▽仮入部最後の日
「あれって入学式の次の日だったよね?それから充電してないなら切れてるだろうとは思ってたけど、まさか本当に電池が切れてると思わなかったよ」
「携帯ってすぐ電池なくなるんだねぇ」
「いくらなんでもちぃは充電しなさすぎだと思うよ?」
「でもね、普段あんまり使わないし」
「あんまり使わなくても携帯電話を携帯しないでどうして携帯電話って言うんだよ。固定電話でもちゃんと繋がるのに、ちぃの携帯は繋がりもしないからもう電話ですらないね」
はい。2度目の論破です。
蛍ちゃん頭の回転が早いんだよね。昔からテストの点数もいいから、使い方も上手なんだろう。
だからか、私は口じゃあ絶対に勝てない。
「じゃあ今日からちゃんと充電する」
「もっと早くにしてほしかったけどね」
「やっぱり一緒に帰るのが1番間違いないと思うんだけど」
「だからそうするとちぃの発作が」
「もー、喧嘩しないでよー。私部活入るし」
「それとこれとは話が別」
「えー」
発作なんて県大会見に行ったときからほとんど起きてないし、そんなに心配しなくても全然大丈夫なのに。熱はたまーに出るけど。
どうしてこんなに心配するのかな…って、それも私のせいなんだろうけど。
「あ」
「なになにツッキー」
なにかに気付いた蛍ちゃんの視線の先には、誰かがいるみたい。
「ん〜?」
知ってる人かなと思って目を凝らしてみたけど、全然知らない男の子が2人ってことしかわかんなかった。
暗くてよく見えないけど、いつか見たバレー部の練習に似てる気がする。
「誰かいるね。もうだいぶ暗くなってるのに、こんなところでなにやってるのかな?」
「さぁ」
忠くんも理由が思い付かないみたいで、2人して首をかしげてしまった。
もしかして蛍ちゃんの個人的な知り合いかな。なんて蛍ちゃんを見たとき、蛍ちゃんはもう足を踏み出していた。
「どうしたのツッキー」
「うるさい山口」
「え、蛍ちゃん?」
「着いてくるなら黙って」
やっぱり知り合いなのかな?
なんだか足音を忍ばせてこっそり近付く感じが、イタズラする直前みたいで少しドキドキする。
あ、さすがに黒髪の子は正面から私達をみてるわけだから、わかるよね。びっくりしてるみたい。
蛍ちゃんはオレンジ色した男の子の投げたボールを片手で受けとると、ちょっと嫌な顔をした。
…あれ?どっかで見たことある、かな?
どこで見かけたんだろう。男子となんて学校以外で話したことは…なくもないけど数えられるくらい。その中に目の前の2人はいない。
「へぇーっ本当に外でやってる!君らが初日から問題起こしたっていう1年?」
どこか楽しそうに笑ってるのにどことなく嫌な、前にいじわるしてきた人を言い負かした時みたいな顔してるんだろうな。
「げっTシャツ!?寒っ」
「え?あ、本当だ」
蛍ちゃんの背中から覗くと、確かに半袖だった。
寒くないのかな?私なんてマフラーまで着けさせられてるのに…私だけ…
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