登校中

「あ、ゆっきー!かおりーん!」
「おはよー」
「鳴子は朝から元気ねー」

引退してから暫く。ずいぶん長いことジャージをもって登校していたから、学校にいるのに軽すぎる鞄を持ってることに違和感を覚える。

「今日が登校日でよかったよ!」
「今週からまた減るもんねー」
「やっと一息つけるよねぇ」

それでも私の鞄は大きい。何故なら今日はある意味大切な日だから!

「ゆっきー、かおりん」
「なによ、そんな改まった感じ出して」
「あ、もしかしてー?」

食べるの大好きなゆっきーはすぐわかったみたい。

「3年間ありがとう!」

包みを手渡すのと同時にゆっきーからお礼が言われた。

「3年間よく飽きずに用意したわね」
「1回目があんなに喜んでもらえたから、やめるのも可哀想で」
「鳴子らしいわね」
「今年はなにー?」
「今年は木兎と小見のわがままを叶えまして、パウンドケーキとトリュフの2段構えです」
「やったー!」

ゆっきーは喜びの頂点に達したのか包みを持ったまま抱きついてきた。
…本当、ご飯もお菓子もあれだけ食べてるのに余計な養分はどこに行くのか…胸か。

「ホント、よくやるわねぇ」
「作るの好きだから」
「パウンドケーキってなに?」
「ああ、ゆっきーとかおりんには紅茶とチョコチップとプレーンのパウンドケーキ。ちなみにトリュフは中がガナッシュになってます」
「あんた何種類作ったのよ」
「今言っただけだよ。ゆっきーとかおりんだけ特別」

男子にはそれぞれ1種類ずつです。
全員分なんてそんなことできるわけがない。そんなことしたら私のお財布が死んじゃう。

「…こんなことならちゃんとしたの用意しとくべきだったわ」
「え?」
「一応今までのお礼」

そう言ってかおりんがくれたのは、小さめだけど間違いなくチョコの包み。

「いつもお菓子もらってるからいいのに!」
「それとこれとは別でしょ?ホワイトデーにちゃんと用意するから待ってて」
「いいって!」
「私も今年は用意するから、期待しててねー?」

お返しするくらいなら自分で食べる精神のゆっきーからの、お返しを用意する宣言…

「別にいいのに」
「私も3年間のお礼ってことー」
「諦めて受け取んなさい」
「…うん」

2人とこうして歩けるのもあと1ヶ月もないんだな、なんて思うとほんの少し寂しくなるけど、少なくともそれまでは絶対にしんみりしない。
直前まで笑って過ごしたいから。

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