▽入学式のこと
席振りは出席番号順になってた。何故か窓側から横に。
私は前からも窓からも2番目。蛍ちゃんは私の左斜め後ろ。忠くんは1番後ろのドア側から2番目。今年もギリギリ1番最後じゃないみたい。
鞄を置いてとりあえず座ってみる。教室を見回してみると、まだ人は疎らで、なんとなく緊張した雰囲気で座っている人が多い。話している人はもともと友達なのか否か…もし「はじめまして」ならすごいと思う。
「おはよー」
やっぱり友達と受けるのが普通なのかな?でもほら、私だって蛍ちゃんと忠くんがいるし…でも女の子の友達がいるわけじゃない。だからって友達が1人もいないわけじゃないけど!
「あの!」
「へあっはい!」
悶々と考えてたら、いきなり肩を叩かれた。叩かれたと言ってもすごくソフトだったしまったく痛くなかったけど、まさか話しかけられると思ってなかったからすごくびっくりした。
「よかったー。まさか聞こえない人なのかと思ったよ」
私もまさか話しかけられるとは…まだ心臓がばくばくいってる。
「木村なな。泉館中」
「え」
あ、これ自己紹介する感じ?スッゴい待ってる。
「上河原千明…雨丸中、です」
「苗字強そう!かっこいい!」
「そう、かな?」
「なんか不良マンガとかの1番強いやつみたい!」
その例えは初めてだ。いつかのドラマでいたなんとかフォーの…桜餅みたいな苗字の人っぽいとは言われたことあるけど。
その人ともかすってもないけどね!
「上河原さんはなんでここに?」
「近かったから…?」
「疑問系?友達と受けたりしなかったの?」
「進路に友達は関係ないから」
「クール!そう思ってても言い切れないところなのに!」
…この人変だ。どうしよう。
助けを求めようと蛍ちゃんを見たけど、ヘッドホンをして外なんて眺めてるものだから私の視線には全く気づいてない。忠くんは持ち前のコミュ力で友達ができたらしい。気付いてくれたけど手を振られただけ。
そうじゃないんだよ忠くん。
「なになに、知り合い?」
「あー…うん。同じ雨丸」
「へぇー!彼氏?」
瞬間、少しだけ頭に血が上った。
「違う。幼馴染み」
「そっかー」
たぶん場を繋ぐためのなんてことない会話の一部で、この人の記憶に残りもしないんだろうけど。
「木村さんはどうしてここに?」
「うーん…なんとなくかな」
なら私も、深く考えず、なんの意味も持たない話をしておけばいい。
「制服が可愛かったし、男子が学ランだから!」
「そんな理由で?」
「大事なところだよ!3年間着るんだからどうせなら可愛い制服着たいもん」
「じゃあ学ランって言うのは?」
「体育祭の時ブレザーより学ランの方が絶対にかっこいい」
「あー…」
なんとなくわからなくもないような…でも、
「それって体育祭のときだけ学ラン着ればいいことじゃない?」
「あ」
なんだろう。言っちゃ失礼だけど、バカなの?
「上河原さんって長いから名前で呼んでもいい?」
「うん」
「ななー」
「あ、ごめん。ちょっと行ってくる」
「どうぞ」
どうやら木村さんは友達と一緒らしい。これが偶然なのか合わせたのかはわからないけど。
前は女の子で左側は男の子。2人とも運動部っぽい感じで、よく言えばクラスの中心になるようなタイプ。後ろも女の子だったけど、がり勉ちゃんって感じ。
ま、おとなしくしておいて損はないか。
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