放課後、部活にて

放課後、友達と少し話してから体育館へ向かう。当たり前だけど練習はもう始まってて、引退する前は音が鳴る前からそこにいて、音がなくなってから帰ってたのに。
なんとなく寂しい気持ちになった。

「あれ?センパイどうしたんですか?」
「ちょっとお届け物にね」
「誰か呼びます?」
「もうすぐで休憩でしょ?待ってるから大丈夫」

引退前に新しいマネは見つからなかったから、今は1年が引き受けてくれてる。
待ってるとは言ったけど、ただ見てるのもものすごく違和感を感じる。いつもならタオルとかドリンクとか準備してたから。

そう思ったら即行動。

「やっぱり手伝うよ。さすがに1人じゃ手が回らないから、体育館でボール拾いしてて」
「はい」
「ただ拾うだけじゃないよ?この意味がわかればレギュラーも夢じゃない!」
「あざます!」

練習できないのは可哀想だからね。新人勧誘もっと頑張ればよかったなー。

久しぶりにドリンク作るのは、ちょっと骨がおれた。

スクイズ振るのってこんなに疲れたっけ?もう全部ジャグにしたらダメなのかな?でもジャグも重いし。
新人ちゃんが入った時のために、マネノートに頑張れって書いておこう。あと男子は意外とおバカで優しいから怖くないよって。あいつらデカいしうるさいから最初は怖いんだよねぇ。

「柏手さんなにしてるんスか」
「お?おひさー」

後ろからやって来たのはかわいいかわいい尾長だった。
たぶん、私がドリンク作ってるって聞いて来たんだろうな。尾長真面目だから。

「あ、お久しぶりです‥じゃなくて!なんでドリンク作ってるんスか」
「いや、みんなが休憩入るまで暇だったからさー」

ついでに洗濯もしていこうかな。

「尾長だけ?赤葦はまだ中で指揮とってる?」
「とってますけど、ホントになにしてるんスか」
「せっかくきたからさ、どうせ待ってるなら1年の為に外仕事しようと思って。いきなりこんなのやっても大変でしょ?」
「そりゃ有り難いですけど、センパイ引退してるし」

そういうとこ、ホント相変わらず。
まぁ先月引退したばっかりだから変わってなくて当然だけど、私がやりたくてやってるんだからやらせといていいのに。

「それ言ったら木兎達もそうだよ。だから気にしないの」
「はい」

それでも気になって仕方ないらしく、尾長はなかなか動かない。これじゃあ尾長のためにならないじゃん!仕方ないなー。

「はい!じゃあこれ持ってって」
「!はいっ!」

うんうん。ウチの後輩は今日もかわいい。

尾長と一緒に体育館に戻ると、ちょうど休憩に入るタイミングだった。
私のタイミング完璧じゃない?ヤバくない?ドンピシャだよ?

「はぁーい!ドリンクお待たせー」
「あんたなにやってんスか」

おう、赤葦辛辣。
赤葦は結構ズケズケと痛いことを言ってくるからかわいくはない。チームに欠かせないけど、可愛いげのない後輩だ。

「いや、お届け物ついでにお手伝い?」
「有り難いですけど、柏手さん引退してるんだから気にしなくていいんですよ?」
「1年が練習できないのが気になってねぇ」
「…まぁ、助かりますけど」

とても珍しいデレが出たらかわいい。

「で?届け物ってなんなんですか?」
「あらお忘れ?」

鞄とは別のトートバッグからちょっと大きめの箱を取り出す。
赤葦は去年も経験してるから、私がなんのために来たのかわかったらしい。

「これ、部室置いてっていい?」
「いいっスよ。ありがとうございます」
「え、なんスかこれ」
「クッキーだよ。バレンタインだからね」
「あ、あざす!」
「毎年ありがとうございます」
「いいえー。で、これは2人にね」

別の包みを取り出すと尾長が静かにバグった。そんなに嬉しい?

「旧レギュだけだから、ナイショね」
「はい」
「え、あ、ありがとうございます!」
「だからナイショだってば!」
「あ、はい!」
「柏手さんもうるさいです」

騒いだのがいけなかったのか、木兎や小見がわらわら近寄ってきた。

「こっちもうめえ!」
「よくこんなの作れるよなー」
「あ、ちょっと!これ後輩の分だからがっつくな」

あっという間に箱は木兎の手の中に。そこからちゃっかり小見も木葉もつまんでいく。面白いことに赤葦も尾長の分と合わせてつまんでる。

「おーい!柏手からバレンタインきたぞー!」

でもこうしてちゃぁんと後輩にもあげるからみんな仲がいいんだろうね。

「ほら!せっかく作ってきたんだからちゃんと頑張って新人戦でてっぺん取ってきなさいよ!」

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