私は、午後の授業を受ける前に早退した。どうせ受けても意味なんてなくなるし。
ほら、今も午後がなんの授業だったかわからない。
「荷物纏まった?」
「うん。たいした着替えいらないでしょ?」
「そうだけど…」
ボストンバッグに着替えを数着と暇潰し様の小説(推理物)を詰めると、それをみた母はどこか辛そうな表情をした。
「持って行きたいもの、今のうちに全部入れちゃいなさい」
それは、私が忘れるだろうことを前提で話されていると、いやでもわかった。
「うん…ごめんね」
一人娘なのに、こんなことになって…
「もう。昊罹が気にすることじゃないでしょう?」
「そうだね。そうだけど」
「気にしないの。いい?」
「……うん……」
泣きたいんだろうな、本当は。あたしなんかよりずっと辛いんだろうな…ごめんなさい。
「…あれ?」
これ、なんだっけ?
見つけたのはピンクゴールドの華奢なオープンハートのネックレス。
かわいいけど、私はこんなの買わない。お世辞にもかわいくなれない私は、こんな、女の子って感じのアクセは買ったことない…と思うけど…
「…まさか…」
…忘れたの?
嘘。だってここにあるってことはついさっきまで覚えてたはずじゃん。きっと大切で忘れたくないもののはず。
じゃなきゃこれからたいして必要ないアクセなんて、ここにあるはずがない。今も棚の中に入ってるはず。
だからこれは大切なもの。大切なものだ。忘れたらいけないもの。思い出さなきゃ、思い出さなきゃ。だってこれは大切な…大切な…大切…?
「ぅ…そだ…」
嘘だ嘘だ嘘だ!こんな、こんなに早いなんて嘘だ!絶対嘘。なにかの間違い…お願い、そう信じさせて…
だけど。私はこれがなんなのか、どうしてここにあるのか。結局わからないだかった。