思い出は行方不明になりました。
    [Side:C.Otori] 

    「ごめんなさいね」
    「…え?」
    「じゃあ、ここにはいないってことですか?」

    螺々空先輩に会いに病院に行ったら退院したと聞いたので、そのままご自宅を伺ったんですけど、先輩はいないようでした。

    「今は、長野のおばあちゃんの家にいるのよ」
    「あの…どうしてですか?」
    「…あの子が言ったの。田舎で暮らしたいって」
    「そうですか」

    どうしてそんないきなり…記憶に問題があったなら、きっとなにかあったその日に決めたはず。

    先輩、なにがあったんですか?

    「会いに行くってのはダメっすか?」

    宍戸さん…

    「今会っても駄目だと思うわ。もう、全部忘れてて」

    全部ってことは、先輩のお母さんもなんですか?

    「昊罹、そんなに悪くなってたんですか?日曜に会ったときは…」
    「日曜来てくれてたの?」
    「え、あ…まぁ」
    「先生が言うには精神的なものらしいから、時間が経てば多少よくなるみたいなんだけど」
    「…やっぱり会ったらダメっすか?」
    「宍戸さん…」
    「いいけど、辛くなるわよ?」
    「…いいんです。今昊罹に会いたいんです」
    「ちょっと待ってね。今、紙に書いて渡すから」
    「すみません」
    「…大丈夫ですか?」
    「あ?ああ。悪いな、長太郎。こんなところまで付き合わせて」
    「俺が好きで来てるんですから、先輩は謝らないでください」

    たぶん俺以外でも同じこと言いますよ。
    みんな同じ気持ちです。