▽言質を取ります
朝。暖かくなるのはまだ先の事らしい。少しひんやりする朝の道を、蛍ちゃんと忠くんと一緒に登校するのは私にとって貴重な時間だ。
「朝練はいつから?」
「月曜だよ」
朝練が始まったら私と登校時間が合うわけがない。一緒に登校してもなにもやることがないし、第1に蛍ちゃんがムダに早朝から一緒に登校なんてしてくれるわけがない。
あんまり朝早いと発作が起きやすいからって、絶対に止められる。
「うん。今から楽しみなんだー」
だから、一緒に登校できる今がとっても大切。蛍ちゃんもそう思ってくれてたらいいのになぁ。
「おはよー、上河原ちゃん」
教室に入ると話しかけてきたのは、後ろの席の工藤くん。頬杖ついてどこかうっすら笑ってる。見た目はチャラいけど顔はイケメンの部類なので、それなりに絵になってはいる。チャラいから絵になるのかはわからない。
「おはよう工藤くん」
「お2人さんもおはよう」
「おはよう」
チャラいからか、蛍ちゃんと忠くんにもフレンドリーに声をかけてた。
「部活なんにしたの?」
そんなに他人の部活が気になるのかな?
「工藤くんは野球部だっけ?」
「サッカー」
「そっかぁ」
教科書を鞄から出しながら聞くと、当たり前のように部活を教えてくれた。
普通に教えてくれたけど、前に聞いたよう気がしなくもない。もしも2回目だったらごめん。
「じゃあ僕行くから」
「あ、ツッキー?」
工藤くんと話している間に、蛍ちゃんは忠くんも置いて1人で席に向かってしまった。
「なんかあった?」
「いや、わかんない…俺も行くね」
「うん」
どうしたんだろう。なにかあったのかな?でも忠くんも気付かなかったの?忠くんもずっと蛍ちゃんといるわけじゃないから気付かないこともあるだろうけど、蛍ちゃんに直接聞くのが1番いいんだろうな。でも、聞いたところで教えてくれるのかな…
「えーっと、たしか月島と山口だっけ?」
「うん」
頷きながら思ったのは、工藤くん名前覚えるの早いなってこと。
「上河原さん、あの2人と仲いいの?」
「うん、幼馴染み」
それと、言い様のない不安について。
「へぇー…2人ともかなりでかいね。部活なに?」
「バレー」
「なるほどなー」
今まで蛍ちゃんと話さないことがなかったわけじゃない。中学の時だって、クラスが違えば時間も合わない私達はほとんど話さない事が多かった。廊下ですれ違ったりすれば話したけど、それもたまに。
だから、ちょっと話さないことくらいは当たり前のこと。
ただなんとなく。
そう、本当になんとなくだけど、嫌な感じがする。
「話は戻すけどさ、部活決めたの?」
「運動部には入らないけど、部活は決めた」
「あーあ、貴重なマネージャー候補が他の部活に決まったかぁ」
声が少しくぐもった感じがして、気になって振り返ると机に突っ伏してた。それは見るからに残念ですと言った雰囲気。
マネージャーなんてドラマとか漫画の中にしか存在しないと思ってたけど、どうやらそれは違ったらしい。ちゃんと一定数存在していて、かつ必要とされる存在みたい。
「そんなにほしいの?マネージャー」
「女子からの応援は嬉しいもんなの。それが上河原ちゃんみたいなかわいい子なら特に」
「へぇ…」
「…いや!反応薄くない?!」
どう反応したらいいかわかんないだけなんだけど…まぁいいか。
そんなことより、この言い様のない不安をどうしたらいいか考えないといけない。
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