あたし、ここから出られない?」
「…え?」
聞いた瞬間、不安そうな顔。
「違うの。ここにいたくないとかじゃなくて…会いたくないの」
ご飯が美味しくないとか、誰かかが嫌いとか、そんなんじゃない。
「…誰に?」
「跡部くんとか、忍足くんとか…宍戸くんに、会いたくない」
「なにかあったの?」
「ないけど…」
なにもないから、会いたくない。
ここにいると、嫌でも目にしないといけないから。
「じゃあどうして?」
「会いたくないの」
「…仕方ないわね。今先生に聞いてみるからちょっと待っててね?」
「うん」
…言ってしまった。記憶がどこかに逃げるだけで、他は元気なんだからたぶん大丈夫。
宍戸くんが来ると言った水曜まではまだ時間がある。