仮入部最後の日

仮入部期間の最終日。蛍ちゃんと忠くんはバレー部の見学に行った。


「部活どうするの?」
「うーん…」


せっかくだから私も部活見学に行ってたんだけど、どこも新入生を捕まえようとするあの目が怖かった。

特に科学部。何人か将来犯罪者になりそうな目をしてたよ。


「やっぱり部活なんてやめてさ、先に帰りなよ。あんまり遅くなるとおばさんたち心配するんじゃない?」


蛍ちゃんが心配してるのは、これからの私のこと。

本格的に部活が始まると蛍ちゃん達の下校時間は今より更に遅くなる。運動部が日の暮れないうちに終わるわけがないことは、中学の時に学習した。それでも、最終下校時間が決まってるからその時間までだけど。


「部活に入るならまだしも、帰宅部が運動部終わるまで待ってるなんて普通に考えてナイ」
「俺たちが考えただけで心配になるのに、おばさんたちはもっと心配するだろうねツッキー」
「部活入るもん」
「何にするか決まったの?」
「…決まったもん…」


そう。私は2人にどの部活に入るのか話してない。
お父さんも頑張れって言ってくれたから、部活に入ること自体に不安はない…とは言えないけど、そんなに大きくない。あるとしたら、まだ知らない未知の世界に足を踏み入れようとしてる事に対する不安だから。こればっかりは踏み込まなきゃ解消されないと思うから、大丈夫。

小さいときは知らないことを知ることが楽しかったのに、いつの間に怖がりになったのかなぁ。


「別に無理に入らなくてもいいんだよ?」
「無理してない」
「どーだか。部活やりたいなんて言ったら、おばさん心配したんじゃない?」
「それは大丈夫だよ」
「どの口が言ってるの?ちぃは疲れが溜まると熱が出たり発作が起きやすくなるデショ?そうなったら部活の人にも迷惑かかるってちゃんとわかってるの?」


たぶん、蛍ちゃんは私が考え無しに部活に入ろうとしてると思ってる。


「…わかってる」
「ちぃが思ってるほど部活は生温くないよ。文化部だって体力勝負なところがあるって言ってたし…無理して倒れるくらいなら部活なんてやめて先に帰りな」


すごく心配してくれてるのもわかってる。
でも、


「やだ」
「やだって…」
「でもツッキー」
「なに?」
「ちぃが1人で帰る方が不安じゃない?」
「それもそうだけど」


忠くんの言葉は私に反撃のチャンスを与えてくれた。言い返すなら今しかない!


「それは携帯があるから大丈夫だよっ」
「発作が起きたら電話なんてできないよね?話せないのにどうやって場所教えたり助けを呼ぶんだよ」


はい、論破されました。


「そもそもちゃんと充電してるの?この間繋がらなかったんだけど」
「あ、それで俺に聞いてきたの?」
「してるよ。あのあとしたから…ほら!」


ドヤ顔で携帯を見せる。
でも蛍ちゃんの眉間には皺。忠くんはなぜか苦笑い。


「ねぇ、山口」
「うん」


どうしてそんな顔をするのか全然わからなかったけど、忠くんの言葉でようやくわかった。


「ちぃ、電池切れてるよ」
「嘘!」


電源ボタンを押しても全く動かない。画面は真っ暗なまま私を映している。
おかしいなぁ。


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