言質を取ります

「千明ちゃん、大丈夫…?」
「うん」


嫌な予感と言うのは、どうしてこう当たってしまうんだろう。
これは話さないからとかそんな子供っぽい理由じゃなくて、もっと直感的なもの。別にいじめにあうなんて物騒なものじゃなくて、蛍ちゃんと目が合わなくなった。それ事態は少しもおかしな訳でもないけど、忠くんが気遣わしげに視線を往復させるのが証拠。

私、知らないうちに蛍ちゃんになにかした?いつもならなにかあればすぐ言ってくれるけど、話すのも目を合わせるのも嫌になるようなことした?
考えてもわからない。思い当たることがないようでありそうで、不安でいっぱいになる。


「体調悪い?」
「大丈夫。ちょっと考え事」


今は太田芽衣子こと芽衣子ちゃんと身体測定を回ってる途中。入学式の前に測定してるから、正直特別に時間を取る必要はいらないんじゃないかなと思ってる。
あんまり考えてばかりいると心配をかけてしまうから、1回考えるのはやめよう。芽衣子ちゃんにまで迷惑かけたらダメだ。考えるのは1人の時。


「千明ちゃん身長いくつだった?」


芽衣子ちゃんとは入学式のとき、ほんの少し話したのがきっかけで話すようになった。


「159.8」
「私、また伸びてた」
「いくつ?」
「167になってた…」


おっとりした雰囲気なのに背が高い。バスケ部って言ってたから、身長があっても損にはならないと思う。


「男子とほとんど目線が一緒だよぉ」


問題は、男子とほとんど同じ身長ってことらしい。
芽衣子ちゃんは身長高くてもふわっとした雰囲気でかわいいから、あんまり気にしなくて大丈夫だと思う。


「千明ちゃんに身長あげたい…」
「私より男子にあげた方がいいと思う」
「本間くんと目線、ホント近いもん。ほぼ同じ?」


遠い目をして空笑いする芽衣子ちゃんは、そうは思ってないらしい。
身長とか見た目で判断するのやめて欲しいよね。私だっておとなしそうってよく言われるけど、別におとなしくないもん。あんまり丈夫じゃないからおとなしくしてるけど、本当はおとなしくないもん。


「千明ちゃんはちっちゃくてかわいいね」
「そんなにちっちゃくないと思うよ?」


比較的背が高い人と一緒にいるから凄く自分の身長が高いとは思ってないけど、世間的に見たら平均くらいなんじゃないかな?


「それにね、芽衣子ちゃんはかわいいから大丈夫」
「千明ちゃん…!」


芽衣子ちゃんは私にはできない女子っぽい反応を返してくれた。
あと、私が芽衣子ちゃんをおっきいと感じないのは、基本的に蛍ちゃんとずっと一緒にいたからと言うのが大きいと思う。30cmくらい違うのかな?


「千明ちゃんはいいコだねっ私かわいいなんて滅多に言われたことないよ…!」
「そうなの?」
「背がおっきくていいねとかそんなのばっかり」


こんなに女の子らしくてかわいいのに、今まで芽衣子ちゃんに声をかけた人の目は節穴なんだろう。


「芽衣子ちゃんはすごくかわいい女の子だよ」
「千明ちゃん!好き!」
「ありがとう」


芽衣子ちゃんがぎゅうぎゅう抱きついてくるその向こうに、蛍ちゃんと忠くんを見つけた。
頭1つ飛び出している2人を見つけることはそう難しいことでもない。そうでなくても2人のことならすぐ見つけられる。


「早く終わらせて、休んじゃおう!」
「そうだね」


なんで見つけられるのかは、たぶんだけど一緒にいる時間が長いからだろう。


「この後の握力とかの方が嫌」
「私も。男子の平均はいかないでほしい」
「逆にもう少しいい成績がほしい」
「あげたい!切実に千明ちゃんにあげたい!」


もうちょっと丈夫になったと数値で判れば、お母さんも蛍ちゃんももう少し安心してくれるかな。
ああ、でも今は何故だか蛍ちゃんに避けられてるんだった。どうしよう。


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