「昊罹、そろそろ起きろー。SHR始まるぞー」
「ん…」
きゅうっと少しだけ伸びて座り直したその姿は、どこか猫のように見えて。
「はぁ…だるぅ」
「なんか今日の昊罹マジでつらそうだな。なんかあった?」
「うーん…特になかったはずだけど…」
起きたはずだが、どこか虚ろな目のまま黒板をみている昊罹。
「(マジで変…)あ」
「なに岳人」
「今日合同授業じゃね?」
「あー…忘れてた。うー、いつだっけ?」
「午後だぜ(大丈夫かよ)」
「午後かぁ…眠いなぁ」
相変わらず目をしばたかせてぼんやりする昊罹を、岳人は横目で見るだけだった。
「(あー眠いー)」
ノートには板書などと一緒に、愚痴や顔文字が書き連ねられていた。愚痴といっても「あー」やら「うー」といった意味なんてまるでない言葉ばかり。
それを岳人がちらちら見ていることに気づく余裕すら今の昊罹にはなかった。
そんな調子で授業は確実に終わっていった。
「昊罹、昼だぞー」
「んあ?んー」
結局三時間目の途中からずっと寝続けていた昊罹を起こそうとしたが、生返事ばかりでなかなか起きる気配はない。
「どうすっかなー」
「向日、昊罹ならうちが起こすからほっといていいよ」
「サンキュ香山」
「ほら起きろ」
「いた」
友達にぱかんと頭を叩かれてようやく顔を上げた昊罹だが、やはり現状を理解できていなかった。
「移動…?」
「じゃなくて昼。あんたがそんなだからへんな噂たつんじゃないの?」
「ウワサ?」
ほとんど一日寝ていた昊罹は、自身が関係している噂すら知らないらしい。
「別れたとか」
昊罹はひとつ納得したように唸った後、あまりに自然とこぼしたものだから、聞き間違いだと思ってしまった。
「は?」
「だから、それマジ。もう付き合ってない」
「なんで?!」
「なんでも」
「意味わかんない」
「そのままだよ。私、学校も変わるから」
「それも聞いてない」
「まぁ言ってないし」
「わけわかんない」
「しょうがないんだよ」
諦めたようにそう言うと、昊罹はひとりで教室からでていった。