二口

私は終わらない課題を睨み付けていた。
いやね、ちょっと本気出せばちょちょいのちょいなんだけどね?

「おい」
「なにー?」

後ろの席の二口につつかれて振り返った。

「柏手、お前電気工事士取る?」
「とりあえず」
「だよな」

工業高なんて資格を取ってなんぼだと思ってる。だから私は片っ端から資格試験を受けてる。

今持ってるのは、強制で取ったものを除けば昔から取りたかった危険物取扱者と劇薬物取扱責任者。あとは基本・応用情報技術者、情報技術検定に計算技術検定。面白そうだったからアマチュア無線士とラジオ音響技能検定もやった。

無線とラジオは取ったものの、何に使うのか全くわからない。航海でもすればいいのか?

「どーすっかなぁ」
「なに、二口取らないの?」
「いや、日程が微妙だなと思って」

ああ、部活か。

「試合?」
「になるかも。つっても練習試合だけど。でもこー言うのって学校で受けた方がいいよなぁ」
「うん。試験費バカにならないよ」
「だよなぁ」

工業高校生で資格が少なすぎるのも違和感だと思う。取れる資格が半端なく多いから、少ないと逆に。

「受ける方向でいくかぁ」
「就活楽になるかもだし」
「あ、それいいわ。就活さっさと終わらせてーし」
「同意」

意外にも真面目な二口は、任された主将をちゃんとしているらしい。たまに後輩らしき人が訪ねてきてる。あと何故か先輩も。

「インハイだっけ?」
「は?」
「次」
「インハイは終わった。次は春高」

おっと。悪いことを聞いた気がする。

「ごめん」
「いや、いいけど」
「次こそ取れるといいね」
「何が?」
「てっぺん」

あいにく私は部活に打ち込んだ経験なんてない。それでも、負けたら不愉快になる気持ちくらいならわかる。
だから、これは本心。後悔しないためにも勝てばいい。

「…そうだな」
「頑張れ」
「おう」

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