菅原

「菅原ァー」
「どしたー?」

へらりとわらって振り返る菅原を見ていても、やはり私が気になるところは一緒に揺れるだけ。ほとんど変わりない。

「ずっと気になってたんだけどさぁ、その髪ってどうなってるの?」
「髪?」
「うん、いっつも跳ねてるから気になった」

雨だろうと雪だろうと、その2本のアンテナがへたってるところを見たことがない。

「あー…これ、なんでか直んないんだよなぁ」
「そうなんだ…」

髪質は見た感じ剛毛って訳ではなさそう。それなのに、どうしてそこだけ跳ねてるのか。

「触ってもいい?」

原理とか理由なんてこの際わからなくていい。せめてその髪質だけでも確認したい。

「おー。いいぞー」

触りやすいように少し降りてきた頭に触れると、それは思いの外柔らかかった。だけど跳ねた髪は前後左右に倒してみても、すぐに戻ってくる。しぴぴぴぴってはたいても必ず戻ってくるから、ちょっと面白くなってきた。

「菅原」
「んー?」
「面白いね」
「そう?」
「うん、起き上がりこぼしみたい」
「なんだそれ」

菅原は立ち上がって自分の跳ねた髪を手で左右にはたき始めた。それでも髪は頑なに跳ねることをやめない。

「バネでも入ってるみたい」
「困ってないからいいんだけど、昔はやっぱり気になったなぁ」
「そうだよねぇ」
「柏手の髪はなんかフワフワしてるよな」
「私天パだから」
「へー寝癖ついてもわかんなさそう」
「バレないけど、雨の日なんかはまとまらないから困る」
「そっか」

ふいに重くなった頭。
乗っかったのは菅原の手で、

「でも俺は好きだなぁ…フワフワしてて、柏手っぽい」

頭を撫でながら髪で遊ばれたら、いくらなんとも思ったことない菅原が相手だとしても恥ずかしくなる。

「そ、そうデスカ」
「女の子ーって感じだよな」

どんな意図があってそんなことを言ったのかわからないけど、とりあえず手を止めてほしい。あとその顔もやめてほしい。なんなのその顔、イケメンスマイルか。

暑い…

「え…あ、ごめんっ調子のった!」

たぶん真っ赤になってるだろう私に気付いてくれたのか、菅原もようやく手を引っ込めてくれた。

「いや!大丈夫!じゃなくて!えっと、」

撫でられたことが嫌だった訳じゃない、ただ、ちょっととてつもなく恥ずかしいと感じてしまっただけで…

髪を引っ張りながら菅原をチラ見すると、真っ赤になった菅原と目があってまた逸らした。

「ご、ごめん…」
「うん…」

あれ?菅原ってこんな感じだったっけ?私ってこんな感じだったっけ?
別にかっこいいとかイケメンとか思ったことなかったし、もっとこう、一緒にふざけられるような相手だったのに…

「スガ、いちゃつくなら余所でやれ」
「い!いちゃついてねーべ!」

これはちょっと、ヤバいかもしれない…

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